火照る熱を分けてくれ


連続勤務三十六時間。その間、一睡もしていない。

「今日は、疲れた……。飯、作りたくない……」

仕事上でも相棒となった連れ合いが、肩を揉みながら溜息をつく。

「ああ、まずはベッドだ。俺も限界」

腹の空き具合と風呂場とベッドを思い浮かべて、即座に選んだ一番の疲労回復手段。

いつからか、腕の中にいるのが当たり前になっていたそれ。
今更手放すなんて考えられない。

ほら、抱き枕も準備万端、寝る気だって満々。

「とりあえず、今日はお疲れ」
「ああ、まずは寝るか。朱里、起きたら飯、な」

「わかってるよ」

古今東西、一日の締めくくりには、いつだって安息の時間が訪れる。

「さ、寝るぞ、って……、うわっ、ファラ、何してんだよ。
俺は疲れてんだよ。おまえそっちで寝ろってば。俺の陣地に入ってくんなっ」

腕の中で暴れる手足を抑えつけて、自分より高い体温を堪能する。

「朱里、もう少し俺を労われよ」
「アホか、俺だって疲れてんだよ」

任務遂行後のささやかなじゃれあい。

「今更照れなくても」
「誰が照れるかっ!」

後に残しとくほどお楽しみは倍増するものだと、気づいたのはいつだったか。

「暴れたら余計疲れるだけだぞ」
「おまえが疲れさせてんだろうが。いい加減、俺から体温取るのよせよー」

ああ、あったかい。

これが待ってるから、ELGはやめられない。


えみこのおまけ


「使徒星の住人たち」シリーズ



この作品の著作権は、文・moro、イラスト・えみこにあります。
当サイトのあらゆる内容及び画像を無断転載・転用・引用することは固く禁じます。