国税不服審判所


国税不服審判所は納税者の正当な権利を守ることを目的にして、税務署や国税局から独立した
機関として設けられています。全国に本部の他、支部も含めると20ヶ所あります。札幌、仙台
関東信越新潟及び長野支所、東京、東京横浜支所、金沢、名古屋、名古屋静岡支所、大阪、
大阪京都、及び神戸支所、広島、広島岡山支所、高松、福岡、熊本、沖縄にあります。
税務署がした更正、決定、差押えなどの処分に不服があるときには、処分の通知を受けた日以後
2ヶ月以内に税務署へ「異議申立て」を行います。税務署は、その処分について再度見直しをして
異議に対する決定をします。この税務署の異議決定になお不服があるときは、「異議決定」の通知
があった日以後1ヶ月以内に国税不服審判所へ「審査請求」を行うことができます。ただし、青色
申告者については税務署に対する「異議申立て」を省略して、直接国税不服審判所に「審査請求」
を行うことができます。国税不服審判所はその不服の点を中心に、3人以上の国税審判官の合議
により、独立した第三者的立場で「裁決」をして通知します。この国税不服審判所の「裁決」に
更に不服があるときには、「裁決」の通知のあった3ヶ月以内に、裁判所に対し「訴訟」の手続を
行うことになります。

東京国税不服審判所の組織編成は第一部から第四部と管理課からなり、第一部は法規審査部門で
第二部から第四部までの裁決についての最終的なチェックを行っています。第二部から第四部ま
では、それぞれがまた4つの部門に分かれており、実際に「審査請求」について裁決を行うとこ
ろです。管理課は審判所の給料、旅費、営繕管理等の庶務を行うところです。第二部から第四部
までの部門編成は、国税審判官が2名、副国税審判官が1名、そして国税審査官が2名になって
います。

国税不服審判所の案内等のパンフレットには、税務署、国税局と納税者から独立した第三的立場
に立っているとして、裁判官、大学教授、法曹及び国税関係者から構成されているとしています。
ところが、実際の人員構成はほとんどが税務署や国税局から出向してきた国税職員ばかりで、お
飾り程度に2〜3名の検事、裁判官、法務省出身者がいるだけにすぎません。所長(首席審判官)
はいつも検事出身者が来ていて,次席審判官は国税庁のキャリアで退職間際の人が来ます。第一部
(法規審査部門)に裁判官と法務省から出向で来ています。

部長審判官が4名いますが、第一部と第二部は国税庁のキャリアの指定席で、年齢は41〜42
歳です。第三部と第四部はたたき上げで退職間際の人です。このたたき上げの部長審判官は最後に
五大署(麹町、神田、日本橋、京橋、芝税務署)の税務署長となります。
各部の国税審判官は税務署の副署長や国税局の統括官等から出向で来ており、次は何処かの税務署
長で出て行きます。副審判官は税務署の総務課長や国税局の総括主査等から出向で来ており、次は
税務署の副署長等で出て行きます。そして、国税審査官は税務署の統括官、上席や国税局の実査官、
調査官から出向で来ています。

このように国税審判所の人的構成は、掲げている理念と異なり、税務署や国税局出身者の課税庁側
に片寄ってしまっています。税理士会では税理士を国税審判所に登用するように要望しています。
納税者にしてもせっかく「審査請求」を国税不服審判所に出しても、その裁決を下す人が税務署や
国税局出身者だとしたら、本当に第三者的立場で公平に判断されるのか疑問を抱くのは当然です。
少なくとも国税出身者を定員の半分に抑えて、後の半分は大学教授、裁判官、弁護士、法務省出身者
とそして税の専門家である税理士を加えるようにすべきであると思います。特に税理士は納税者の立
場から、とかく課税庁側に有利に働きやすい裁決を監視する意味で重要な役割を果たせるはずです。


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