ミレニアムにちなんでウィリアム・ハーシェルに捧げられたステンドグラス
フランシス・リング
2001年2月24日、ウィリアム・ハーシェル卿を讃える見事なステンドグラスがスラウ近郊のアプトン聖ローレンス教会に奉納されました。ミレニアムにちなんだこのステンドグラスは太陽系を描いており、大望遠鏡でそれらを観測するハーシェルがデザインされ、デヴァイゼズに住むアンドリュー・テイラー氏によって制作されました。ノラ・クルークシャンク嬢からオックスフォード主教管区への遺贈金に対し、多くの教会からいくつもの使途への要望が出されましたが、結局その遺贈金は記念のステンドグラスのためにウィリアム・ハーシェルにもっとも縁の深い同教会に与えられ、最終デザインはコンクールで選ばれたのです。
1788年5月8日、バースを去って6年後にウィリアムがメアリー・ピットと結婚したのがアプトン聖ローレンス教会であり、また彼の墓(1822年死去)は12世紀当時の教会の塔の下にあります。ウィリアム・ハーシェルと妻、息子ジョンは長年この教会に通っていました。遺贈の条件は最終使途に詩篇第8章からの引用を含むことでした。ステンドグラスに描かれた銘文が詩篇からの引用です。「あなたの天を、あなたの指の業をわたしは仰ぎます。月も、星も、あなたが配置なさったもの。そのあなたが御心に留めてくださるとは、人間は何ものなのでしょう」。
奉納式は教区牧師であるデイヴィッド・ミエル師が進めました。教会は町の職員やハーシェル家の子孫、バースで活動しているウィリアム・ハーシェル協会など天文学や科学の関係団体の代表者で一杯になりました。講演者として招待されたヘザー・クーパー博士が、ウィリアム・ハーシェルの主な業績と近代天文学や宇宙探査との関わりを概説しました。式はウィリアム・ハーシェルの誕生日(11月15日)のためにこの地区で書かれ、アプトン聖ローレンス教会で使われている賛美歌で終わりました。オルガンの独奏はその場にふさわしく、ウィリアムがもともとバースにいた頃に作曲した作品から選ばれました。
(バースのオクタゴン・チャペルのオルガニストとしての実り多い時期があったにもかかわらず、もはや生活が完全に天文学に占められてしまっていたからでしょうか、ウィリアム・ハーシェルがアプトン聖ローレンス教会での音楽演奏に参加した記録はないようです。フランス訪問時にナポレオン・ボナパルトの前でオルガンを演奏したという記録はありますが、かつては作曲家・演奏家・指揮者であったウィリアム・ハーシェルをその後半生において音楽と関連づけるできごとは他にほとんどありません)。
アプトン聖ローレンス教会のステンドグラスは色彩豊かで生き生きとしており、細部まで美しく描かれています。午後遅く式の終わり頃になると、2月の太陽が身廊の西端に設置された新しいステンドグラス越しに射してきました。このステンドグラスは過ぎ去った時代を見事に甦らせてくれます。18世紀終わりから19世紀初めの有名なアマチュア天文家ウィリアム・ハーシェルが、自ら設計した望遠鏡で天空に次々と新たな発見を行っていた時代を。
原文(英文)はウィリアム・ハーシェル協会会報 "The Speculum" 2001年第3号に掲載
日本語訳:木村達郎