シニファンはある部屋の前で立ち止まりました。そしてドアの上の

プレートを指さします。

 

 シニファン & ルーニャ

 

 ここが二人の部屋のようです。中はベッドとバイオリンたてと机が

二つづつあるだけの、つつましい部屋でした。シニファンは机の上を

指さしました。荷物をおけということのようです。

 そして部屋を出るとルーニャはまた、だまったままのシニファンの

後をとことことついていきました。シニファンは大きなドアの前で立

ち止まり、その上のプレートを指さしました。

 食堂、と書いてありました。中に入るとたくさんのネコたちが食事

をしたりおしゃべりをしたりしています。

 そこでシニファンはルーニャにトレイを持たせ、とりどりの大きな

おなべの中から、かつおぶしのスープとにぼし、あじのひものをとっ

てくれました。そしてふたりならんで夕食をとりました。

 シニファンの毛並みは、しっぽの先までつやつやしています

そばにいると思うだけで、ルーニャはぼおっとしてしまいました。

(でも、シニファンはどうしてぼくと口をきいてくれないんだろう)

 そう思うせいか、食事はあまりおいしくありませんでした。ルーニ

ャはおかあさんのつくってくれるいわしのハンバーグがこいしくなり

ましたが、がまんするしかありません。

 シファンは、ずっとだまったまま食事をつづけています。そして、

あっという間に食べ終わると、ルーニャに手をふって、どこかへいっ

てしまいました。

 ルーニャは広い食堂に、たったひとりでとりのこされてしまいまし

た。

(シニファンは、ぼくのことがきらいなのかしら)

 ざわざわとした話し声や食器のふれあう音がうわんうわんと響く食

堂で、ルーニャはさみしく、あまりおいしくない食事を終えました。