台北旅行記

2002年1月14日〜1月17日

1月15日 

故宮博物館
足裏マッサージ
士林夜市


故宮博物館

 2日目は、今回の旅行の最大の目玉である「故宮博物館」です。
 数年前、北京に行ったときには当然のごとく「故宮」を見学しました。念願の「ラストエンペラーごっこ」(単に宮殿の中を幼いプーイーになったつもりで走り回るだけです。頭の中で坂本龍一の曲を再生できたら完璧)ができてご満悦でしたが、「あれ?これだけの宮殿なのに、宝物殿がないの?」と思いました。
 不勉強ながらあとで知ったのですが、あの広大な宮殿に秘蔵されていたお宝は、ほとんど全部、台湾にあるのだそうです。激動の中国近代史の中で本土を離れてしまったお宝たちだったようです。
 「そうかあ、故宮博物館って名前は知ってたが、台北にあるとは知らなかった。台湾だったら気軽に行けそうだし、そのうち行ってみよう」
 と思っていましたが、今回その希望がやっとかないました。

 友達から「故宮博物館」は街中からはちょっと離れているけど、バスで行けると聞いていたし、ガイドブックにも故宮行きのバスの番号は掲載していましたが、台北駅周辺を昨日歩いてみたかぎりでは該当の番号のバスを見つけられませんでしたので、出掛けにホテルのフロントに聞いてみると、

 「台北駅の反対側」

 という、とても漠然とした回答でした。
 たぶん、行けばわかるだろうと、てくてく歩いて台北駅の西側のバス乗り場に行ってみました。ホテルは東側なのでちょうど反対側といえばここのはずです。しかし、そこは人もあまりいないし、バス亭の看板はありますが、「304」バスの標識は発見できませんでした。気を取り直して、今度は駅の北側に行ってみましたが、やはり304の表示がない。その通りの向こう側にバスがたくさん溜まっているところがあったので、歩道橋を渡って行ってみると、どうやら長距離バス乗り場のようだったので、また北側のバス乗り場に戻ってみました。

 と、書くとたいしたことないですが、台北駅周辺の敷地は広く、「あっちかな?」と思っても、いちいち数百メートル歩くことになります。
 さて、北側に戻って、そこにいた係員に「故宮博物館」というメモを見せると、すぐにわかってくれて、さっき渡ってきた歩道橋を指差して、どうやらそれを渡って左側だと言うのです。そこはさっき覗いた長距離バスの溜まり場でした。
 
 「げ、また戻るの?」と思いつつも、また歩道橋を渡って、バスの溜まり場に行って係員に「故宮博物館」のメモを見せましたが、どうやらわからないようで困ってます。「たしかに、ここではなさそうだし、もっと先か?」と思って、道に出て歩きはじめると、普通のバス亭が見つかりましたが、そこでもないようなのです。
 すでに歩き回って疲れてきました。これから世界最大級の博物館に行くのだからその前に疲れていてはベストを尽くせません。
 あきらめて、きょうみさんが言っていた「士林からタクシー」という方法をとることにしました。
 
 MRTは、数年前に出来た地下鉄のようなもので、切符も買い易く、表示も親切なので日本の地下鉄よりもフレンドリーでした。切符はイオカードみたいで立派ですが、これを使い捨てというのはちともったいないかな。
 士林でタクシーに乗ると、110NTで博物館に着きました。
 

故宮博物館のお宝たち − 個人的趣味編


 

古代中国のピカチュウ
黄色く塗ればさらにピカチュウ度があがりそうだ、と思ってずっと魅入ってしまった。
見れば見るほどピカチュウなんですけど、作者はとうに亡くなっているだろうから残念だ。生きていたら著作権侵害で訴えてがっぽり儲けられたかもしれない。 

 

 
 
 

象はこれしか発見できなかった
2頭いたので、お部屋の入り口の飾りに最適

 

 
 

ちょうちんブルマーはたくさんあった

「タケちゃんマン」が走馬灯のように頭の中をぐるぐるしてしまいました。


Ceci n'est pas une Pipe−これはパイプではない
フーコーもこの題で絵画論を書いた(読んでないけど)、マグリットの連作の題名。

これを見たときにまっさきにその言葉が浮かんだのだが、
乳丁紋勺」と書いてあるので、たしかに
これはパイプではない


カレーが食べたくなった

このタイプもたくさん陳列されていた。
インドカレーサーバーはインド人の発明ではないような気もするが、こういうのからヒントを得たデザインなんだろうか?


 
 
 

馬だ馬だ〜!

足が棒立ちで、舞台で使われる「人間が二人入って演じている馬」みたいである。


 

上の馬の顔を拡大。
すっとぼけた表情がすばらしい

 
 

 
 
 
 
 

マリノ・マリーニ展に並んでいても、違和感ないだろう


 

豚は富の象徴らしくて、いろいろあったが、この子がいちばんかわいかった


 

これは故宮博物館を代表するお宝らしい。ガイドブックにも載ってるし、絵葉書にもなっている。

天然の石の色を利用した「白菜」の彫刻と、やはり石の模様を利用して加工した「豚の角煮」
白菜はともかく「角煮」が後生大事に展示されているということに感銘を隠せない。
客の食欲を刺激する美術品としては世界一かもしれない。

シビンらしい
 
  
 書画の類は写真撮影が禁止でしたが、陶器類は撮影できたので、自分が気に入ったものを撮影してみました。

 他にもわりとおもしろかったのは、漆塗りの宝箱の数々。日本から送られたすっごくよさげな蒔絵もありました。そういう日本だと「お道具箱」みたいな箱の中に、小さな工芸品がびっしり入っているのです。からくり箱というのか、仕組みがわからないと開けられないような凝った細工のものも多かったです。皇帝たちはこういうのを客人に見せびらかして楽しんでいたんだろうな。箱の中は仕切られていて、工芸品がぴったり納まるようになっていました。もし、あの中の一個でも紛失したら・・・・・宦官の首が飛んだんだろうな・・・・と想像してしまいました。

 おまけ。故宮博物館のお向かいはこんな立派なマンションが建っていた。門が中華風。

足裏マッサージ

 故宮博物館を堪能したあと、今度こそちゃんとバスに乗って台北駅前に戻ってきました。
 台北駅の南側の一角は書店街で、こじんまりした神保町のようでしたが、その奥にある「排骨大王」という店で、排骨麺を食べました。

 豚の骨付き肉を揚げたものが上に載っています。麺もびっしり入っていて食べで充分でした。2時ごろだったのですが、会社員や買い物帰りの夫婦などで込み合ってました。85NT(約280円。安いぞほんとに)

 ホテルに一旦戻って、一休みしてから、ついに足裏マッサージに挑戦しに行くことにしました。なにせ、故宮博物館で歩き回りましたし、それでなくても昨日、今日とかなりの距離を歩いているので、足がパンパンに張っていたのです。マッサージ屋はいろいろありましたが、ガイドブックにも載っていたし、台湾在住の方にも評判がよいようでし、それにホテルから歩いて行ける距離だったので「滋和堂」というところにしてみました。

 道の途中で見かけた不思議な石。高速道路の真下。この石を動かすと呪われるのかもしれない。

 歩くこと15分くらいで、場所はすぐにわかりました。だって観光バスが前に停まっているのです。ちょうど夕方だし、ツアー客が食事前に訪れそうな時間です。中に入るとスタッフも日本語ペラペラで、「あっちで足を洗ってください」と言われ、椅子のある銭湯の流し場みたいなところで自分で足を洗い、スリッパに履き替えて、順番待ちの椅子に座っていました。

 目の前には10台のベッドがあり、どうやらその奥にも部屋があるようです。大勢のスタッフがキビキビと客の足をマッサージしていました。客はほとんど全員日本人でした。みんな「痛い!イタタタ・・・・・そこはどこ?」「胃」とかいう会話をしています。
 15分ほどで私の番になりました。手の空いたスタッフが数人やってきて、私はひょろっとした眼鏡をかけたお兄さんがなかなか好みのルックスだったので「あの人がいいなあ」と淡い期待を抱いたのですが、先に中年女性のスタッフが私をひっぱっていってしまいました。好みのお兄さんは私の後にいたオヤジ二人組の片割れを案内してました。ちぇっ。

 さあ、いよいよ、待望の足裏マッサージがはじまります!
 
 中国式マッサージには欠かせない、漢方薬のお線香のような匂いのするローションを足の脛にたっぷりのせて、それをちょこちょこと手につけながらまず足全体を揉み解したと思うと、いきなり「いてて」となりました。痛い場所と体の各部位が連携(?)しているというわけで、足のツボがどこの部位を意味するかが図解されたパンフレットを渡されるので、それを見ながら「私はどこが悪いんだ?」と知ることができるのですが、「どこが?」と言う暇もないほど、どこもかしこも痛い!
 特に昨日今日とかなり歩いてますので、その疲れもあって、足も相当むくんでいるはずです。となりのベッドに横たわっていた女子大生二人組みも「足が張ってるから余計に痛いような気がする」と喋ってましたが、その通りです。

 それほど力をいれてツボを押さえるわけでもなく、ただローションで指を滑らすようにマッサージしているのですが、ときおりほんとに飛び上がりそうに痛いときがあります。十段階評価で痛い度3くらいの「痛きもちいい」のが3割、痛い度5くらいの「かなり痛いがなんとか黙って絶えられる。このくらいの痛みは癖になるかも」が3割。残り4割の時間は痛い度8の「うおぉおおおおお」という感じの時間配分でした。涙がちょちょぎれますが、先生は優雅に隣の先生とお喋りしながら、淡々とマッサージしています。
 
 15分くらいした中盤に、いきなり痛い度9くらいの、ほんとに飛び上がるくらいの痛みが脳天を突き抜けました。思わず足を先生の手から離そうとしましたが足首をしっかり押さえられて動けません。手を出して、先生の手を阻止しようとしましたが、あっさり振り払われてしまいました。向こうもプロですから、客のこんな反応にはビクともしません。

 「アダダダダ・・・・イダイ、イダイ、イダダダ・・・・」

 と、必死の形相で悶える私を冷ややかに見つめながら先生がポツリと「・・・ゾウ」と言いました。意識が痛みに集中しているので、最初、「心臓」と言ったのかと思って、「え?私、心臓が悪いの?」と聞きなおすと、先生ははっきりと、

 「かんゾー」

 と言いました。痛みに悶絶しながらも、

 それって当たり前すぎて面白くない

 と思っていました。

 さっきから遊軍として、うろうろしながら客に漢方薬の購入を勧めていた日本語ペラペラなおばさん先生がさっそく寄ってきて、私の先生と2,3言交わすと、

 「あなた、肝臓悪い。仕事忙しい?睡眠不足?」

 と聞いてきたので、

 「いや、単なる飲みすぎです」
 
 と正直に答えると、漢方薬のパンフレットを広げて、「肝臓はこの薬」と説明しはじめました。この店は、漢方医院なので、来た客には必ず漢方薬を勧めるようなのですが、それがけっこういいお値段でした。日本円にして1〜2万円するのです。痛みに耐えながら、「薬はいらない」と断ったのですが、なかなか引き下がってくれませんでした。「いえ、酒を飲まなければいいんですから」「でも、今飲まないと大変なことになる。今飲めば、次に来たときにはこんなに痛くない。」と押し問答になりました。

 そうこうしているうちに、ふくらはぎもマッサージされて、マッサージは終了しました。たっぷり30分はやってくれたと思います。マッサージとしてはかなり満足しました。なかなかいい勉強になりました。あれで、漢方薬を売りつけようとしなければもっとよかったのになあ。押し売り先生との押し問答に気を取られて、後半は痛みを十分に堪能できなかったのでした。

 私がマッサージを終えたときには、もう6時を過ぎていて、そのころになると空いていて待ち時間はないようでした。もし行く方がいらしたら、夕飯時が狙い目かもしれません。ツアー客は食事に行ってしまいますから。
 

士林夜一

 店を出ると、驚くほど足が軽くて、頭もすっきりしてきたので、張り切って台北名物の夜市に行くことにしました。





 MRTで士林(スーリン)駅のひとつ手前の劍潭(チェンタン)駅が最寄駅です。昼間、故宮に行く途中でも通りがかりましたが、ここら辺の台北の北側はわりと高級住宅街のようです。日本統治時代の台湾総督や蒋介石もここらに邸宅を構えていたらしいし、最近ではもう少し北側の天母というところが外国人居住地区のようで、東京で言えば白金みたいなもんなのでしょうか?

 駅を出て人の流れに身を任せて歩くと、すぐに写真のような商店街が現れました。道の両側の商店は衣料店が多く、道の真中に台を置いて、そこに転々と店員が立っていて、なぜか皆ヘッドホンマイク(?というのか、管制官やダンスしながら唄う人がよく使うやつ)をしていて、たぶん「安いよ、安いよ!ただ今6割引で大奉仕中!」とか言っているのでしょうか、集客に必死です。そうかと思えば、道の真中で敷物を広げてフリーマーケット状態の人もいるし、飲み物や簡単なスナックなどの屋台はあるわで、ほんとにお祭りの縁日のようですが(麻布十番祭みたいな)、これを毎晩、平日でも欠かさずやっているようなのです。

 台北では何箇所もこういう「夜市」が開かれていますが、士林が一番広いらしく、場所も行き易かったのでここにしてみました。
 通りはこんなかんじでしたが、路地を一歩入るとまた狭い通りに屋台のお店がたくさん並び、さらにその奥に潜入すると、食べ物の匂いがもわっとして、「巨大仮設屋台市場」のような空間に出ました。

 そこはいいかげんな屋根があり、広いらしいのですが、どのくらいの広さだかよくわからないくらいに、ごっちゃごちゃと食べ物の屋台がひしめいています。そのあまりの熱気に、「わあ、美味しそう」というよりは、「す、すげえ」とちょっとひいてしまいました。
 他にも食べ物の屋台に関してはありとあらゆるものがあって、ぼんやり眺めて歩いていたので、写真を撮るのも忘れるくらいでした。

 何回か見かけた看板。タピオカみたいなデザート屋さんらしい。

 歩き回っていたので、食欲よりも喉が渇いてきたので、デザートドリンクスタンドで、「タピオカ入りミルクティー」をなんとか指差しとメモに書いた文字でオーダーして、ゲームのアーケードの片隅の階段に腰をおろして飲んでいました。せっかく足裏マッサージをしてもらったのに、こんなに人ごみの中を歩いてしまったので、また足が痛くなってきました。
 それに、タピオカティーだけでなく、台北の屋台の飲み物のサイズは日本のマクドナルドのLサイズくらいのカップに入っているし、でかいタピオカがわらわら沢山入っているのをススっていたら、すっかりお腹がいっぱいになってしまいました。

 「うう、こんなに食い物がたくさんあるのに・・・・・」

 と、自分の胃袋の繊細さが悔しかったのですが、どうも昨日、今日とで、歩くのに夢中になっていると、ついつい空腹のタイミングを逃してしまうし、それにあれだけ豊富に屋台があると「どれを食べよう」と悩んでしまい、悩んでぐるぐるとまた歩いているうちに、あまりお腹が空かなくなってしまうのでした。「なにか美味しいものを食べなくては」と、追い詰められた気持ちになってしまうのです。
 これが長期滞在だったら、一日くらいたいしたもの食べなくても気になりませんが、なにしろ短期決戦ゆえに「限りある胃袋を大切にしよう」とじっくり考えすぎてだめみたいでした。

 あきらめて、またMRTに乗って、ホテルに向かいました。台北駅についたら、すこし空腹を感じたので、「そうだ、コンビニでなんか買ってみよう。きっと日本とはちょっと味付けが違うのだろう」と、セブンイレブンでおにぎりを物色しました。

   







 左の「鮪魚」はツナ・マヨネーズでした。マヨの味がやや違った。
 右の「培根玉米」っていうのはなんだろうと思ったら、とうもろこしでした。コーンのやはりマヨネーズあえ。台湾の人もマヨネーズ好きみたいです。

 ホテルでテレビを観ていたら、「ダーマ&グレッグ」をやってました。ダーマの声が吹き替えとはだいぶ違うことを初めて知りました。その後「アリー・マイラブ」になって、アリーの声は吹き替えとあまりイメージが変わらないな・・・とか思いながら、おにぎりをほおばる。なんだか外国にいるという気がしません(笑)


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