中村 明:日本語のコツ

作成日: 2010-04-10
最終更新日:

概要

生活を豊かにするための日本語ならではの技を伝える。

感想

細部にわたって例が示されているが、私には難しい。

意味の世界

何節かに分かれているが、一番頭を悩ませるのが微妙な意味関係である。 たとえば、次の区別は何によって判断できるか。

著者は材質と形状によって次の区別があるとする。 ここでは表にしたが、実際には文章で書かれている。

その他、永遠と永久の違いや、構造と構成の違いなど、 いろいろ示されている。これらの違いは、用例の違いで明らかになる。

名称材質形状
びん(瓶)ガラス全体に細長く、口がさらに細長い
はち(鉢)さまざま上が大きく開いていて、下のほうが小さく、比較的浅い
かめ(甕)たいてい焼き物口が広くて深さがあり大きい
つぼ(壺)陶磁器製のほか金属製もある口の部分が狭く胴の部分が膨らんでいる

ここまで説明して「鉄びん」や「土びん」はガラス製ではないとか、 「びんづめ」のびんは口が広いとか、 「花びん」の形も「びん」らしくないものが多い。 と、上記の説明を覆すような例を挙げる。 締めくくりは現実には名は体をあらわさない。

では、なぜこのようなことがおこるか私なりに考えてみた。 鉄びんは「南部鉄瓶」などで使われる。私が考えるに、 南部鉄瓶は南部鉄器のうち、きゅうすややかんの総称である。 きゅうすもやかんもそそぎ口があり、ここは細くないと用を足さないので、 びんが持つ「口が細長い」点を借り受けたのだろう。

「土びん」は「土瓶蒸し」料理の容器として使われる。これも、 注ぎ口から汁を注いで味わうので、びんの一つといえるだろう。

びんづめのびんは口が広い。しかし、びんづめにはふたが必須である。 これは、びんづめされた中の食料が保存用だからである。 口がせまければふたを閉めるのは容易だ。 したがって、瓶は密閉が可能な容器という意味ももつのではないだろうか。 その密閉性を受け継いだのがびんづめのびんだろう。 広口瓶はふたの密閉には苦労するが、 それだけに出し入れがやりやすい。

花びんの形は「びん」らしいもの、つまり全体に細長く、 口がさらに細長い形状のものが多いと私は思うので 著者の思いとは異なる。ちなみに、細長い形状の部分は、 花瓶においては「くび」というらしい。この首は、 花を安定させる目的があると思われる。首がない花瓶も存在する。

ほかにも、尿瓶、

英語によれば、瓶に相当する単語は、bottle, jar, jug などがある。 これらは形状によって区別される。

同著者のほかの本

書 名日本語のコツ
著 者中村 明
発行日2002年10月25日(初版)
発行元中央公論新社(中公新書)
定 価740円(本体)
サイズ新書判
ISBN4-12-101667-X
その他越谷市立図書館(南部)で借りて読む。

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MARUYAMA Satosi