MEXICOへの想い
MÉXICO y YO
国境を越えると人の臭いがした。
それは決していい臭いではない。だが、なぜかホッとする。臭いのないアメリカ・サンディエゴの街からメキシコ領に入ると、その臭いに懐かしさすら覚える。
ティファナのセントロ行きのバスに乗る。突然、空気が粘っこくなるのがわかる。カバーの破れたシート。そこかしこにしみついた体臭や汗の臭い。吹き込む風は、香辛料の香りや熟れたくだものの匂い、ゴミの臭いを運び込む。
人が濃くなった。バスからティファナの街路を眺めながら、そう思う。飾りたてた女が歩き、暇な男が路上に立ちつくす。(「12万円で世界を歩く」下川祐治著 朝日文庫)
País del Sol , 太陽の国メキシコ。まだたった数回しか行ったことのないこの国に、これほどまで夢中になるとは正直思いませんでした。以前大学の先輩に「初めていった外国って一番心に残るものだよ」といわれたことがあります。確かにわたしはその通りになってしまいました。でもそれだけで終わらしたくない魅力が、メキシコにはあります。だってこんな面倒くさがりな(笑)わたしがメキシコのHomePageなんて作ろうとしているのですから・・・
初めてメキシコに行ったのは、22歳大学4年の秋でした。大学のサークルで気が合う3人組がいて、その1人がその年1年間メキシコにスペイン語を学ぶため留学していました。もう1人のやつと「いっちょ会いに行ってやるか」という安易なきっかけで決まったのでした。その頃はなんとか就職も決まり、ただバイトしているだけであった2人は、会いに行きがてら1ヶ月くらいメキシコを旅行しようではないかということになったのです。結局サークルの仲間が1人増え、3人で行くことになりました。
しかしある事情ができ、わたしは先に1人で先に行くことに・・・。ロスを経由してメキシコシティに飛行機で向かったのですが、メキシコシティに着いたのがなんと深夜の午前2時。正規のタクシーもすでになく、白タクのみでした。待ち構えていた少年に荷物をふんだくられるようにタクシー乗り場まで連れて行かれ、「ったく、しょうがないな」とチップをあげると「少ないっもっとくれ」と言われてしまう。とってもショックを受けました。こんな小さい少年が必死にお金を稼ごうとしている。しかもこんな夜遅くまで・・・
なんとかホテルにたどり着いたのが午前3時、やっと寝れるよとベットにゴロンと横になろうとしました。そしたらなにやら下の道路で「バンッバンッ」と音がするではないですかっ。びっくりして窓から下を眺めると、はたしてそれは爆竹でした。なにやらデモ行進をやっていたらしい。さすがにこれにはびびってしまいました。なんせ下では何百人もの人たちが、旗を振り何かを叫びながら車道を闊歩しているのです。何も知らないわたしはもしかしたら来てはいけない危険な場所に来てしまったのではないかと思ってしまったのです。「やばいっ。明日日本に帰ろう」「でも飛行機のチケットって変更できるのかな・・」なんてかなりブルーになっていた。まぁ次の日に朝食を運んでくれたカマレロにこの場所をきいたらシティのど真ん中だったんですけど・・・(^^ゞ
いまでこそ笑い話ですが、記念すべきメキシコの第1日目はわたしには本当に強烈でした。いまでもその光景を思い出すのに苦労はしません。今ふと思うと、その日がメキシコという国が自分の中に根付いた最初だったように思います。
さすがにメキシコというような普通で言えばマイナーな国に3回もいってるとなると、普通の人は「メキシコの魅力って何?」と怪しい眼差しで見られるようになります。もちろんメキシコには、いろいろな見所があります。古代アステカやマヤの遺跡があります。中央高原にはグアナファトのような中世ヨーロッパを彷彿とさせるコロニアルな町があります。そして東にはカリブの蒼い海が広がっていて・・・。どれをとってもその理由にはなりうるものです。
だけどわたしはこう答えるようにしています。「人だ」と。たぶん1度メキシコに行ったことのある人は、うなずいてくれる人も少なくないと思います。日本人にはだんだんと忘れられつつある「人間臭さ」がメキシコ人にはまだ残っているように思うからなのです。メキシコで地図を広げていると、メキシコ人は必ずと言っていいほど声をかけてきます。「どこへ行きたいんだ?」と。見知らぬわたしのために一生懸命探してくれるのです。ただ、知らなくても知らないとは決して言わず教えてくれようとするのにはいつも困ってしまうんですけど・・・(行けども行けども見つからないことがよくあります。知らないなら知らないって言ってくれた方がまだ・・・)
また、日本人と比べかなりアバウトなところがあったりします(悪く言えばいい加減なのだ) 特に時間の感覚に関しては日本人とはかなりずれがあるように思います。メキシコ人の「もうすぐ」は、ほんとにあてになりません。それが30分なんだか1時間なんだか・・・(笑) また、この人たちはいつ働いているんだろうと不思議に思う人たちがいっぱい街中にいたりします。何かものを買おうとしてもおつりを持ってなかったり、おつりを平気で間違えたり(多いときもある!?)とかなりいいかげんだったりします。でもそのギャップが、実はとてもおもしろかったりするのです。せかせか毎日を生きている日本人が滑稽に思えてくるほど、メキシコ人はその日その日を楽しんでいるんです。(しかし将来設計がいまいちなのはラテンの血か!?)
結局のところ、わたしはメキシコ人の「人間臭さ」「人懐っこさ」に引かれているのだと思います。去年2回目に行ったときは、グアナファトでメキシコ人のファミリアの家にホームスティをしました。そこには元気な5歳と9歳のやんちゃな男の子たちがいて、とっても仲良くなったのです。そして、今年もまた彼らに会いにいってしまいました。「たまごっち」をおみやげに持っていった彼らの喜ぶ顔が今でも忘れられません。いまではほんとの弟のように思っているほどです。また来年も、ぜひ彼らの成長ぶりを見にグアナファトに行きたいと思っています。
たぶんこのHPを読んでくれている人は、メキシコに行ったことのある人か、もしくは興味があってこれから行こうとしている人だと思います。ぜひ観光だけでなく、メキシコ人と交流ができるような機会をより多く作ることをお勧めしたいのです。メキシコ人を知ることによって、そして日本や日本人と比較することによって、日本人に足りないものがもしかしたら見えてくるのかもしれないなと思っているからなのです。このHPは、わたしの拙いメキシコに対する情熱を形にしたものだと思っています。独断と偏見で作らせていただいたので、間違っていることも多々あるでしょう。みなさんからさまざまなご意見・ご批評を頂くことによって、より良いものを作ることができれば幸いです。
1998年10月26日
BAKU
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