こんなことするのはおまえにだけ。
こんなオモチャで簡単に幸せになれるなんて、本当におまえはお手軽すぎて困ってしまう。
来るかどうかわからないサンタを待つなんて、風邪でもひいたらどうするんだ。
すごく癪だが、今日くらいは仕方がないか。
どんなに平凡でくだらなくても、おまえの願いをひとつだけ叶えてやるさ。
「ジャック、朱里には内緒だぞ。いい子だからもう少しだけこのまま寝たふりしてろよ」
目を覚ました瞬間、きっとおまえは目を輝かせ、
低俗で安易な幸せに酔いしれるのが目に浮かぶ。
「今はまだ、サンタを待ちたいのなら待てばいいさ。もうしばらくは付き合ってやるよ」
いつか、サンタの夢が消え失せるその日まで。
その日が来たら、おまえはたくさんのことを知るだろう。
本当に大切で大事なものはサンタの贈物にはなりえないのだと。
真実の幸せはそんなカタチをしていないのだと……。
でも、おまえは何も心配しなくていい。
いつだって天使の加護はおまえの上に降り続ける。
これは不変の決定事項。
俺がそう決めたのだから、誰が何と言おうとその事実は変わらないから安心していい。
他人なんて知ったこっちゃない。
俺はおまえにしか興味がない。
いついつ時もおまえだけに祝福を……。
年に一度しかやって来ない気まぐれのサンタになんか、この俺が負けてたまるか。
「まずは今夜が勝負だな」
「使徒星の住人たち」シリーズ
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