一、結論
保証債務は、主たる債務のもととなる契約が解除された場合の原状回復義務にまで及ばない。
二、証明
保証債務は、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他主たる債務に従たるものにまで及ぶ(民法第四四七条)。
しかし、原状回復義務は、契約による債権債務関係が将来的に消滅するさいに発生するものである。すなわち、原状回復義務は、主たる債務に代わって生じる義務であり、主たる債務の従たるものではない。
したがって、保証債務は原状回復義務にまで及ばない。
三、解説
契約解除の場合の原状回復義務は、契約前の原状に回復する義務があるということであり(民法第五四五条)、契約が遡及的に無効になるわけではない。契約によって発生した債権債務関係は、解除によって将来的に消滅するのであり、遡及的に消滅するわけではない。
ところで、保証債務は、原則として、主たる債務の利息、違約金、損害賠償等にまで及ぶ。これらの、利息、違約金、損害賠償等は、主たる債務が履行されなかった場合に、主たる債務が履行されたのと同視できる状態を作り出すものといえる。
しかしながら、原状回復義務は、主たる債務のもととなる契約がなかったのと同じ状態を作出する義務であり、主たる債務が履行されたのと同視できる状態を作り出す義務ではない。
すなわち、利息や損害賠償と、原状回復義務とでは、性格が異なるのである。
具体的な例をあげて検討しよう。
AがBからある物を一〇〇万円で購入する契約をし、Aの一〇〇万円の代金支払債務について、CがBに対して保証したとしよう。代金支払がある前に、Bはこの物をAに引き渡したが、Aはこの物もろとも失踪し、かつ、Aには資産がまったくなかったため、Bは代金一〇〇万円を回収できなかったとする。そこで、Bはこの売買契約を解除し、保証人Cに対して原状回復義務の履行を要求した。そして、この物の時価は一〇〇〇万円だったとする。もしも、Cの保証債務が原状回復義務にまで及ぶとした場合、Cは一〇〇〇万円の物を手配してBに引き渡す義務が生じることになってしまう。このように、履行義務と、原状回復義務とでは、全く内容が異なる場合がありえる。そして、AとBとが結託すれば、このような事例を作り出すことは容易である。すなわち、Cが一〇〇〇万円を騙し取られるおそれがあるのである。
したがって、立法政策論的妥当性の問題としても、特約のない限り、原状回復義務にまで保証人の責任を及ばせるべきではないというのが、筆者の判断である。