3.寝台特急



「寝台特急」と聞いて、みなさんはどういうイメージを思い浮かべますか?

わたしは、小さい頃に聞いた"ブルートレイン"という言葉を思い浮かべます。

どこで聞いたかっていうと、"ドラえもん"でなんですけどね。

ある時、スネ夫くんに自慢されたのび太君が「ぼくもブルートレインに乗りたい〜」って、ドラえもんにねだるんです。

そうするとドラえもんが、家がそのまま電車になって、夜走り出す、という道具を出してくれます。

で、走り出すんです。家がゴトゴトと・・・。

夜が明ける頃に、ふたりは海について遊ぶんです。

・・・まあ、ざっとこんなかんじの内容でした。

今考えれば、家がレールの上を走るなんてあり得ない、っておもうんですが、

読んだときは、「すごいなあ、私も乗ってみたいなあ」って思ったものです。

その後、実際に「寝台特急」というものがあると知って、

「一度は乗りたい!」と思い始めました。

それから十数年がたち・・・ついこの間本物に乗ることができたのです。

そのときの様子を少し、書いてみたいと思います。

乗ったのは”北斗星”という札幌―東京間を走る寝台でした。

知っている方も多いと思います。有名ですからねえ。

私は札幌から、つまり帰りに乗ってきたのですが、もう、乗る前からわくわくドキドキでした。

時間になり、列車がホームに入ってきました。

そのときの気持ちったらないです!

「これに乗ってれば明日の朝には東京なんだ・・・」って思うと、もう、コーフンしましたね〜。

で、とりあえず自分の部屋に荷物を置いて、先頭車両を見に行きました。

たしかに、ブルーなんですよね。それでブルートレインというのかどうかは、よく知らないのですが・・・。

”昔の機関車”といった風情で、飛行機では味わえない感動がありました。

さて、車内はというと、車両の幅3/4くらいが部屋で、残りが廊下。

「個室」といって予約したのですが、まあ、「ドアはカーテンかなんかかなあ?」とかって思ってました。

そうしたら、立派な個室なんですよね、これが。

ドアなんて電子ロック式だし、じゅうたんは敷いてあるし、足元灯・ラジオ・有線までついてるし・・・。

「JRさん、あなどっていてごめんなさい」とか思いました・・・。

そうこうしているうちに、出発です。

札幌を出ると苫小牧まで南下、海が見えてきます。

ちょうど夕日の時刻でキレイでした。

買ってきた駅弁を食べつつ・・・これがまた、旅の醍醐味、でしょう。

そこからしばらく走ると、有珠山が見えてきます。まだ噴煙が上がっていました。

まだ避難所生活の方もいるでしょう、間近に見るととても威圧感がありました。

で、洞爺駅にも止まったんですよ、列車が。

もちろん、乗ってくる人はいなかったですけどね。

洞爺を過ぎる頃には、もう日は沈んでましたので、家の明かりがぽつぽつと見えるだけになってきました。

で、「そろそろ函館か・・・」というあたりで、夜景が見え始めました。

暗闇にきらきらとたくさんの明かりが点いていて、ほんっとうに、キレイでした。

言うなら人工の天の川・・・かな?

函館を過ぎれば、次の見所(?)は青函トンネルですね。

ここらへんが一番"神秘的"でした。

「闇を抜けて、電車の音だけがする」

本当に闇でした。何も見えない。

たまに、遠くにぽつん、と明かりが見えたり、見えなかったり。

このあたりで「この放送を持ちまして、終了です。明朝まで車内放送は流れません・・・」といった車内放送がありました。

部屋の外に出ても、誰もいないんです。(夜中だから当然ですが)

「もしかしたら、この電車には他の乗客は乗っていないんじゃないか?」って思ったくらい。

でも、それは「こわい」とか、そういう感覚ではなくて、ただただ、

「神秘的・・・」なのでした。

で、青函トンネルなんですが、突入するところは、寝てしまっていたので、気づくとトンネル内でした。

外とは明らかに違う音とか揺れなんですが、ここはちょっと怖かった。

海の下ですからね〜、途中で止まっちゃったらどうしよう・・・とか思って。

(止まったって、途中に駅があるんですけどね)

まあ、怖いと言いつつ寝てまして、気づいたら青森の手前でした。

青森到着は真夜中。

ホームに明かりが点いていました。

「乗ってくる人なんていないだろうに・・・」と思っていたら、いました。

正装(パーティーっぽい・帽子つき)をした中年女性ひとり、乗ってきました。

これがまた、ある意味神秘的でしたね。

こんな時間にこんな格好で乗ってくるなんて・・・と。

(その女性、隣の部屋だったらしいのですが、朝私が起きるともういませんでした・・・

きゃーっ・・・って、どこかで降りたのでしょうが、ちょっと、不思議)

後は栃木の黒磯あたりまで寝て、気が付くと夜は明けていました。

夜明け=人が動き出す

ということで、通勤客らしき人たちが、ホームにぽつりぽつりといました。

こっちはねまきなので、うかつにカーテンは開けられません。

しかし、こっちは旅の帰りで、しかも起き抜けで長距離列車に揺られているのに、

同じ時刻に会社に行く人たちが、スーツを着て電車を待っている・・・と。

これもなんていうか、隣にいながら違う状態で、

「向こうからはこっちは見えてなかったりして」とか思ったりして、不思議な気がしました。

またしばらくゴトゴト走っていくと、今度は通勤ラッシュの時間になります。

そのころ列車のまわりの景色はすっかり住宅街で、駅にはスーツの人がたーくさんいました。

こっちも降りる用意なんかをしているので、すっかり「神秘的」とかいう気分は吹っ飛んじゃうんですが。

さて、終点につくと、普通のホームに入りました。

降りると、普通電車を待っている人たちと、一晩列車に揺られてきた人たちが混在しているんです。

日常と非・日常がくっつく時、そんな感じがしました。

こうして「寝台列車の旅」は無事に終わりました。


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