一 | 若紫に夜は溶けて | 夢に漂う曉の |
丘の小草の青ばみに | 春の光のかげろへば | |
乾に靈の響あり | 坤に和楽のとよみあり |
二 | 花散る床のまどろみや | 枕に通う明の鐘 |
醒めよと強く私語けば | 夢より出でて又夢の | |
歡楽の野に辿り入る | 祝へや一日記念祭 |
三 | 草より草に沈み行く | 片われ月の武藏野に |
み星の涙滴りて | 亂るる花の潤へば | |
筑波の峰に星冴えて | 玉笛ゆるうすすり泣く |
四 | ああ當年の若武者が | 駒の蹄を忍ばせて |
行方も知らず迷ひけむ | 丘の夕もありにしか | |
廣野を靉びく白銀の | 薄の影の淋しさに |
五 | 丘は變わらぬ丘の上に | 自然の姿うつろひて |
聳えてゆかし六つの城 | 散りゆく花の下蔭に | |
夕さり來れば若人が | 紅き血潮の滾るかな |
六 | 思出多き武香陵 | 六寮建てて二十七 |
春年毎にめぐれども | 三年の春に限りあり | |
盃あげてさらば君 | 共に壽げ花筵 |