税務職員の給与は、他の一般の国家公務員に比べて1割程度優遇されています。これは、
それだけ税務職の困難性と人材確保のためです。一般の国家公務員とは別の税務職俸給表
があります。横軸には最低の1級から、最高は11級まであり、役職とリンクしています。
各級には、最低所要年数があり、その年数を過ぎないと上位の級には昇進できなくなってい
ます。それと、税務職俸給表の縦軸には号俸といって、級にかかわらず、毎年、給料が1段階
上がります.
カニのように、俸給表を横に進んでいけば、どんどん級が上がり、役職も上がっていきま
すが、縦にどんどん下がっていくと、級は上がらず号俸だけが上がっていきます。号俸だけで
すと、あまり給料は上がらず、俸給表の一番下まで来ますと、号俸が上がる期間が1年以上に
なってしまいます。
採用試験別の採用期別に、普通科○○期、国税専門官○○期ごとに、級を上げ、役職を就け
るのかを管理しています。完全に年功序列給与、役職であり、抜擢人事などはありません。
国税専門官採用者の初任給は、税務職2級2号俸が支給されます。3年後には全員一律に3
級に昇給します。その後、専科研修が終わった翌年1月1日に、又全員一律に調査官に昇進
します。ここまでは、全員一律に昇進することが約束されていますが、その先は、全くバラバ
ラの昇進になります。それも、最初のうちは昇進する期間差は小さいのですが、次第に大きな
差となります。
3級の調査官に昇進した後は、この3級には最低4年の所要年数が必要ですが、今度は全員
一律ではなく、3段階で最大半年の差をつけ4級に発令します。4級は最低2年の所要年数
が必要ですが、つぎの5級には4段階で最大1年半の差をつけ発令します。5級も最低2年
の所要年数が必要で、次の6級へは、役職でいえば上席調査官クラスですが、これには6段階
で最大2年半の差をつけ発令します。6級以上の上席調査官よりも上の級への昇進について
はこのまま上席調査官で60歳の定年を迎える人もいますし、その後どんどん昇進して、大規模
署の署長まで出世する人もいて、発令時期は大きな差となります。
その後も、統括官、総務課長等の発令も、採用期別に今年は普通科○○期、国税専門官
○○期が一発目の発令とかが決まっています。最短で48歳で、国税庁発令の指定官職となり
副署長クラスになり出世頭が署長となります。
昇進の判断材料とされるのが、毎年3月に勤務評価がつけられます。税務署では、直属の
統括官がつけ、担当副署長そして署長が見直すことになります。昇進については、採用期別に
何人と枠が決められていますから、この枠に入るには、主務課、人事課にアピールできる度合
いにより違いがでてきます。現実は、大蔵省、国税庁等の上級官庁に出向中のものや、国税局
の総務課、主務課から昇進枠を取っていきますから、現場の税務署員まではなかなか回ってき
ません。
特別昇給や賞与の割増しといったものもあります。特別昇給というのは、号俸が特別に1つ上
るものです。号俸が1号俸上がれば、賞与もその分上がりますので、年収が少し多くなります。
これは殆ど、5年に1回程度の順番になっています。勤務成績等が良ければ早めに特別昇給の
順番が回ってきます。賞与の割増しとは、賞与の支給倍率を通常よりも高くすることです。
毎年、7月と1月が昇進の時期ですが、一番価値のあるのが上位の級への昇進ですが、それに
漏れたものへ、特別昇給や賞与の割増しでフォローする側面があります。
税務署や国税局では、税務調査を主体とする部門がほとんどですので、調査によりどれだけ
所得を増やしたか(増差所得)を記録しています。それも、悪質な仮装、隠蔽により所得を
ごまかしている(重加算税対象所得)のを発見するのを重点としています。この調査事績は部
門ごとに、又、前年事績と比較されますので、無言のプレッシャーとなります。
特に大きな脱税を摘発すれば、署長や国税局から表彰され、国語辞典等の賞品もでます。又
調査の研修会もあり、先程のような顕著な事績をあげた事案を、職員が集まったところで発
表するのです。会社の概況から、準備調査でねらいを何処に絞ったか、非違発見の端緒は何か、
そして調査の展開、社長の説得等によるまとめ方などを説明します。質疑応答をして、さらに
検討を加えます。
調査官にとって、何も非違を発見できず帰るのが一番辛いことになり、何とか是認を避けた
いと必死に重箱の隅をつついて来ます。増差所得だけでなく、調査件数、修正割合、増差消
費税額、増差源泉所得税額も事績管理していますので、それらも何かしらの非違発見をしな
ければなりません。
最近は消費税も法人税との同時調査になりましたから、税務署の法人課税部門では、法人税
のほか消費税、源泉所得税、印紙税について、会社に2〜3日臨場して、何かしら非違を発
見して、これらの決議を税目ごとに書き上げなければなりません。