最初の愛、最後の恋


昨日までの俺も。明日からの俺も。
それらすべてを忘れて、このひとときだけはおまえと共に生きよう。

更なる望みなどありはしない。
ただひたすら、この一瞬一瞬を精一杯生きてやる。

心素直にさらけ出し、与えられる想いを貪るだけ貪り、
誰にも奪われないようにしっかりと抱き締めて。

どんな小さな不安すらもかなぐり捨てて、
生きているという実感を、ふたりでいる喜びを今はただ味わいたい。

こうしていることが、おまえの幸せに繋がるのなら、
甘い声で求められるままに、俺はいつだって力強く抱き締めてやる。

だから。

「泣くなよ。頼む、笑っててくれ」

天使を貶めた罪は深い。
すべての罪は俺の命であがなうから、それで許してくれないか?

「バカね、泣いてんかないわよ。あんたなんかに泣かされるわたしじゃないわ」

つん、と突き出す唇が小さく震えているのがとても愛らしい。
その虚勢すら愛しすぎて、俺のほうが泣けてきそうだ。

さあ、おまえと最後の恋をしよう。

命尽きるまで恋をしよう。

誰にも邪魔されないよう、ふたりだけの深淵で……。

すべてを焦がす恋をしよう。


「使徒星の住人たち」シリーズ 「きみが片翼」



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