Japanese
           元 ちとせ 「ワダツミの木」
   

 

 元ちとせのデビューシングル「ワダツミの木」は素晴らしいです。

 個人的に、今までこれは、と思った女性ソロは3人います。1人目はチャラで2人目はUAです。今の(特にブラックを基調とした楽曲や、やはりソウルを感じさせる歌い方をする)フィーメール・アーティストの扉はチャラが作り、UAが開けたと思っています。その中から出てきたのがMISIAであり宇多田(とその後の彼女の大量コピー)であると思うのです。

 そんな流れと離れたところに立っていたのが、3人目のCoccoです。彼女の場合突然嵐のように現れ、あまりのことにただただ茫然としているところに、また嵐のごとく根こそぎ大地をえぐっていなくなってしまいました(しいて言えば椎名林檎はこれに近い)。

 元ちとせを聴いたとき、初めに思い浮かんだのはCoccoです。いや、実を言うと本当は誰もCoccoにはなれないし、歌い方が似ている訳でも曲調が同じ訳でもありません。ただ、鳴っている音の向こう、歌っている声の後ろに、広大な海や空や人の情念や息遣いが一体となって渦巻いているところが、同じような気がするのです。

 それは彼女が奄美大島の民謡唄いであり、その独特の歌唱法にあるとは思うものの、無理やり作られたエキセントリックさや女の哀しさをこれでもかと提示してくる幾多のフィーメール・アーティストとは一線を画し、それらをあっさり超えたところに佇んで立つ様が、逆に生々しさや想いや悲哀を(本人が意識する以前に)くっきり浮かび上がらせてしまう、という共通した存在のあり方を感じさせます。

 元ちとせがどこまでCoccoのような存在になれるのか、あるいは全く違う地平に立つのか。少なくとも今後に期待をかけられる類い稀な才能であることだけは、間違いなさそうです。

(2002.2.12.)