森の恵みと沢にひたるツアー
ツアー記録
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登攀研修(初級)
のようす
(独)産業技術総合研究所の地質調査総合センターの依頼で登攀研修の入門編を行った。彼らは未知の場所(未踏の地も)を踏査することがある。その安全性を高め、着実に調査が進むよう、懸垂下降とフォロワーとしての登攀を中心に練習してもらった。(2005年にも行っている。今回写真で示してないものもこちらにあるので参考に)
寒いので、人工壁と林道脇の斜面を中心に行った。
*(注釈)にその他やったことや注意点をメモした。
初日 人工壁で懸垂下降、ロープを使用した登攀の基本を練習
2日目 林道脇の自然斜面で実戦練習
3日目(雨) 自然の岩を利用したゲレンデを見る
2007年2月21日(水) 人工壁での基礎練習
1.懸垂下降
神奈川県山岳スポーツセンターのウォールの横っちょを主に使わせていただく。
おだやかな日で、ハナちゃんがうろうろごろごろ。
エイト環、ATC、右手も左手も、ロープ径は10.5mm, 8.5mm, 7mmといろいろやってみる。
*セット時のセルフビレイ 下の手の握力とロープ屈曲 下降器がないときの方法(カラビナ2枚、イタリアンヒッチ) 手袋着用
セット中にエイト環を落とさないようにする方法。大きい方の環をカラビナに通したまま、ロープをセットする。カラビナからエイト環を外し、小さい方の環をカラビナに通しなおす。(最初のセットでロープを上から下に通すと、最終形が見慣れた形になる。)
仮固定はエイト環がやりやすい。ロープをエイト環の細いところに1回余分に巻いてから上に3,4回巻いて、できれば2本のロープの間に通し、手元に戻してハーネス(かビナ)にビナで留める。
ほどく方が要注意。テンションをかけておく方向を間違えるとガクッと落ちる。

まずは地面近くで作業を確認し、
高いところから下りつつ、途中で練習。
足を突けるならその方がやりやすい。

地上で他の人がロープを持って待つ。もしずり落ちてきたらロープを引くと止まる。
2.ロープで安全確保して登る
地面から2段目テラスに登るという設定。トップ(リード)が登り、セカンドを確保しているところ。

*確保支点がしっかりしているときは直接確保器をセットしてもよい(岩場ゲレンデで推奨)が、支点から離れるとロープをたぐりにくい。
トップの墜落をセカンドが止める。ロープの流れがよく、垂壁を抵抗なく落ちるので、確保者は最初のランニングに極力近づいておく。
3人(以上)で登るときの代表例として、中間者がアッセンダーで登る練習(ラストは末端)。プルージック、アセンション、タイブロックを試す。
ボードの端っこでやったため、足場にアブミ、ホールドにぶらさげスリングという人工登攀になった。
陽がかげり、昼間の講習終わり。ヌンチャク回収がてらボードを登るN森氏(右)。
この日はボードのメンテナンスをしていて、「最新クライミング技術」などの著者の菊池さんがいた。懸垂下降でのロープ連結では、束ね8の字にしているとのこと。単純な束ね結びなら止め結びをしたいが、結び目が大きくなるとも。
夜の部
ロープの結び方各種、ブーリンやテープ結びがほどけやすいこと、ロープのまとめ方、イタリアンヒッチ、カラビナにかけてからのインクノットなどなど
2月22日(木) 自然斜面で応用練習
林道脇の斜面で、きのうの「確保しての登り」と「懸垂下降」を繰り返す。
見た目より岩がボロボロで登りも確保などの動作も落石に注意。確保者は落石を受けない位置に立つ。人工壁とは異なる。
支点(写真より左)のそばが傾いて立てないので、支点からメインロープでセルフビレイを取り、ボディでセカンドをビレイする。これも人工壁とは異なる。こっちの方がいろんなシチュエーションで使える。支点があやしい、離れている、座り込める、足場がよいなどの多い現場向き。
ラスト(末端)はぐいぐいひっぱると楽に登れる。トラバースのときは注意。
ヤブがひどいときは、懸垂下降のロープがひっかかるので、肩に背負って降りてゆく。
ロープが絡んだままエイト環に。回収に手間取り、アッセンダーでぶらさがって作業中に落石があって跳びはねてよける。。。
適当な立ち木などがないとき、ハーケンを打ち込むことも。地質調査用のハンマーでやってもらった。重いので打撃力はよい。
ちょうどよいリス(岩の割れ目)を探すのに苦労する。打ち込んで手前の岩がはがれることも多い。打ちたいところに打てるわけではない。
リスがないときはボルトを打つこともある。これは20分前後かかるので、足場が安定しないとつらい。今回は足場が悪いのと岩にひびが入ってしまうため、断念。ボルトも必ず打てるわけではないことを実演してしまった。。。
5mほどの段差を6人で通過という設定。中間でエイトノットを作り、次々引き上げる。はじめルベルソ(フォロー確保器)を使ったが、「ちょっと下ろす」操作がしづらく、イタリアンヒッチに変更。
ロープを片付けて湯河原へ移動。
太い(長い)ロープは手で持つのがつらいので、首にかけて振り分けると楽だ。
夜は机上講習。「生と死の分岐点」とその続編を中心に、確保技術・道具・考え方が変遷していることを話し合う。ペツルのカタログやエーデルワイス(ロープ)の取説にもさらりと最新手段が載っている。 ロープが切れるのは鋭い岩角+大加重で、ロープがぼろい(表面が毛羽立つぐらい)のは案外問題ない。
バッテリー液はだめだが虫除けスプレーはよい
アイゼンは刺さらない
懸垂下降、セルフビレイなど単純なミスで事故がおきる
懸垂下降のロープ連結は余りをたっぷり出しての単純束ね結び
などなど
2月23日(金) 幕岩にて岩場ゲレンデの観察と復習
雨でロープ使用の講習はやめ、幕岩のゲレンデを見る。ルート本と比べてルート確認。しっかりしたボルトが打たれ、終了点も鎖状に作られている。支点がしっかりしていればこんな壁も登るのかと、初心者オドロキ。現場でも部分的には人工支点を利用することもできる(きのうの講習では不十分だったが)。
専門家同志、この模様がどうのこうのと話し合っていた。
実際の調査現場では、講習内容のまま適用できることも多いだろうし、もっと迅速さを求められることや、逆に安全性に時間や労力をさけることもあるだろう。講習内容を応用して仕事に生かしてもらいたいものです。ごくろうさまでした。