税務職員の採用形態


税務職員となるためには、大きく分けて2つのルートがあります。まず、高卒程度の国家公務
員V種試験と大卒程度の国税専門官試験です。もちろん、キャリヤ組の国家公務員T種試験に
よる大蔵省と国税庁採用がありますが、これらの人は30歳前後に税務署長として来るだけです
(大蔵省の不祥事が続き、現在のところ30歳前後で署長にはなっていない)。

V種採用者は全国各地にある税務大学校で1年間、税法、会計、法律等の専門知識を身につ
けます。この研修(普通科と呼ばれる)は、公務員として採用されているので、当然に給料も支給
されます。

一方、国税専門官採用者は、全国の採用者を一堂に船橋(平成10年から和光へ移転)の税務
大学校で、3ヶ月間基礎研修を受けた後、全国の税務署に配属されます。その3年後に、又、
船橋(和光)で専科研修を6ヶ月間行います。この専科研修は各自の専攻税法(所得税、法人税、
資産税、徴収、間接税)について、担当教授がつき、ゼミナール方式で勉強します。その他にも、
専攻税法以外の税法、商法、民法、簿記、会計学、行政法等の講義を受けます。

普通科を卒業したものは、勤務年数が7年を経過すれば、本科研修の選抜試験の受験資格が
与えられます。この本科研修は新宿区若松町(現在は和光市に移転)にある税務大学校で1年間、
専攻税法、簿記、会計学商法、民法等の勉強を全国の選抜試験に合格した職員と一緒に勉強
します。

これらの研修は大学の授業と違い、さぼることはできません。給料をもらっているので、研修を受
けるのが仕事になるわけです。しかし、中には講義中居眠りしている人はいますが....。
研修の最後には、必ず試験があります。この成績が勤務評定となるため、各研修生は机にかじ
りつきます。試験の成績上位1割は特別昇給(給料が1号俸あがる)というニンジンもあります。
勉強ばかりではなく、体育祭、文化祭そして飲み会は毎日のようにあります。

国家公務員V種試験と国税専門官試験採用者の最終ポストは税務署長(同期で2〜3人は地
方の国税局長クラスになる人もいる)までです。この税務署長になるのも大変な競争を勝ち
抜いてこないとなれません。同じ大卒といっても、大蔵省や国税庁採用者とは全く昇進のス
ピードが違います。

東京国税局では、部長ポストが総務部、課税第一部、課税第二部、徴収部、調査第一部、
調査第二部、調査第三部、調査第四部、査察部と9ポストありますが、この中で国税専門官
と普通科に与えられているのは、調査三部長と調査四部長の2ポストにすぎません。それも
大蔵省組が30代後半、国税庁組が40代前半なのに対し、最終ポストとして56〜57歳
で就任します。課長ポストは、総務課長が大蔵省組で31〜32歳ですが、残りのポストは
ノンキャリアが占めていますが、署長で勇退する前の50代半ばです。

T種試験の合格者でも、大蔵省採用と国税庁採用ではこれまた、昇進のスピードが違います。
税務署長になるのが,大蔵省組で6年、国税庁組で9年です。最近の不祥事続きで批判を浴び、
税務署長となる年数は多少長くなるようですが。最終ポストも大蔵省組はもちろん大蔵事務
次官、国税庁組は国税庁長官にはなれなく、国税庁の徴収部長か地方の国税局長までです。
この国税局長も国税庁組の就けるのは、金沢、高松、熊本等の地方国税局に限られていて、
東京、大坂、名古屋等の国税局長は大蔵省組に限られています。

もっとも、大蔵省採用組は東大卒で公務員試験の上位者ばかりなのに対し、国税庁採用者には
殆ど東大卒はいなく地方の国立大卒が多くなっています。数年前、東大卒で国税庁採用の現職
者が、このような差別からくる給料の差額について裁判を起こしました。もちろん、負けましたが。

このように、どの試験で採用されたか、又は、どの官庁に採用されたかによって将来の出世が
どこまでできるかは採用された時から決まっています。下級の試験で採用されたものほど、ラ
イバルが大勢いて激烈な競争を勝ち抜かないと出世は望めません。上級の試験で採用された
ものほど、最初から約束されたコースをスイスイ出世していきます。

電車で例えていえば、高卒程度の普通科は鈍行、本科と大卒程度の国税専門官は快速、国
税庁採用は新幹線のこだま、大蔵省採用は新幹線のひかりのスピードの違いがあるだけで
はなく、最終目的地も、高卒程度の普通科は熱海、本科と大卒程度の国税専門官は静岡、
国税庁採用は大阪、大蔵省採用は終点の博多までです。


税務署に詳しくなる話

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