俺が知るかよ


「ねえ、『白熊』って知ってる? すっごくおいしいんですって。わたし、食べたいわっ」
「あン? 白熊? 熊の手の親戚みねえなもんか? おまえ、ヘンなもん食いたがるなあ」

「あら、わたし、熊の手って知らないわ。それも甘いものなの?」
「まーなー、ホントのところは知らねえけど。右手がいいってのは有名な話だなあ」

熊は蜂の巣を襲って蜂蜜を舐める。
右手には蜂蜜が染みこんでいるらしいからな、と仁は説明した。

「右手と左手じゃ価値が全然違うって噂だぞ」
「でも、熊が右利きとは限らないじゃない? 左利きだったらどうなるの?」

「俺にそんなこと訊くな。俺は熊と話しなんかできねんだからわかりっこねえよ」

確かに、と頷いたリリアがハタと思い出して。

「熊の手なんてこの際どうでもいいのよ。私が食べたいのは『白熊』なの。
思いっきりおいしい白熊、お願いね♪」
「だーかーらー、白熊ってのは熊の手料理みてえなもんなんだろ?
わけわかんねえもん注文するなよな」

「……あのね、わけわかってないのはチビのほうでしょ?
知らないなら知らないって最初から言ってよね」


えみこのおまけ


「使徒星の住人たち」シリーズ 「きみが片翼」



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