キッチンライフ


お腹がすくと、せつなくなるものなのかしら。

人恋しくなって。
誰かとご飯を食べたくなるの。

だけど、それは誰でもいいわけじゃなくて。
一緒にいたいのは、やっぱりただひとりだけ。

「チビぃ、お腹すいた〜」
「わかったわかった。ちょっと待ってろ」

思わず涙と一緒に鼻水まで出ちゃって、ずずず……と啜ったら。

「ったく。そんなに腹すかせてんのかァ?」

しゃーねえな、の乱暴な台詞が途端に囁くように優しくなる。

何よりも。
いい匂いがフライパンからしてきて、
「つくづく結婚してよかった〜」と小さな背中を抱き締めたくなっちゃうのはこんな瞬間。

「チビ、大好きっ」

勢いつけてうしろから覆いかぶさったら、床にチビの顔がめり込んで──。

「てんめぇ、俺に恨みでもあんのかァ〜」
「あははははは」

後悔しても後の祭り。

「何が『あはは』だ。笑いこっちゃねー」

フライパン返しを持ったチビの右手がふるふると震えていたけど……。

「ねえ、何か匂わない?」

そんなことよりこっちのほうが今は大事。

「チビ、焦げてる焦げてるぅ〜。わたしのご飯がぁ〜!!!」

そんなこんなで今日も朝から甘い甘いキッチンライフ。

ただ今、新婚生活満喫中♪


「使徒星の住人たち」シリーズ 「きみが片翼」


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