廃墟のWebページはたくさんあって、それぞれ面白く楽しませてもらっていますが、せっかく廃墟に出会っても、その外観を写真に撮って、中に入っていないレポートが目につきます。「こわいからこれ以上は」と言われたら「そうスか」と言うしかないのですが、せっかくであったならば、とことん味わうべきだと考えるのがムエン通信です。
そこで、よけいなお世話かもしれませんが、廃墟へ入るときの心得みたいなものを、ここでいくつか書いておくことにします。
まず、廃墟といえどもそこは誰かが所有している物件なので、当然ながら「不法侵入」ということになります。でも、そこでためらっていては始まりません。そこでレイプでも試みるなら別ですが、廃墟の悦楽にひたっているときにドヤドヤと警察がやってきて、逮捕されるということはまず起こりません。管理人なり、不審だと感じた人が来て「何やってんだ?」と聞かれたら、私たちの場合「映画を趣味でつくっているサークルです。それでここで撮影できないかと思って、視察してました」ということにしてます。これはまったく真実です。あなたが大学生だったり、大学生に見られる年齢だったら「大学の映画研究(制作)サークルだ」と言いましょう。
ここで失敗談をひとつ。東京のとある廃墟を探索中、「お前らは何だ」と聞くおやじに遭遇。とっさに「日本大学芸術学部映画学科のもので」とか言い訳したら、なんとそのおやじは、そこの廃墟で撮る映画のロケハンに来ていたスタッフで「おお、俺も日芸(日本大学芸術学部の略称)だ。なんだ後輩か。担当の先生は誰だ?」と言われてしまったのです。これには困りましたが、幸いなことに、同行者のひとりが本当に日芸の出身だったので、彼が自分の担当教授の名を出すことで切り抜けられました。いやはや、こういうこともあるので、嘘をつくのはやめたほうがいいようですね。
最も困るのは、声をかけないで、いきなり警察に通報されることです。廃墟によっては民家と隣接していることがあります。常に自分達の姿が、民家から見える場合、こちらからも気をつけていましょう。不審気に見てる人がいれば、こそこそ隠れたりしないで、ちゃんと近付き、挨拶したうえで、こちらが怪しいものではないことを伝えましょう。通報されたらいやな目にあうことになるわけですからね。
さて、自分達の身の安全にも注意しなくてはなりません。
まずスズメ蜂。これに刺されると人の体質によっては命を落とします。他ならぬ私も、不注意というか、見くびっていたせいで、意識不明になり、救急病院にかつぎこまれたことがあります。スズメ蜂はいきなり刺してくるのでなく、その前に威嚇飛行をするので、そうなったらもう降参して退散するべきだと思います。とにかくこいつらには勝てません。また知識として、スズメ蜂は黒い部分に攻撃してくるということも知っておいた方がいいでしょう。黒い部分。つまり髪の毛のある頭を狙ってくることが多いようです。廃墟探索のさいは帽子着用をオススメします。
次は蛇。本州にいる毒蛇はヤマカガシとまむしです。どちらもハブと違って攻撃的な性格ではありません。ただし、変温生物ですから、寒くなると動きが鈍くなります。そこを踏んづけたりすると、相手も怒ってかみつきます。とにかく足もとに注意して進むしかないですね。これは。ヤマカガシは胴体に赤い部分があります。でも毒は奥歯から分泌されているので、軽くかまれるだけなら大丈夫です。まむしは、成体でも60センチほどの小さめの蛇です。見分け方は、穴開きコインのような模様です。一度、図鑑などで姿を確認しておくといいでしょう。本州には他に出会う蛇は、青大将とシマヘビぐらいですから、見分けられるようにしておけば、いざという時にあわてなくてすむでしょう。図鑑を見て4種の特徴を覚えるだけの簡単な作業なので、ぜひ時間のある時に図書館などでやっておくべきです。
次に気をつけるのは、古釘。廃墟は崩壊している部分が多いので、錆びた釘がむき出しになっていることもあります。靴は底厚のもの、できれば安全靴といきたいものです。また、暗いところも随所にあると思うので、懐中電灯はたぶん必携でしょう。必携と言えば夏場は蚊取り線香でしょうかね。これも腰に下げる「携帯蚊取り線香入れ」を使うといいでしょう。
ともあれ肝要なのは、出会った廃墟の素晴らしさに飲み込まれて、快楽に浸るあまりに不注意になることでしょう。警察や管理人との闘争で不愉快な気分になったり、危険生物の襲撃にあうとこは避けたいものです。以上、余計なお世話かもしれませんが、私たち自身の廃墟探索からアドバイスできることを書き連ねてみました。