列車の旅:秩父鉄道に乗る

作成日 : 2010-11-23
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前置き

2010 年、埼玉県の旧両神村(現 小鹿野町)をバスで旅行した。 宿泊先まではバスを使ったが、そのバスの発着所は秩父鉄道の駅だった。 秩父鉄道の旅を再現する。

羽生で飯を食べる

秩父鉄道は埼玉を東西に結ぶ私鉄路線で、 東は羽生(はにゅう)から西は三峰口まで、およそ 70 km にわたる。 この秩父鉄道は、遅いし高いといわれている。 確かに、羽生から三峰口までは鈍行で 2 時間、料金は 1020 円である。 しかし、だからこそ埼玉県民である私たちが乗るべき鉄道でもある。 以前、熊谷から越谷まで帰るときに秩父鉄道を使ったことはあるが、 全線乗るのは初めてである。楽しみと怖さの入り混じった感情が沸いてくる。

さて、2010 年 11 月 21 日が記念すべき全線踏破の日である。 まず、羽生まで東武伊勢崎線で行き、羽生駅で腹ごしらえをすることにした。 最初目指していた料理店は貸切のため使えず、 駅近くにあった「カフェ タイム」という喫茶店で昼ごはんをたべた。 この日のサービスランチは牛丼であった。780 円で、サラダ、スープ、コーヒーがついている。 そのほかにも、ハンバーグ、スパゲッティ、ピラフ、カレー、ハヤシライスなどが 単品 680 円、セットが 880 円ないし 900 円と設定されている。 たまたまこの日のセットの割引対象が牛丼だったということだろう。 ちなみに、サービスランチでなければ牛丼のセットは 900 円だった

まず、サラダとスープが出てきた。サラダには小さなフォークがついてきた。 普通は箸で食べればよいのだが、なぜフォークが付いてきたのだろうか。

そのごすぐに、牛丼が出てきた。レンゲがついている。ラーメンでもないのになぜレンゲが付くのか。 その疑問はレンゲで牛丼を食べながらわかった。つゆだくだからだ。 つゆをすくうにはレンゲがよい、ということなのだな。

コーヒーを口直しですすった。量はあるが少し薄かった。 テーブルごとに置いてある調味料には白砂糖のほかにザラメもある。気をつけるとよい。

日当たりがよい。暑いぐらいだった。

コーヒーチケットを販売している。11 枚で 3500 円である。 ということは、きっとコーヒー一杯が 350 円なのだろう。 面白いことに、使いかけのコーヒーチケットが並んでぶらさがっていた。 この風景を見て、なんとなく名古屋の喫茶店を思い浮かべてしまう。

壁には、洋服のレーベルが並べられている。SHIPS、takaQ、NewYorker、VAN、その他もろもろあった。 きっとマスターは若かりしころアイビーの洗礼を浴びたのではないか。

と思うと、カウンターには徳用マッチがさりげなく置かれていた。

羽生から三峰口まで

当初は、羽生発 13:02 の電車に乗り込むことを考えていたが、 ひょっとしたら一つ前の 12:45 の電車に乗れるのではないかと期待していた。 しかし、いろいろあって結局乗ったのは予定通りの 13:02 の電車だった。 3 両編成の電車は閑散としていた。

秩父鉄道は、全線ほぼ荒川に沿っている。 行田(ぎょうだ)から熊谷(くまがや)近辺は、荒川の堤防を進行方向左側に見ながら進む。 行田で知っているのは、ゼリーフライ、ものつくり大学、さきたま古墳群、 女流棋士矢内理絵子の出身地、以上に尽きる。

熊谷は都会である。なんといっても日本最高気温記録保持都市であることが偉い。 越谷は 40.4 ℃がやっとだったが、 熊谷は 40.9 ℃に到達したのだ。

さて、熊谷を過ぎるといろいろな地名がある。 まず、寄居がある。友人がここの出身で、いつかは来ないといけない、と思っていた。 なんといっても秩父鉄道のほかにも八高線と東武東上線がある、ターミナル駅である。 そして少しして「長瀞」に到達する。 長瀞(ながとろ)は景勝地である。本来、とろの字は「シ靜」のように表示されるはずだが、 私の環境では残念ながらそのようには表示されない。 長瀞はライン下りで有名である。埼玉県人なら一度は体験しておきたい。

この長瀞駅で多くの年配者が乗り込んできた。きっとハイキング大会でもあったのだろう。

ところどころすれ違う貨物列車があり、石灰石を積んでいる。 一つの貨車に山が3箇所きれいに並んでいるのが面白い。 石灰石は製鉄の原料である。 昔は私は鉄の会社に勤めていて、鉄の原料は鉄鉱石、コークス、石灰石、そして空気(酸素)と習った。 石灰石は鉄だけでなく、セメントなど多くの材料の原料となる。 この石灰石はどこに行くのだろうか。

電車が西に向かうにつれ、荒川沿いの紅葉がだんだん濃くなってきたように感じる。 また、秩父の山並みも濃くなり、遠近に応じた二層や三層の山影がはっきりしてきた。

しばらくすると、御花畑駅に着いた。すると長瀞駅で乗り込んできた年配者が皆降りた。 きっと、西武秩父駅から都心に帰るのだろう。

ここからは本当に山の中である。しばらくすると終点の三峰口に着いた。 降りて改札を探すがみつからない。よく見ると、ホーム先頭から階段で地面に降りて、 そこから線路を渡って隣のホームに行けばよいのだった。そこに改札があった。

御花畑から長瀞まで

翌日、両神から秩父市街に出て、御花畑駅から羽生行きに乗り込んだ。 このとき来たのが、カナリアイエローの電車だった。これは運が良い、と思い 長瀞駅で降りたときに写真を撮った。

なぜ長瀞駅で降りたのかというと、長瀞ライン下りを経験したいと思ったからだ。 埼玉県民なら、と先に見栄を切ったことでもある。

長瀞ライン下りの体験

長瀞駅で降りると、ライン下りの券売所があった。 ラインくだりは A コース、B コース、C コースと3種類ある。 しかし、この日は券売所の係員からは B コースのみといわれた。 私たち二人は B コース券を買い、船の待合場所に続く商店街に入った。 商店街は仲見世の雰囲気がある。抜けたところに川が見えた。 川には岩畳と呼ばれる石の階段が見える。 T 教の教主 T 氏は地質学を専攻していたので、彼が見たら喜ぶだろう。 私たちは川に停泊しているライン下りの船に乗った。雨がポツポツと降り出した。

船には既に 8 人が乗っている。舳先にいる人はチワワのような犬を抱えている。 まったく、ケージに入れろよな。溺れても知らんぞ。

私たちが乗って更に 5 人が乗った。これで出発となった。 ライン下りは船首の船頭と船尾の添乗員の二人で進む。 船首の船頭は舵をとるだけでなく、流れの弱いところでは櫂を漕ぎ船を進めさせることもする。 添乗員はいろいろ解説をする。なかなか笑わせてくれる。

所要時間は20分強だった。終着点では無料バスが用意され、長瀞駅に戻ることができる。

寄居で飯を食べる

長瀞駅は観光地である。 昼食をする場所は多くあったが、私は敢えて寄居まで出てそこで昼食を取ることにした。

寄居は友人の出身地である。ぜひ寄居に行って貢献したいと思ったのだ。 降りたはいいが、昼飯を食ったものだろうか。 まず駅には南口と北口があり、どちらが栄えているかわからない。 上からみると、南口にはライフというスーパーが目についた。 ということは、南口が栄えているようと推理し、こちらに降りてみた。

ところが、飯が食べられそうな店が見当たらない。 観光案内所があったが、昼休みなのか人がいない。 あたりを見ると、一件花屋なのだが食堂になっている店があり、 中で人がうどんをすすっている。妙な店だがここに入ることにした。 メニューにはご飯物もあったが、温かい「地粉うどん」を食べることにした。

少したって出てきたうどんはおいしかった。つゆはさほど辛くなく、少し甘めでうどんとよく合う。 うどんは埼玉県産なのだろうか。香川の讃岐うどんなどのようなコシやツヤやノド越しの良さはないが、 粉物文化にコシやツヤやノド越しの良さを過度に求めるのは私は反対だ。 薬味にはネギのほか、ユズやゴマもついてきた。特に、ユズの香りは絶品だ。 さらに、無料で揚げ玉が付いてくる。 これらの品々で私は十分満足だった。

ところで、この店の屋号を取材するのを忘れた。インターネットであるだろうと高をくくっていたら、 有益な情報は得られなかった。わかったのは、 この店のある位置は「柴田商店」だったこと、柴田商店は以前駅弁を作っていたが閉店し、 別の方が店子に入っていることだけだった。 それから、出没!アド街ック天国(アド街)で取り上げられたことを書いていたが、 アド街は「嵐山小川」をとりあげており、このうどんに関係ありそうなのは 「道の駅おがわまち」のうどんだけだった。これで気を引こうというのはちょっと虫がいいのではないか。 とはいえ、この満足度で 400 円だったのはすばらしい。

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MARUYAMA Satosi