論文、説明書の書き方 |
作成日:1999-12-07 最終更新日: |
論文、説明書の書き方についての本の紹介です。
自然科学系の論文を英語で記述するときに、注意すべき点をまとめた本。 もう英語には興味がなくなったのでとんと読んでいなかった。しかし、 久しぶりに見たところ、次のことに気づいた。 この本で主張していることは日本文にも、否、すべてのことばに あてはまるのではないかということだ。そうして、他の(日本人に対する)英文技法の 本でも。
この本は、日本人に対する英語の講義がない。 もともと英語のわかる読者のために英語で書かれた本であるからだ。 しかし、これまたほとんど読んでいない。 この本を読んで役に立っていることが一つだけある。 「あるセクションを書き終えたら,いつも次のセクションを書き始めておく」 ひっかかりを作っておくのですね。
この本の後ろにのっているチェックリストを参考にして、マニュアルを書いたことがある。 しかし、そうして作ったマニュアルでも「読みにくい」という評判しか聞かなかった。 私のした努力は無駄だったのだろうか。
ちなみに、このマニュアルは私の担当したプロジェクトで作ったのだが、評判がよかった部分は 私ではない専門家が担当した、そのソフトで使われる理論的な背景とその実装についての解説だった。
標題にもある通り、情報処理技術者のための試験で、午後 II に論文を課される区分 (システムアナリスト、システム監査技術者、プロジェクトマネージャー、 アプリケーションエンジニア、システム運用管理エンジニア)の論文をいかにうまく 書くかについて述べられている。
この本は論文一般についての注意が述べられているのは当然であるが、 かなり具体的なところにまで踏み込んで書かれている。 たとえば、下書きは手でほご紙に書くように指導している。 これは、何度も下書きを書き直してほご紙を捨てることが必要であるためと説明されている。 ほご紙を丸めたり破ったりして捨てるときの手の痛みが効果的な刺激になるのだそうだ。
その上で上記試験のための参考書と割り切られて作られている。 たとえば、「私」が主人公になっていない説明や、“うしろめたさ”がにじみ出た表現を、 記述における不具合として、(著者の言によれば)しつこく掲載している。 そのような意味では実用的な本である。プロジェクトマネージャーの試験で合格できたのは、 論文に関してはこの本のおかげであろう。 また、試験問題から論文の参考情報をとる方法の一つとして、 午後 I 「記述式」の既往問題をテーマとして分析してみること、という指摘があった。 これについてはうすうすと感じてはいたが、いざ指摘されてみるとなるほどである。 これから論文を書く時には注意しよう。
ただ、この手の本でよくあり、もちろんこの本でもある「誤字・脱字は絶対するな」という指示が、 この本に関しては守られていない。以下、誤字・脱字の例を示す。
ページ | 誤 | 正 | 備考 |
---|---|---|---|
31 | 説明になっていなければならい。 | 説明になっていなければならない。 | |
65 | 良いプログラムがそうであるよに, | 良いプログラムがそうであるように, | |
93 | システム開発における最適化に工夫について | システム開発における最適化の工夫について | 下から3行め |
98 | ワークステーョン | ワークステーション | |
108 | 情報戦略の企画にける | 情報戦略の企画における | |
111 | この中では(e)は工夫が足りない。 | この中では(a)は工夫が足りない。 | |
127 | 謙虚に書くのがよいケースもあろうがが, | 謙虚に書くのがよいケースもあろうが, | |
159 | こんなんことしか書く材料がないのなら, | こんなことしか書く材料がないのなら, | |
253 | 運用管理手法をそのまま適用するこてはできない。 | 運用管理手法をそのまま適用することはできない。 |
こんな誤植ばかりあげつらっているより、自分の勉強をするべきではないか、という声が聞こえる。 ありがたいおことばではあるが、このように誤植がないかどうか真剣に読むことによって、 本の内容を吸収し、役にたてようとしているのである。
この本は1999 年ころ、書泉ブックタワーで購入したが、それ以来どの書店でも見ていない。 ひょっとして誤植の多さゆえに発売を止められたのではないかと要らぬ心配をしている。
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