2003, Summer-Autumn.

 

  ニュータウンを行く  
 

 さて、「東京都住宅供給公社が売れ残った多摩ニュータウンの分譲マンションを7割引きで販売」という衝撃のニュースが駆け巡ったのは先月のこと。

 しかもその後、「申し込みが殺到。価格は買い替え希望者には朗報だが、完成時に高値で買った住民たちは怒りがおさまらない」ということに。うーむ、なるほど。

 しかし、多摩ニュータウン(というか全てのニュータウン)がやばそう、というのは前から聞いていて、でもそれは主に、家やマンションを買った人がそのまま年を取って、オールドタウンになってしまうというものでした。

 それがついに7割引きという、価格破壊とさえ言えない事態になり、ニュータウン好きな自分としては、何とも心を痛めていたのであります。

 場所は、京王線・京王堀之内駅から徒歩20分。分譲事業から撤退する公社は、一日も早く完売したいと在庫一掃に踏み切ったのだそうな。ふんふん。ちなみに1階の2LDKは、95年の完成時の5189万円から1312万円に急落!そりゃ定価で買った人は怒るわな。

 と、いうことで、実際どういうものか見に行ってみることにしました。

 

 学生時代この近くに住んでいた者としては、久し振りに降り立つ堀之内駅は懐かしい!

 駅前はガウディの建築みたいですごいんです。ダリみたいなオブジェもたくさんあって、マンションもヨーロッパ風、という、この中途半端なすごさがいいんです。

 歩いてみると、ニュータウンそのものが古くなっている、ということはあまり感じられませんでした。夏休みということもあって子供もいたし。道路はよく整備され、公園もあるし、さすがに人工的に行き届いています。

 ところが、目的地に近づくと、バブル崩壊後、というような空き地が目立ち始めました。

 そして、ついに目的の「コープタウン見附橋」に着いたのです。

 見たところ、ヨーロッパ風、ラピュタに出てきそう、と言ったらいいでしょうか。少しだけ月日を感じさせるけど、悪くありません。3棟に分れています。なん か、じろじろと観察してしまいました。駐車場は8割くらい埋まっています。部屋は半分空いているというけど、そんな感じはしません。色はシックな感じ、デザイナーズ・マンションのはしりみたいなイメージです。

 まわりをぐるぐると歩き、それからマンションの敷地を離れ、駅と反対の方に行くと、これがすごく綺麗な人口の池があり、立派な洒落た橋が架かっています。

 さらにその先に行くと、今度は本物の広い池があり、小道に入っていくとなんといきなり森の中です。10分も入ると全く喧騒は消え、虫の鳴き声と木々の揺れ る音だけです。うわっ、これは素晴らしい!街なんか簡単に自然が凌駕していきます。

 しばらくして一周し、元の場所に戻ってきました。するともう暗くなったニュータウンには様々なきらめきがあります。人工的なだけに、光が美しく、あの「コープタウン見附橋」も荘厳な感じです。ニュータウンのもうひとつの姿を見るようでした。

 

 帰りは人工の小川沿いに造られた「せせらぎ通り」という小道を歩きました。

 よく出来たマンションの間を抜け、灯りも綺麗だし、なかなかいい感じです。20分も歩くのは、こういったニュータウンが好きになれるかどうかだな。あまりの人工さに、馴染めない人もいるかと思います。

 そんなわけで、今回の検証ですが、個人的には「安すぎ!」という印象です。新宿まで電車に乗ってしまえば30分くらいだし。

 人工さと自然の対比。あなたはどう思いますか。