よく朝、シニファンとルーニャとドミニクは、ミルドラ校長先生に

よばれて、校長室に行きました。

「みんな、きのうの演奏会ではおとなたちにまじって、よくがんばり

ましたね。たいへん感心しました。ごほうびをあげたいと思うのです

が、何がいいですか?」

 ミルドラ校長先生にほほえまれて、三匹とももじもじしています。

「えんりょうすることはないのですよ」

 すると、ドミニクが「はいっ」と手をあげました。

「えーと、えーと、あの、一回だけでいいですから、いわしのハンバ

ーグが食べたいんですけれど」

「まあ、そんなことでいいの? でもヒゲがいたむから一回だけにし

てくださいね。あとの子たちはどうしますか?」

 つぎにルーニャがそおっと手をあげました。

「あの、ぼくも、いわしのハンバーグがいいです」

「まあまあ、みんなくいしんぼうね」

 ミルドラ校長先生は、ゆかいそうに笑いました。

「ところで、シニファンはなににしますか?」

「……それでは校長先生、ぼくたちのために一曲お聞かせ願えません

か?」

「え、シニファン、声が出るようになったの!」

 ルーニャもドミニクもシニファン当人も、おどろいて顔をみあわせ

てまま石のように動けなくなってしまいました。が、ミルドラ校長先

生はただひとり、なにもなかったようにほほえんでいます。

「わかりました。では一曲お聞かせしましょう。みんな、いすにおす

わりなさい」

 ミルドラ校長先生の、草原をわたる風のようなバイオリンの音色が

うれしさとおどろきにほっぺを染めたルーニャとドミニクとシニファ

ンのあいだを流れていきます。

 それはどこかパルフォを思わせる、さわやかでやさしい音色です。

 子ネコたちのヒゲをふるわせたバイオリンの音色は、校長室の窓を

すりぬけ、おもてのあたたかな陽射しの中へゆるやかに広がっていきました。

 

 

 

                               おわり