WALK
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季節が変わって色々と忙しい時期になってきてしまう。 そんなこんなで、一息つける暇もなくて。 だんだん、和葉と会える回数も減ってきていた。 だけど、そんな中やっと時間を見つけて二人で会う 約束をしていて、今から会うことになっていた。 和葉と一緒にいないと、昨日も今日も明日も俺には なんだかどうでもよくてただ平凡に過ぎる毎日が うとましく思えていた。 「あぁーマジでしんどっ」 ため息をついて思わずこぼれる本音が刺々しい 感じで可笑しい。ソレを聞いたらアイツはなんというだろう? 甘えるなとか言いそうで思わず噴出しそうになる。 これから和葉に会うというのに、へんな感慨にふけっていて 約束の時間に遅れそうになってしまった。 「アカン!遅れる!!」 急いで和葉のメットを片手にひっかけバイクにまたがり 和葉の家へと急いだ。 だんだん和葉の家へと近づいてきて。 見慣れた姿のアイツを確認する。 一目、和葉のことを確認したらスっと肩の力が抜けていく のを感じた。 ん?今までめっちゃ気張ってったんやろうか…? なんかごっつあれやし、楽なような… そんなことを感じて不思議な感覚に浸る。 途端に和葉の俺の呼ぶ声がそれから揺り起こすように 頭に響く。 「もー平次ィ遅いっ!!」 「ごめん、ちょっとイロイロしててん」 「何、イロイロって何がなん?」 俺の言葉に不思議そうに頭をかしげて笑う。 何をと聞かれても、今まで色々してたことといえば 和葉のことだけしか考えていなかった。 どう言えばいいだろうか。 「いろいろやっちゅーたら色々や〜」 そのことから話題を逸らすように軽く流す。 いつもだったらそれ以上あまり和葉は突っ込んで理由を 問おうとはしない。だけど、今日はなんだか違った。 「今はぐらかしたつもりやろ?アタシには分かったで! 何をイロイロしてたん?なぁ!なぁ?!」 そんなことをいつまでも気にして問おうとする 和葉がちょっとかわいくて。 その勝ち気な姿までもが。 「和葉ァー」 「何?」 「かーずーーはァー」 「は?」 「か〜〜ずぅーーーーはァ〜〜」 「はぁ〜、アホちゃう?平次、アンタ…」 「お前のことや」 そう俺が言うと和葉はムッとした顔をして怒ったように して言う。 「なんでアタシがアホなんよっ?もっ…」 「ちゃう、ちゃうねん。お前のこと考えとった。お前のこと イロイロや。それがイロイロ。お前のことをイロイロ 考えとったっちゅーわけ。分かった?」 和葉が次の言葉を発するのを遮るようにして俺が 和葉に囁く。そして、強く抱きしめた。 「……」 ん? 和葉…? 俺の腕の中でピクリとも動こうとしないで何も言わない。 「和葉?」 「……ッ」 微かに声を発しようとした和葉の声はすぐに消えていく。 腕の中にいる和葉の顔がみれなくて、抱きしめていた力 を緩めて和葉の肩を持ち顔を覗き込んだ。 「オマエ…」 そこにはただただ静かに涙を流す和葉の姿があって。 その姿に絶句する。あまりにも綺麗すぎたのだ。 和葉の頬をゆっくりと涙が伝って落ちてく。 ポツリとその瞳からこぼれる涙が綺麗すぎてみとれてしまう。 「なんで泣くねん?」 そっと和葉をなぐさめるようにして聞いてみると、ゆっくりと 俺を下から見上げるような形で見つめて、前髪揺れる。 「だって…だって…な…」 照れながら和葉は言う。 たかが”そんなこと”で泣く和葉はおかしい。 そんなこといつも思ってるんやけどなァ… ちゃんと今度からたまには言うてあげなアカン。 和葉をまた泣かせてしまうから。 「たまにはちょっと歩くか?そこらへん」 「うん。あ、バイクは?」 「まーええやん、ココ置かしとったって」 「分かった、置いとき」 「いっこ聞いてええ?」 「うん、何?」 和葉に聞こうと思ってたことがある。 さっきこんな玄関先でなんで急に泣いたのか知りたかった。 その泣く姿に目を奪われてしまったのに。 和葉の泣くとこは見たくない。だけど、あんなに綺麗に 涙を流すとこを見たのは初めてで。 ちょっと戸惑いもした。 「さっき、なんでそんなことで泣いたん?」 「えっ…あれやから…アレ…久しぶりに逢うたし… アタシ、ほっとしちゃって。涙腺でも弱くなったんや! アハハっ」 笑いながら俺の少し先をスキップしながら歩いて ポニーテールのようにくくってる後ろ髪が軽やかに 揺れた。 「もう、あんなトコで急に泣くなや、俺びっくりするやん」 「泣きたくて泣いたんちゃうもん〜。しゃあないっしょ?」 「分かった。ほんなら、俺が変わりに泣いたるわ!!」 そう、それだったらオマエは泣かないですむだろう? 君のために。 君のかわりに傷だらけになる。 だから、泣かないで。哀しまないで? 外灯の光が和葉に重なって。 影が伸びてゆく。まっくらなこの夜に。 和葉の影が。 「ぷっ。バーカ」 「バカやと?!せめて、アホっていえやァ。バカ って言われたらホンマに馬鹿みたいやん?」 「あははっ!ほんまに平次バカや!」 「けっ」 このトキを超えて、夜までも越えて。 ずっと歩いていこう。 光と影が重なるそのところまで。 月がぶつかってしまう所まで。 だから。もう泣かないで?そんなところで。 そんなことで。 君のために傷だらけになるから。 もう泣かないで。 そんなことで――――――――― |
たま様からいただきました〜♪
たま様のサイト「splash!」で33333を踏むことができまして ありがたくリクエストさせていただきましたv リクの内容は「平次と和葉ちゃんが幸せを感じているお話」で 「たま様が気になる歌をモチーフにしたお話なんかだったら もっと嬉しい」とお願いした所、快く引き受けてくださいました★ このお話はZIGZOの「WALK」をモチーフにしてくださっております。 平次君がいい感じですよネ! たま様にもお伝えしたのですが、平次の甘くなりすぎないかわいさが 海月はとっても好きです! 「分かった。ほんなら、俺が変わりに泣いたるわ!!」 って思わず言ってしまった平次がね、平次がね、平次がねーーー! それに思わず吹き出しちゃった和葉ちゃん、いいわー。 大好きなたま様からこんなステキなお話をいただけて すっごく幸せな海月でした! たま様、本当にありがとうございました〜♪ |