揃えた足の先を45度に開いて立つ河合その子ちゃんの足がかわいいなぁ、と思える余裕(?)が出てきたのは、撮影が始まって間もなく。カメラマンとのやりとりから、憂いを帯びた彼女の表情が、実にただボーっとしてるだけのものだったり、妙な気取りがない、と気がついてからだ。けっこう気難しい女のコなんだろうな、と予想はしていたが、スタジオのドアを開けて「よろしくお願いします」と言った彼女がニコリともしなかった時は、正直言って”どうしよう”といつもの倍は不安になっていたのに。人間ってホント、話してみなきゃわからないのよね。
――普段はどんな生活をしてるの?
河合 今は仕事とプライベートの境がないの。現場に行ってこなすっていうだけじゃないから。全てが仕事だし、全てが普通の暮らし。
――典型的な1日の生活パターンは? 外に出る仕事がとりあえずない1日の。
河合 だけど何日までに何曲っていうのが決まってたら、だいたい朝、4時とか5時に寝る。やっぱり夜じゃなきゃできないでしょ、そういう宿題みたいなのって。で、お昼頃起きて朝ごはん。前の日からごはんは炊いてあって、で、おみそ汁もあるとそれの残りを食べたりとか。で、3時くらいに近くのお店に行って菓子パンみたいなの買ってきて食べたりしてゆっくりして。
――TV観たりとか?
河合 部屋の中に”テレビ”っていう形で置いてはあるんだけど、あまり画面はつくことがないの。友達とかお客さんが来た時に流しっぱなしにしてる。話に煮詰まった時にフッて見れるでしょ。音楽だとシャレすぎるからね。ひとりの時は、音楽きいたりしてるけど、
――あとはボーっと?
河合 多いと思う。回りの人に言わせるとセカセカ動いているっていうんだけど、自分では何も考えてないと思う。
――曲書かなきゃいけないって時は、ボーッとしてるようで頭の中で考えてるんじゃない。
河合 一生懸命考えてると普通の生活に支障をきたすの。ボーっとしながら実は考えてたんだっていうのは、あとで気づく。友達と話が途切れた時に”ちょっとごめん”っていきなりキーボードにむかったりして友達が驚いちゃったりすることはある。
――ひらめくんだ。
河合 そのほうが多いと思う。やるぞって思ってやる時もあるけど。やっぱり車の中で思いつくっていうのが多いかなぁ。
――ドライブしてて?
河合 ううん、買い物。煮つまると私、すごいの。浪費癖なの。
――いくらぐらい使っちゃうの?
河合 言えない(笑)。コム・デ・ギャルソンによく行くんだけど、いくら手をかえ品をかえといっても服ってそんなに欲しいもんばっかりじゃないし、買い尽くしちゃうと……。
――買い尽くす!
河合 自分が欲しいと思う物よ、金額のことじゃなくて。そうなると今度は何でもないスプーンとかそうゆうのを買い出して。
――それにあきると?
河合 夜中にお店もあいてないし、部屋の模様替えももうし尽くしちゃったしっていう風になると車で厚木のほうとか行くの。
――ひとりで? 厚木でどうするの?
河合 海へおりれる駐車場みたいなところへおりて、あ、カップルばっかりだなって思って引き返してくればそれでいいの。なんか走ってる感じが好きなの。ものを考えるのに風景が動いてるのって全然違う。メロディも浮かんでくるし。
――曲を書き始めたきっかけは何だったの?
河合 団体の最後のアルバムに卒業した人も1曲ずつ入れようってことになったんだけど、時間もないことだし、でき上がったものに文句言わないで歌えって言われて。私はそれじゃいやだからって書き出したのかな。最初の頃はサポートしてくれる形で後藤次利さんでアレンジとかもやってくれたから、曲の手直しとかもしてくれて。
――勉強になった。
河合 うん、コードの使い方とかもすごく勉強になったし、教えてもらったわけじゃないけど学べるものってありますよね。会話してるだけでわかる、みたいなこともあったし。
――でも最初はアイドル・タレントでしょ?いい感じで変わってこれたよね。
河合 途中から私は絶対こういう風じゃないんだってずっと思ってて。歌う前にお話しなきゃいけないとか全然できなくて、ドラマとかも向いてない気がしたし。で歌1本でやっていきたいってスタッフの人に言ったら、今の状況じゃ無理だからいろいろ相談してみようっていわれて。で、その半年後ぐらいに全部活動をストップして半年ぐらいお休みっていう形をとったの。
――不安はなかった?
河合 1回画面から消えることって必要だと思ってたから。最初は反対されたし、アイドルは曲なんか作らなくていいんだっていう感じだったから。会社と結構ぶつかって、でも会社がそれを認めてくれたっていう状況があったから。だからやれたんだと思うし。
――自分のやりたいことを押し通そうとするタイプとは思えなかったよね。
河合 最初はそういうの全然なかったと思う。でもやっぱり遊んでやってるんじゃないんだって、一流といわれている人たちの中でやっているにはあまりにはずかしすぎるってことに完全にひとり立ちして1年くらい経ってから気づいて。そこから考え出したのかな。
――でも、急にパタリと姿を見なくなった時は、どうしたんだろうって。
河合 体の具合でも悪いのかなって(笑)。でもあのお休みってね、カッコ良くいえば充電なんだけど、あれがあったからすごく普通の人でいられたって気がする。あそこでお休みしないで仕事してたらもっと芸能人、芸能人ってなってると思うし。なんかね、歩き直し、手綱の締め直しみたいなのができてよかったと思う。それまではTVに出ても話はできないし、ラジオに出ても話すことはなかったし。
――居心地が悪かったんだ。
河合 そう。あと仕事してて淋しかったの。私は何だろうって。自分っていう人間がなかった。お人形さんと同じ。それでもそんなに人形じゃなかったほうなんだけど(笑)。インタビューも昔はきかれたことを、言わなくちゃいけないプロモーションのことしか頭にないんだけど、自分でちゃんと生み出していって歩んでる道じゃないから何が何だかわからなかったわけ。今は自分でやってることは自分でジャッジメントとってやってるから、説明とかも簡単にできるし自信もある。人間として話ができる感じがする(笑)。
――しっかりしてるね。
河合 えーっ、そう? 年齢からいったら普通。やっと友達とかの年齢に追いついたって感じ。それまでは生きてる世界があまりにも違いすぎるから。何もやらなくても大人の人がハイ、ハイってやってくれたから、今は何でも自分で掘り起こして進んでいかないと、回りのみんなも動けないし。そういう意味ではすごい責任もあるけど、すごいおもしろい。
――自分のこと、どんな性格だと思う?
河合 私? ひょうきんだと思う。あとね、気取ったりとかできないと思う。
――でもハタからはそうは見られないでしょ。
河合 全然。すごい暗いヤツだと思われてる。
――デビューの時と変わったって思う?
河合 あの頃は自分じゃないっていったらおかしいけど、自分はこうでなくちゃいけないんだ、みたいな風だったから全然違う。中身は変わってないけど。
――一番変わったって思うのは?
河合 人と話す会話の数。だって私、今でもそうなんだけど、すごい人見知りするし、シャイだからー(笑)。っていうかテレ屋だからダメなのね。女の人だとすんなり入れるんだけど、男の人で最初かみ合わないと絶対にかみ合わないし、楽しい会話にならない。でも今は全然そういうのなくて。飾る物が何もないからもういいや、みたいな感じ。わかる人がわかってくれればそれでいいって思ってるから。人からどうやって見られてるかって気にしない。最初は気にしないようにしてたんだけど、慣れっこになってホントに何も気にしなくなっちゃったの。
――確かに自然な感じだけどね。私は昔のその子ちゃんのイメージがあったから、ヤダなー、こわいなーって思ってたんだけど。
河合 アハハ。こわいなーっていうのはあるね。確かにね。これで話しなかったら性格悪いヤツってしか言われないのはすごくよくわかる。そう、私、すっごいつっけんどんなの。いちいち何かニコニコしてられないっていうかね。そうゆうのがある。
――性格、男っぽいんでしょ。
河合 そう、よく言われる。
――そうは見えないのにねぇ。
河合 そうかなー。ブリブリ見える?(笑)ツンっていうか、プライド高い女っていう風に思われるんだけど、バンドに人と話してるとどんどんこきおろされちゃうの。そういう存在になっちゃうの。すごいいじわるされやすいの。何でだろうねー。ひどいんだから。この間ライブやった時にも、私が親知らずで顔がはれて、鎮痛剤ガンガンのんでやってたのに――そうしないと追っつかないから――”お前、綿かんで歌ってんじゃねぇ”とか。ネコがじゃれあってるようなもんなんだけど。
――性格男っぽいと女のコの友達に頼られたりするんでしょ。
河合 うん、女のコの友達すっごく多い。全然友達がいないように思われるけど(笑)
――そう?(苦笑)
河合 ホント、そうなの。でも、ハタから見て、私みたいなタイプが出てきたら、何だコイツって思うと思う。外見だけでも、なにコイツ、ツンケンしてバカじゃないのって。それがそのままきこえてくるような気がする。
――お友達はどんな人なの?
河合 昔からの友達とか作詞家の女のコとかスタイリストのお姉ちゃんとか。で、ごはん食べようよって言って女のコ5、6人でスタイリストのお姉ちゃんちに集まってごはん食べるとか。何を話すワケでもなくのほほんとして食べるんだけど。
――お酒のんだりはしないの?
河合 ほとんどダメ。でも最近”つき合い”とかで訓練させられて、カカオフィズとかだったら2杯くらいまで大丈夫。顔には出ないんだけど、首がまっ赤になるのね。それってみっともないでしょ。女のコだったらホッペとかポッとなったらかわいいのに。私ったら首がまっ赤。やんなっちゃう。
――男のコの友達も多そうよね。
河合 多いっていえば多い。みんな彼女がいるの。で3人で遊んじゃったりとかするんだけど、なーんで私がここにいて3人で遊ばなくちゃいけないのかなーって思ったりする。女のコっていう風に、見てないのよねー。
――不満だったりする?
河合 でも、男のコの心理とかいろいろわかっておもしろいと思う。
――それを自分の恋愛にいかしたりして、
河合 それがねー、いかせないのよね、なかなか(笑)。だって頭の中ではわかっているけど、心はどうしてもっていうんでしょ、恋愛って。そこんところがね、うまくいけばいいと思うんだけど、頭でっかちになっちゃうの。
――恋愛は、したい?
河合 私ずーっと恋愛してたい。
――結婚は?
河合 そんなに重視してない。もらってくれる人がいたら、どこへでもよ(笑)。
――そうなの。
河合 私、ひとりっ子だから養子なの。お墓の面倒見てもらわなきゃいけないから。それでなくちゃいけないって親が言ってるわけじゃないけど、そうしてあげられたらベストだと思うし。でも、好きな人ができたらわかんないよ。こんなこと言っておきながらとんでもないヤツと結婚するかもしれないし。わかんないけど、一応相手がいないうちはそうゆう風に思っててあげようかなって思う。
――結婚願望は、ないの?
河合 30歳までにはなんとかしたい。昔から、20歳ぐらいの時から30歳までにはって。
――30歳なんてすぐよ。
河合 みんなそう言う。25歳過ぎたら怒濤の如くって。
――20歳の時は25歳で結婚してないと思わないし、25歳の時は30歳でお嫁にいけないって思わなかったのにって、私、思ってるわよ。
河合 あー、うん。わかる気がする。私も20歳ぐらいの時に24歳になったら婚約の1発ぐらいあるんだろうなって思ってた。1発じゃない、1回ぐらい(笑)。恋人同志手をつないで、とかいいなーって思ったけど全然そうゆうのないもん。今になってわかるんだよね。だから、30歳の時にって今、思ってるってことは、30歳になった時に、そう思ったのよねって思うのかもしれない。
―― 30歳でひとりっていうのもラクよ。
河合 そうだよね。
―― ただ社会生活してくうえではね。
河合 社会人としてのひとつの責任みたいなものがあるからね。とくに男の人の場合は。
―― 結婚から遠ざかる話題になっちゃったけど、理想のタイプとか、ある?
河合 理想? ないもん(笑)、ホントに。好きになった人がそうじゃない? 好きな人が今までの中で一番カッコいいって思うじゃない。でも、もてる人がいいな。人間的に魅力のある人。顔なんてあってないようなもんだからヘンな顔の人でいいし、私、ジャガイモの顔が好きだなー。う〜ん、あと思いっきり年上がいいな。まだ若いからかなぁ。
―― でもそうなると不倫に走りそうじゃない。
河合 だから離婚してる人で独身の人を狙うのよ(笑)。
谷マネージャー 離婚の仕方も問題だろー。
河合 そうね、事情にもよるけど。でもずっと40まで独身っていうのもいろいろ問題ありそうだし…。やっぱり離婚した人のほうがいいと思う(笑)。言いたいこと言ってるかなぁ。
―― そんなもんよ。
河合 同じだよね。
―― でも、ひとりでいるのは好きなんでしょ。
河合 好き。結構好きだと思う。でも完璧にひとりじゃないけど。私、犬とべったりだから。マルチーズのオスでトラっていうんだけど、一種子供みたいなところあるでしょ。同居人みたい。面倒みてるっていうか。
―― でも犬は人間じゃないからね。
河合 そうなんだよね。文句も言うし、成長はするし。なんかダンナはいらないけど子供だけは欲しいって気がするなー(しみじみ)。五体満足ならどっちでもいいから。
―― そんなことを言う人じゃないと思ってた。
河合 ホントにしゃべんなかったからね。
―― 『涙の茉莉花LOVE』のイメージがね。
河合 情けない(笑)。
―― 将来の夢ってある?
河合 そんな大きなこと考えたことない! このまんま年をとれたらいいと思う。それ以外は別に。欲しいものって特別ないし。あ、そうだ、例え結婚できたとしても(笑)、ずっと音楽に携っていけるようなポジションにいれたらいいと思う。
―― 楽しみにしてるね。
河合 結婚してなかったら老人ホームで会いましょう(笑)。
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(「TYO」1989年12月号)
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