3月29日、ハーシェル協会年会出席後、街中を散策、バース浴場博物館と同じ建物内にあるパンプルーム(18世紀に建てられた社交場)でアフタヌーン・ティーを楽しんだ。緩やかな流れのエイヴォン川に掛かるパルトニー橋から坂道を上がって、円形のザ・サーカス、三日月型のロイヤル・クレッセントに出た。200年の歳月を経てなお、斬新で見事なデザインの建築に、ジョージ朝の優雅な暮らしが思い起こされる。夜7時半からバース寺院でバッハ・フェスティバル。後期ゴシック建築に響く荘厳な音楽に耳を傾けた。
翌日は3月最後の日曜、サマータイムに合わせ時計を1時間早めた。3人で市内観光、浴場博物館や女流作家ジェーン・オースチンの博物館を見学、オックスフォードに向かう。31日、同大学のボードリアン図書館の使用許可を受けるため、アドミッション・オフィスに9時半に入った。椅子には数人が順番を待っており、スタッフに呼ばれると、記入用紙(事前にウェブで入手)やパスポートを見せ、さらに奥のカウンターに呼ばれ、館使用上の誓約文書を読み上げ、数日滞在用の図書館使用証が顔写真入りで発行された。
目的の資料は、ブロードストリートを挟んだ新館のウェスタン・マニュスクリプト室にあった。15席ほどに縦長の閲覧室では、資料番号をカウンターに申請するシステムで、ライブラリアンが親切に対応してくれる。コピーは、2階のセルフ・サービスで許可された本に限って各自で取ることができ、それ以外の貴重な第一次資料は、マイクロフィルムから焼いてもらう。海外の研究者へのサービスも充実しており、クレジットカードで支払い、後日コピーを郵送してもらう手続きも簡単に済んだ。偶然、日本の大学の先生に会う。チャップ・ブック(民衆に普及していた手のひらサイズの18世紀の貴重な本)を研究しておられるという。館を出た夜7時、老舗のパブで、ギネスや伝統料理を満喫する。
4月1日は初めて雨に降られたが、午前中に市内を散策、午後はバスでロンドンへ。ビッグベン近くで、乗用車に乗ったピンク色のスーツの女王のお姿を偶然見ることができた。ハーシェル・ツアー最終日の晩、5人は買ってきた食事を囲み、楽しい想い出を語り合った。
翌日からは父娘だけのロンドン滞在。まず2日はロンドン塔・ギャラリーまわりなど。3日、父はグリニッジ、私は再びバーリントンハウスのRASへ。ハーシェル・アーカイブは1978年にカタログに、カロライン、ジョン、ウィリアムの順でまとめられている。カロラインに関しては、1791-6年の日記や、8つの彗星発見についての観測記録などが保管されている。200年以上前の時代を生きた人々が交わした書簡が、封蝋もそのままに残っている状態で手にしたときは、時代の重さも一緒に感じることができた。
翌4日も一日図書館を使わせていただき、夕方、RAS職員のワイン・パーティーに招かれた。地下会のソファーのある部屋には10人ほどが集まり、楽しく歓談した。
例年に比べイギリスは暖かかった2003年の春、ハーシェルの精神を受け継ぐ人々の温かさに触れ、心を豊かにすることができたのを感謝しています。