1 必要なもの
8ミリ映画をつくるために最低限必要なものは、
●8ミリカメラ
●8ミリフィルム
●8ミリ映写機
●8ミリヴューワー(エディター)
●スプライサー
●スプライシングテープ
これだけでとりあえずは可能。フィルムとスプライシングテープは消耗品なので買うべし。あとは人から借りてもいい。
撮影して現像したフィルムをビデオにして、編集や音付けはパソコンでおこなうという人は、カメラと映写機だけで済む。
ではそれぞれについて、もうちょっと解説をしよう。
●8ミリカメラ
シングル8用とスーパー8用の2種類ある。カメラのどこかに「Single8」「Super8」と表示されているはず。なければそれはシングル8、スーパー8登場以前のダブル8(レギュラー8)というフォーマットのカメラだ。使えないことはないが、それで作品をつくるには多大な困難をともなう。ヤフーオークションの8ミリカテゴリに出品されているカメラをある日調べたところ、17%がダブル8カメラだった。外観が気に入ったからといって調べずに入札するとインテリア置きものにしかならないので注意。
●8ミリフィルム
シングル8フィルムはフジフィルムの製品だが、2007年3月の出荷をもって生産を終了することが発表されている。現像はそのフィルムの保証期限である2008年9月まで。フィルムは大手カメラ量販店で購入可能。また近所のカメラ店でも注文すれば入手できる。フィルムは低感度(R25)と高感度(RT200)がある。R25は太陽光線のもとで、RT200は白熱電球のもとで使えば、見た目と同じ色合いが再現されるようにできている。何を撮るかにもよるが、まずはR25で、昼間に外で撮ることから始めることをオススメする。
現像に出す時、あとでフィルムに音声を録音したければカートリッジ横の「アフレコ仕上げ」にマルをつける。必要なければ「サイレント仕上げ」にマル。
スーパー8は大手カメラ量販店なら店の棚にあり、コダックの製品であることから、これまた近所のカメラ店で注文すれば入手は容易だ。ラインナップは3種類。エクタクローム64T(低感度カラー)プラス-X(低感度白黒)トライ-X(高感度白黒)。フィルムの値段はシングル8と変わらないが、現像料金が税込み2650円と高い。ある程度まとまった本数(5本以上とか)を現像するなら、海外のラボに個人で注文するというテがある。送付は国際スピード郵便で、決済はクレジットでできる。くわしくは後述。
●8ミリ映写機
シングル8、スーパー8は、カメラは異なるけれど、映写機はおなじもので大丈夫。ただし、見るからに骨董品のような映写機だと、前述のダブル8専用機である可能性があるので注意。
●8ミリヴューワー(エディター)
…手回しでフィルムに何が映っているかを見るもの。切ってつなげるポイントを探す。編集の時に必要。
●スプライサー
…フィルムを切ったりつなげたりするもの。編集の時に必要。LPLの「ロールテープスプライサー」か「ステレオサウンドスプライサー」もしくはフジの「フジカスプライサデラックス」でないと、次のスプライシングテープの入手が困難になる。
●スプライシングテープ
フィルムをつなげる接着テープ。これも大手量販店で購入するか、近所のカメラ店で注文すればいい。
カメラは操作に慣れるためにも買った方がいいだろう。新品はないので、ヤフーオークションの8ミリカテゴリや、中古カメラ店、リサイクルショップで捜そう。その際の注意事項は「カメラ」の項目を参照のこと。
映写機、ヴューワー、スプライサーについては、8ミリ経験者から借りて使えばいい。レンタル屋には、たぶん、ない。映写機は作品に音をつける予定なら、音声の録音再生機能のあるサウンド映写機を選ぶこと。
2 撮影
カメラにフィルムを入れよう。
シングル8カメラの場合、カメラ側面の蓋を開け、シングル8のフィルムカートリッジを装着する。カートリッジのフィルムが露出している部分を「ここ(フィルムゲート)へフィルムをはさむ」と書かれて手のイラストの人差し指が示している部分にしっかりはさみ入れる。ちゃんと入れないと撮影しても何も写っていないので注意。
スーパ−8用カメラの場合、カメラの後ろ側からフィルムカートリッジを押し込むタイプと、側面から差し入れるタイプがある。カメラの筐体内のフィルムカートリッジを収める場所にきちん入ればまずは大丈夫。
蓋を開けた時、内部がホコリやゴミで汚れていたら、掃除しよう。カメラ用品のブロアーやエアダストクリーナーを使うといい。息で吹き飛ばすのはなるべくやめよう。やわらかいハケで掃き出してもいいだろう。
ファインダーを覗いてみよう。四角い枠に区切られて撮影範囲が見えるはずだ。そのまわりに数字や記号などが見える。これがぼやけて見えるとすれば、あなたの目とファインダーがマッチしていないので「視度調節」という作業をする。ファインダーの覗く部分そのものを回すか、そのそばに小さなレバーがあるはずなのでこれを動かす。数字や記号がぼやけずに見えればOK。
次にピントを合わせよう。8ミリカメラのほとんどはオートフォーカスではないので、ピントを合わせる必要がある。ふたつ、方法がある。
ひとつめは距離を目測してピントリングをその距離のところに合わせる。明るい昼間なら、そう厳密にしなくてもピントは合う。
ふたつめは、おおかたのカメラはファインダーを覗くと真ん中に丸い部分があって、それが上下に区切られている。被写体にズームアップして、縦の直線にあっている部分をこの丸の中に入れてみる。そうしてピントリングをぐりぐり回すと、上下の映像がズレるのがわかるだろう。ちゃんと直線につながって見えるところが正確なピントの位置になる。
絞りは初心者は自動調節でいいだろう。フジカZ450の場合はEEロックのレバーがロックの側になっていないことを確かめよう。フジカZX550の場合は、EEロックのつまみが、押し込まれていることを確認しよう。
スーパー8用カメラの場合、ほとんどのカメラがエクタクローム64Tの感度64に対応していないので、感度40と認識して自動で絞りの値を決定してしまう。しかしものは試し、とにかくフィルム1ロールはカメラテストだと割り切ってまわしてみよう。現像上がったものを見て「べつに問題なし」と思えばそれでよし、明る過ぎるとか暗過ぎると感じたら、絞りを手動で調整して撮るとか、露光計を別に用意して、それで光を計測して絞りを決めて撮ることになる。
さあ、ともあれ、これでシャッターボタンを押せば撮影開始だ。
●おや、シャッターボタンが押せない
シャッターにロックがかかっている。解除しよう。
フジカP300…シャッターボタンの外枠をひねってLからRに。
フジカZ800…グリップ(手で握る部分)の軸にあるレバーをLからRに。
フジカZX550…シャッターボタン上のレバーをR方向にずらす。
フジカZC1000…側面のカウンター表示右のスイッチをLOCKからRUNに。
●押したのに動いてくれない
電池は入れた? あるいは1本だけ逆に入っているとか、中古品だったりすると電池の液漏れで接点が腐食していることがよくある。電池の入るところを覗き込んで、青く腐食しているようなら、細長いヤスリなどで腐食部分を削ってみよう。
あとはあちこち叩いてみる。ワタシの使用してるカメラもしょっちゅう動かなくなるが、カメラの特定の部分をひっぱたくと動くようになる。たいていのカメラはご老体なので、深く眠ってしまうことがあるようだ。
これでダメなら故障している。
●音はするけど本当にフィルムが送られているか不安
シングル8用カメラの場合、カメラ側面に透明の窓がある。見るとフィルムの巻き取り軸に白い点があるのが見える。これがシャッターを押した時に回っているなら、フィルムは送られているはずだ。
●現像したフィルムが、やたらと白っぽい(ハイキー)
あなたの使っているカメラは、フジのカメラだとしたらC100,P1,P100,P105,P300,Z1,Z2,Z400,AX100のうちのどれかでしょう。スーパ−8用カメラの方は該当機種多すぎ。
とにかく製造が比較的古い機種では、絞りを動かす電池が別に必要なのだ。そして、その電池は入手困難という現状。
対応策で最も簡単かつ安上がりなのは、100円ショップなどでも2個100円で売っているLR44電池を使うということ。LR44電池2個のまわりにビニールテープなどを巻き付けて太らせる。タッパも足りないので、アルミホイルを少し丸めて露光用電池ホルダーに押し込む。これでなんとかなります。
そんな乱暴な方法でなく、水銀電池ホルダー(バッテリーアダプタホルダー)もつくられ、売られています。3000円弱ぐらいの値段。時間がかかってもいいなら近所のカメラ屋でも注文できるはず。くわしくはカメラの項目を。
混乱させたくないけれど、カメラによっては上記の規格とは異なるものもある。必ず対応策はあるはずなので、あきらめないで。
どうやっても露出計が動いてくれない場合は故障だろう。ファインダーを覗いて、シャッターを半分ぐらいまで押してあちこちカメラを振ってみる。接触の不具合も考えられるので、少々叩いてみる。それでもファインダー内で、指針あるいは数字がまるで動かない場合、故障と考えられる。
●現像したフィルムに何も写ってない。黒いだけ
カメラへのフィルムの入れかたが悪くて、はさまるべきところにフィルムがはさまっていなかった。
あるいはフジのZで始まる型番のカメラの場合、シャッター開角度調整が閉じられていたことが考えられる。
Z800…フィルムを入れる側にあるダイアルで「C」が上にあると閉じているので、回して「0」を上にし、動かないように「L→」の矢印方向に、真ん中の銀色の部分をスライドさせる。
ZC1000…側面上部にあるレバーが右の「CLOSE」に行っていると思われるので、左の「OPEN」にする
あるいは絞り調整が手動になっていて、絞り切った状態になっているのかもしれない。絞りのロックを解除しよう。
Z800/ZX550…「EE−LOCK」の丸いつまみが引き出されていれば押し込む。
●やたらと写っているものがにじんで、ぼんやりしている
カメラのレンズか、映写機のレンズが内部でカビている。レンズの内部の掃除は上級者レベルでないと無理なので、頼むしかない。レンズ掃除は写真のカメラと共通するものなので、写真にくわしい知人か、信用できるカメラ店に相談するといい。ただし数万円の修理代がかかることは覚悟すべし。また「カビが白色ならまだ救いようがあるが、黒くなっているものはどうしようもない」と中古カメラ店の人が言っていた。
●現像したフィルムのピントが合っていない
フィートの表示をメーターと取り違えていないか。ピントリングはフィート単位とメーター単位のふたつで表示されているので、間違えないようにしよう。
メジャーを使って被写体までの距離を測る場合、カメラ側の計測始点は、レンズ面ではないことに注意。カメラ本体のどこかに、「φ」←こんなマークがある。これはフィルム面の位置をあらわしていて、ここから被写体までの距離を測るべし。
それでもダメなら故障ということだ。
3 映写
撮影した8ミリフィルムが現像を終えて戻って来た。さあ、映写してみよう。このドキドキ感はビデオでは味わえないものだ。
映写機とスクリーンあるいは白い紙(ツルツルしてないものが望ましい)を用意しよう。むろん白い壁に映写してもかまわない。
1、映写機に電源コードを差し込み、電源コードをコンセントに接続する。
2、映写機のリールを装着するアームを立てる(立てなくでもいい機種もあり、また送り側のみアームになっている機種もある)
3、操作レバーを一段階ひねる。こうすると動き出すはず。巻き取りリール側が回転していない場合はベルト切れの疑いがある。→「映写機」項目の「ベルト切れの対処」を参照
4、操作レバーをもう一段階ひねって「ランプ」にする。そうするとランプが点灯するはずだ。フジSD20などではランプのON/OFFスイッチが別になっているのでONにする。そうして映写された素通しの画面を見ながら、ピントつまみをぐりぐりしよう。画面の端にもじゃもじゃとホコリがたくさん見えるなら、フィルムに傷をつけるのを避けるため、映写機の掃除をしよう。→「上映会(当日)」の項目参照
ランプがつかなければ、ランプ切れの疑いがあるので、いったん消してランプを取り外して確認しよう。単にランプの接点部分がゆるんでいる可能性もあるので早合点しないように。なお、いったん点灯して切れた場合はランプ切れの可能性が高い。あせって取り出す時にやけどをしないように注意。また、映写機の内部をいじる時は感電しないように、電源コードを抜いておくこと。
5、以上の確認が済んだら、操作レバーをOFFの位置に戻して、受取りリールと現像済みフィルムのリールを装着する。軸穴のまわりに3つの切れ込みがある。そこが映写機のリール受け軸の突起にはまるように差し込み、リールが抜けないように押さえのレバーを倒す。
6、現像済みフィルムは、先頭に白っぽいフィルムが付いている。これをリーダーと言う。映写機の操作レバーを一段階ひねって、フィルムの挿入口の上にある「フィルム押さえ」を押し込み(これのついていない映写機もあるし、チノン映写機は自動的に押し込まれるので注意)、挿入口にリーダーを差し込む。この時、映写機の操作レバー側のふたを開き、フィルムが途中でひっかからずに送られているかを確認するといい。ひっかかる場合の対処はこのあと書く。
7、巻き取りリールに側から出て来たリーダーが、きちんと巻き取りリールにからまったかを確認する。うまくからまなかったら、いったん止めて、手で巻き付けてやる。
さて、操作レバーをランプ点灯にして映写開始だ。映像がスクリーンに映っているだろう。まずはピントを合わせよう。これで問題がなければめでたし。
8、映写が終了したら、フィルムの最後まで巻き取りリールに巻き取られることを確認して、作動を止める。
巻き戻しをしよう。フィルムの最後の部分を、送りのリールに巻き付ける。フィルムの最後の部分を、送りリールの軸の部分にある溝の中に差し込んで、手で回して巻き付ける。そうして映写機の操作レバーを逆の側に一段階ひねると巻き戻しが開始される。例外としてエルモGS1200があり、これはフィルム挿入口のところにあるレバーを手前に引っ張ることで巻き戻しが始まる。
9、映写機はすぐに箱にしまったり、カバーをかけたりしないように。ランプが熱いままで箱に入れると、ランプの寿命を縮めることになる。安いものではないから、最低でも10分は放置してからしまおう。
●映写機の中でひっかかった!
ひっかかるとそこでフィルムがぐちゃぐちゃに折れ曲がって使い物にならなくなるので、すぐ映写機を止めよう。
一番多いのは、リーダーの先端部が内側か外側かにそっているケースだ。そこで先端部を10センチぐらい切ってしまおう。映写機のどこかに先端部が丸く切れるようなカッターが付属しているなら、それで切る。付属してない場合は、はさみでいいので、やや丸みを帯びるように切ればいい。
それでもひっかかるなら、まずスロー送りの機能がついている映写機なら、スロー送りでひっかかる部分の直前までフィルムを送り、ひっかかるポイントで、つまようじなどでフィルムをサポートしてあげる。
アパチャー(フィルムとランプからの光が交差する部分)の押さえが開きっぱなしになっているということも考えられる。そうならばランプ方向に押して閉じること。
●映写したら画面の上(または下)にその画面の下(あるいは上)の一部が映っている
フレーム合わせをすべし。映写機によって異なるが、たいていはピントつまみの近辺にフレーム合わせのための「つまみ」があるはず。FRAMEという表示になっているかもしれない。
●映写したらフィルムに傷が入ってしまった
映写機の内部でフィルムが送られている部分をすべて、カメラ用品のエアダストクリーナーで空気を吹き付けてきれいにする。さらにアパチャーゲートやサウンド映写機ならば録音再生ヘッドの部分を、綿棒に消毒用アルコールかフィルムクリーナー液をつけてていねいにこする。
●画面の上部に黒いゴミが見えるが、掃除しても取れない
上記映写の手順?をしてみよう。フィルムを映写した時に映るが、フィルムをかけないで映写した時には映らないゴミは、撮影した時にカメラ内部にあったゴミだ。これはフィルムに写り込んでいるので除去は不可能。カメラのふたを開け、フィルムがはさまる部分をペンライトなどで照らしてみると、レンズから送られてくる光を受けとる穴の部分にゴミが付着しているだろう。ブロアーかエアダストクリーナーで吹き飛ばそう。ブロアーとは、パコパコと握って空気を吹き出すもの。安いのでカメラバックに入れておこう。あるいは小さいサイズのエアダストクリーナーも売られているので、どちらかを。
●映写中にフィルムが流れた
編集の時にフィルムの接合がきちんとしていないか、パーフォレーション(フィルムの穴)が破損していると流れる。あわてず、まずはフィルムを入れる時に押す部分を再度押してみよう。エルモのGS1200やST180の場合は特殊で、ピントリングの下にある「ループ」というレバーを押す。
●巻き取りリールが最初は動くがやがて止まってしまう
映写機のモーターが弱ってきている。あまり長いフィルムはその映写機ではかけられないということだ。どうしてもという場合は、映写中に監視していて、止まりそうになったところから最後まで、手で補佐してやる。
●音量を調整する時、雷鳴のようなひどい音がする
ボリュームは劣化しやすい部品なのである程度はしかたがない。電源を入れる前に、ボリュームつまみを上げたり下げたりと何回かひねくり回してやるとノイズは軽減する。
4 編集
どのヴューワーでも、まずリールを装着するアームを広げる。次に左にこれから見ようとしているフィルムの入ったリールを装着し、右に巻き取り用のリールを装着する。
電源コードをコンセントに差し込み、メインスイッチをONにする。するとランプが点灯する。
現像済みフィルムを、マイネッテ製のヴューワー以外はマグネ塗布面が下になるように巻き取りリールに取り付け、フィルムをランプハウスの下の部分にはさみ込む。巻き取りアームのクランク(取っ手)をゆっくりまわせば、画像が投射されてくるはずだ。
映写機のようにピントを調節し、またフレームがズレていればこれも調節する。
注意しなければいけないのは、あんまりヴューワーを多用しないことだ。見ればわかるように、ヴューワーは単純な機構をしている。フィルムを出し入れするので、ホコリやゴミが入りやすい。ということはフィルムに傷がつきやすい。
現像済みフィルムはなるべく映写機で見て、ヴューワーを通して見るのは編集のために微妙なポイントを探す作業にとどめたい。早送りや巻き戻しをヴューワーでする時も、フィルムをはずしておこなってもらいたい。
次はスプライシング。圧倒的多数の人がLPLの「ステレオサウンドスプライサー」を使うことだろう。これを目の前に置いた時、右に「Instruction」と書かれたところをひっぱると、使い方の手順が図解して示されている。
LPLの「ロールテープスプライサー」の場合を記述しよう。まず現像済みフィルムを、マグネを塗ってない方を上にして(サイレント仕上げの場合は、フィルムの最初の方が右になるように)乗せ、4つあるでっぱりにフィルムの穴をきちんとはまるようにする。「TAPE」「FILM」と2つの文字があるが、これをFILMの方に矢印が合うように台の下をスライドさせる。そうしてレバーを下ろせばフィルムは切断される。
切ったフィルムを接合する場合は、左右にフィルムを乗せ、矢印をTAPEにスライドさせる。次にロールテープをひっぱって、ロールテープに穿たれている2つの長方形の穴の上の方が、中ほど2つのでっぱりにひっかかるようにして、テープを乗せ、指で押して接着させる。そうしてレバーを下ろすとテープが切れている。手前の2つある金属のどちらでも押せば、でっぱりがひっこんで、フィルムが離れる。そうして、指でていねいに、まだテープが接着していない裏面にテープを接着させる。
この作業をする時、指の油分がフィルムにつかないように薄手の手袋をする人がいる。もっともなことだが、かえってホコリを招くような気がするので、ワタシは編集作業中はまるで強迫神経症のように、しょっちゅう手を石鹸で洗うようにして、素手で作業をしている。
5 録音
音声(セリフや音楽)をともなう映画をつくるには、
●現像する時に「アフレコ仕上げ」を指定し、磁気録音帯が塗布されたフィルムであること
●サウンド映写機があること
この2つが必要条件だ。
絶対条件とは言えない。すべての映写に作家か録音スタッフが立ち会えるなら、別の方法も考えられる。このことについては「録音」の項目で。
ここは初心者編なので、一般的な方法を解説するにとどめたい。
さて、アフレコ仕上げをした現像済みフィルムには、2つ磁気録音帯が塗布されている。太い方が第1トラック、穴の横にある細い方が第2トラックだ。
注意すべきは、サウンド映写機の古い機種には、この第1トラックだけにしか対応していないものがあるということだ。この映写機では、第2トラックに録音された音声の再生はできない。見分け方は、映写機のどこにも第1と第2の音声バランス調整つまみがないこと。
だが、ものは考えようで、自分で映画をつくって自分の作品だけを上映するなら第1トラック専用で問題はない。中古価格も第1トラック専用機は安い。ナレーションと音楽を重ねて入れたい時は簡単なミキサーを購入すればいい。これは買っても1万円もしない。
第1トラックだけを使うことには、もうひとつ利点がある。1と2の再生のバランスを調整する必要がないということだ。けっこうこのバランスが崩れている作品がある。第1トラックにセリフを入れ、第2トラックに音楽を入れたが、音楽の方の録音レベルが高すぎて、バランスを5対5で再生するとセリフが聞こえなくなってしまう、という作品がある。自分で上映するなら調整できるが、例えばコンテストに応募すると、審査上映の時にはバランス調整は無視される。肝心な部分のセリフが聞こえないと、作品のよさが伝わらないことになる。そんなわけで、第1トラックだけを使用することを個人的にはオススメしたい。
さて、録音。
編集してフィルムは長いリールにひとつにまとまっているとしたら、これを音の切れ目に合わせて解体する。さいわい、編集の直後だとすれば、そばに現像時についてくる50フィートの空リールと、白リーダーの余りがたくさんあるはずだ。これを使って音を録音しやすいまとまりごとに小分けしていく。この作業は面倒だろうが、結果的には効率がよくなるはず。
ナレーションを入れるには、画面を見ながらやりたい。しかし映写機はけっこう駆動音がする。映写機のそばでマイクを持って喋ると、その駆動音も録音されてしまうことになる。まあ、それも四畳半でつくっているような味わいだから気にすることはない。しかし気になる人はまず映写した映像をビデオに撮って、それを見ながらカセットテレコや録音できるMDにナレーションを入れればいい。音楽を入れる場合は映写機の「ライン入力」と、テレコやCDデッキやMDデッキの出力プラグをつなげばいい。
まずはNGフィルムを使って、ちゃんと自分の使っている機器と接続して使えるかどうか、きちんと録音されているかを調べよう。実際の作品にぶっつけ本番で録音して、試行錯誤が始まると、初公開の時にはフィルムが傷だらけという結果になりかねない。これは見苦しい。
6 初心者篇の最後に
できるだけわかりやすく書いたつもりだが、どうだったろうか。
わからないことは、確実に回答できる保証はないけれど、メールで質問してもらいたい。
リンクを貼っている「ムエン通信」というサイトには、代表的な8ミリカメラや映写機の取り扱い説明書を閲覧できるコーナー「8ミリ機材取説図書館」がある。無料サイトを使っている関係上、削除されている部分が多く、メンテナンスが遅くて使い勝手が悪いのだが、自分の入手あるいは借りた機材の使用方法がわからない場合、まずはこの「8ミリ取説図書館」を覗いてみて欲しい。ドンピシャの機材の取説がなくても、同じメーカーのものならある程度は共通する部分があるので、解決する場合もあるだろう。
さて次の項目からは、もうちょっと突っ込んだ記述をしていこう。