計算システムとプログラミングの基礎概念を整理し、アセンブラによるプログラム作成の方法を解説する。 さらに、システムプログラム、オペレーティングシステムについても説明する。
著者は計算システムを次のように定義している (定義 1')
計算システムとは,定義された計算,処理,あるいは仕事を行うシステムである.
そして次の演習問題がある。問1 身の回りにある計算システムの例をあげよ.
、問2 身の回りにある装置で、計算システムでないものを挙げよ.
この二つの問題から、そろばんは計算システムか否か、という疑問がわいた。
私は、そろばんは計算システムではない、と判断した。 おそらくそれは正しいだろう。というのは、そろばんは、定義された計算、処理、仕事がないからである。
いや、そろばんで行う加減乗除があるのではないか、という人がいるだろうが、それは人間の動作が定義するものである。
ふと、そんなことを考えた。
買った当時は一通り読み通し、問題も可能なところは解いた。全体としてコンピュータが動いている原理が実感できて、 感動した。
さて、25 年以上たった今、振り返ってみて気になったところを挙げる。
まず、ALU とは何か、ということである。第 5 章は中央処理装置の構造に当てられていて、そのなかの第2節がその構成要素の説明である。
ALU はその構成要素の一つで、p.201 から解説されている。
ALU とは、加減算のみならず,ビットごとの AND OR, EXOR など数多くの演算を行う組み合わせ論理回路である.
と述べられている。これはいい。ところが、ここで述べられているのは NAND 素子や NOR 素子から回路を作って ALU を構成する方法である。
ALU が計算機のどの部分に属するかが記されているのはもっと前である。
それは第 3 章の第 6 節中央処理装置の構成と動作で、p.107 の図3.16 計算機 m32 の中央処理装置の構造で初めてその名前が出てくる。
そこでは次のように説明されている。
ALU は L バスおよび R バスで与えられた 32 ビットのデータに対して演算指定により指定された演算を行って演算結果を O バスに出力する.
ALU とはなんだろう。この本では、
アルファベットの略称に対してはその日本語名が与えられていて英語の正式名称も付記されているほどていねいな書き方が特徴なのだが、
ALU に関してはその説明がない。
ほかの本を見る余裕がないので Wikipedia からそのままもってくると、
ALU の英語名は Arithmetic Logic Unit、日本語では算術論理演算装置といい、論理演算と加算および減算をおこなう。
きっと、著者にとっては ALU とはほかに説明しようがない、一つの直感的な概念だったのだろう。
p.210 で、クロックの周波数は(中略)ECL 素子を用いたもっとも速いスーパーコンピュータで 100 MHz 前後,(中略)
普及型パーソナルコンピュータで 10 MHz 前後といったところが現在の値である.
と述べられている。
今はどうか。私がもっている NEC の LaVie LS150/N は、Intel Celeron 1.90 GHz である。1988 年のスーパーコンピュータよりクロック数は高い。
一方スーパーコンピュータの代表、「京」で使われているSPARC 64 VIIIfxは、2GHz である。もちろん、CPU数は88,128個 あるので、
そちらで演算速度を稼いでいるということだ。
p.149 上から二行目 リンカ (linkar) とあるが、linker が正しい。
書 名 | 計算システム入門 |
著 者 | 所 真理雄 |
発行日 | 1988 年 10 月 6 日 |
発行元 | 岩波書店 |
定 価 | 3300 円(税別) |
サイズ | |
ISBN | 4-00-010341-5 |
備 考 | 岩波講座 ソフトウェア科学 1 |
NDC |
まりんきょ学問所 > コンピュータの部屋 > コンピュータの本 > 所 真理雄:計算システム入門