鳴呼玉杯に

    (第十二回記念祭寮歌・明治三十五年)

    作詩 矢野勘治  作曲 楠 正一



     
 鳴呼玉杯に花受けて  緑酒に月の影やどし 
  治安の夢に耽りたる  栄華の巷低く見て
  向ケ丘にそそり立つ  五寮の健児意気高し
 
 芙蓉の雪の精をとり  吉野の花の華を奪ひ
  清き心の益良雄が   剣と筆をとり持ちて
  一たび起たば何事か  人生の偉業成らざらん
 
 濁れる海に漂える   わが國民を救はむと
  逆巻く浪をかきわけて 自治の大船勇ましく
  尚武の風を帆にはらみ 船出せしより十二年
 花咲き花はうつろひて 露おき露のひるがごと
  星霜移り人は去り   舵とる舟師は變るとも
  我のる船は常に    理想の自治に進むなり
 
 行途を拒むものあらば 斬りて捨つるに何かある
  破邪の剣を抜き持ちて 舳に立ちて我よべば
  魑魅魍魎も蔭ひそめ  金波銀波の海静か