吉田うどん

 私が育った善通寺市の上吉田から南を見ると大麻山(おおさやま)が富士山のように見える。富士吉田市の上吉田からも富士山がそんなように見える(当たり前か、当然スケールは違います)。富士吉田ってどこにあるかお分かりいただけたろうか、若者には富士急ハイランドがある町といった方が分かり易いかもしれない。
 山梨県は麺食文化が盛んな土地だが中でも富士吉田市は全国的にはあまり知られてないが山梨県では有名なうどんの町である。富士の伏流水と富士信仰、米が貴重な山の多い地形、うどんが発達しないはずがない。
 事前の調査で人口5万6千人、うどん店36軒(タウンページによる)中でも白須と桜井が有名との情報を得ていた。私は麺聖、ありきたりの店、観光客相手の店にだけ行っては名がすたる、麺食いにとっては休憩時間の夜、たまたま見つけた居酒屋「葉月」に情報収集に出かけた。
「香川から吉田にうどんを食べに来た」
こういうとかなりあきれられ、興味を持たれた。そこでたまたま居合わせていろいろ教えてくれた渡辺さんが、話のながれで親切にも
「明日車で案内しよう」
となり以下の観察記となる。

 

三一 桜井 羽田 白須 美也川
つけ(皿)うどん かけ かけ かけ 湯もり
店主「四国がうまいが自分は負けない」 黙って座ると写真のうどんがでてきた 暖簾も看板もない 流れ作業でキャベツを切る 座敷に座りいただく

 まず、吉田のうどん屋には暖簾も看板もない店が多い。別に看板がないことに驚いたわけではないが香川においてはこういう店は常に製麺所だが、吉田ではちゃんとした食堂で看板や暖簾がない店があるのである、聞くところによると個人には玉売りはしていないらしい。
 次に店の造りであるが、テーブルにイスという店は少ない、もちろん外のブロックに腰掛けて食べるのでもそこらにしゃがむのでもない、玄関で靴を脱いで畳に座るのだ。中には仏壇やテレビがある本当の民家の座敷を店にしているところもある。店と言うよりお呼ばれして友人の家の居間でうどんをいただくというスタイルである。
 うどんの食べ方は、水にさらした冷たい麺をそのまま皿に取って食べる皿うどん(つけ)、自分で醤油で味付けする湯もりうどんがある店もあるが、大部分は茹でたキャベツが具としてのったうどんが多い。ある店では入って「1人?」と聞かれたので「はい」と答えと、キャベツうどんが出てきた。どうもそれしかメニューがないらしい。
 味であるが、あまり他に例を見ない独特の麺である。一言で言えば堅いと思った、いわゆる粘弾性じゃなく本当に堅い麺だ、讃岐うどんの方が柔らかくてしなやかさがある。そして当然だがしばらくおいた麺より水でさらしたばかりの麺の方がおいしい。
 ほかにも有名な店、行きたい店があったが休みだった、残念。最後ですが、渡辺さん、葉月のママさん、三一のご主人にお礼を言いたいと思います。ありがとうございました。機会があればまた行きたい、そう思ったうどんの町であった。

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