「寝台特急」と聞いて、みなさんはどういうイメージを思い浮かべますか?
わたしは、小さい頃に聞いた"ブルートレイン"という言葉を思い浮かべます。
どこで聞いたかっていうと、"ドラえもん"でなんですけどね。
ある時、スネ夫くんに自慢されたのび太君が「ぼくもブルートレインに乗りたい〜」って、ドラえもんにねだるんです。
そうするとドラえもんが、家がそのまま電車になって、夜走り出す、という道具を出してくれます。
で、走り出すんです。家がゴトゴトと・・・。
夜が明ける頃に、ふたりは海について遊ぶんです。
・・・まあ、ざっとこんなかんじの内容でした。
今考えれば、家がレールの上を走るなんてあり得ない、っておもうんですが、
読んだときは、「すごいなあ、私も乗ってみたいなあ」って思ったものです。
その後、実際に「寝台特急」というものがあると知って、
「一度は乗りたい!」と思い始めました。
それから十数年がたち・・・ついこの間本物に乗ることができたのです。
そのときの様子を少し、書いてみたいと思います。
乗ったのは”北斗星”という札幌―東京間を走る寝台でした。
知っている方も多いと思います。有名ですからねえ。
私は札幌から、つまり帰りに乗ってきたのですが、もう、乗る前からわくわくドキドキでした。
時間になり、列車がホームに入ってきました。
そのときの気持ちったらないです!
「これに乗ってれば明日の朝には東京なんだ・・・」って思うと、もう、コーフンしましたね〜。
で、とりあえず自分の部屋に荷物を置いて、先頭車両を見に行きました。
たしかに、ブルーなんですよね。それでブルートレインというのかどうかは、よく知らないのですが・・・。
”昔の機関車”といった風情で、飛行機では味わえない感動がありました。
さて、車内はというと、車両の幅3/4くらいが部屋で、残りが廊下。
「個室」といって予約したのですが、まあ、「ドアはカーテンかなんかかなあ?」とかって思ってました。
そうしたら、立派な個室なんですよね、これが。
ドアなんて電子ロック式だし、じゅうたんは敷いてあるし、足元灯・ラジオ・有線までついてるし・・・。
「JRさん、あなどっていてごめんなさい」とか思いました・・・。
そうこうしているうちに、出発です。
札幌を出ると苫小牧まで南下、海が見えてきます。
ちょうど夕日の時刻でキレイでした。
買ってきた駅弁を食べつつ・・・これがまた、旅の醍醐味、でしょう。
そこからしばらく走ると、有珠山が見えてきます。まだ噴煙が上がっていました。
まだ避難所生活の方もいるでしょう、間近に見るととても威圧感がありました。
で、洞爺駅にも止まったんですよ、列車が。
もちろん、乗ってくる人はいなかったですけどね。
洞爺を過ぎる頃には、もう日は沈んでましたので、家の明かりがぽつぽつと見えるだけになってきました。
で、「そろそろ函館か・・・」というあたりで、夜景が見え始めました。
暗闇にきらきらとたくさんの明かりが点いていて、ほんっとうに、キレイでした。
言うなら人工の天の川・・・かな?
函館を過ぎれば、次の見所(?)は青函トンネルですね。
ここらへんが一番"神秘的"でした。
「闇を抜けて、電車の音だけがする」
本当に闇でした。何も見えない。
たまに、遠くにぽつん、と明かりが見えたり、見えなかったり。
このあたりで「この放送を持ちまして、終了です。明朝まで車内放送は流れません・・・」といった車内放送がありました。
部屋の外に出ても、誰もいないんです。(夜中だから当然ですが)
「もしかしたら、この電車には他の乗客は乗っていないんじゃないか?」って思ったくらい。
でも、それは「こわい」とか、そういう感覚ではなくて、ただただ、
「神秘的・・・」なのでした。
で、青函トンネルなんですが、突入するところは、寝てしまっていたので、気づくとトンネル内でした。
外とは明らかに違う音とか揺れなんですが、ここはちょっと怖かった。
海の下ですからね〜、途中で止まっちゃったらどうしよう・・・とか思って。
(止まったって、途中に駅があるんですけどね)
まあ、怖いと言いつつ寝てまして、気づいたら青森の手前でした。
青森到着は真夜中。
ホームに明かりが点いていました。
「乗ってくる人なんていないだろうに・・・」と思っていたら、いました。
正装(パーティーっぽい・帽子つき)をした中年女性ひとり、乗ってきました。
これがまた、ある意味神秘的でしたね。
こんな時間にこんな格好で乗ってくるなんて・・・と。
(その女性、隣の部屋だったらしいのですが、朝私が起きるともういませんでした・・・
きゃーっ・・・って、どこかで降りたのでしょうが、ちょっと、不思議)
後は栃木の黒磯あたりまで寝て、気が付くと夜は明けていました。
夜明け=人が動き出す
ということで、通勤客らしき人たちが、ホームにぽつりぽつりといました。
こっちはねまきなので、うかつにカーテンは開けられません。
しかし、こっちは旅の帰りで、しかも起き抜けで長距離列車に揺られているのに、
同じ時刻に会社に行く人たちが、スーツを着て電車を待っている・・・と。
これもなんていうか、隣にいながら違う状態で、
「向こうからはこっちは見えてなかったりして」とか思ったりして、不思議な気がしました。
またしばらくゴトゴト走っていくと、今度は通勤ラッシュの時間になります。
そのころ列車のまわりの景色はすっかり住宅街で、駅にはスーツの人がたーくさんいました。
こっちも降りる用意なんかをしているので、すっかり「神秘的」とかいう気分は吹っ飛んじゃうんですが。
さて、終点につくと、普通のホームに入りました。
降りると、普通電車を待っている人たちと、一晩列車に揺られてきた人たちが混在しているんです。
日常と非・日常がくっつく時、そんな感じがしました。
こうして「寝台列車の旅」は無事に終わりました。
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