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人口爆発に関するアートプロジェクト企画案

「他の生物から見た人類の危機」
〜角孝政ワールドと「なりきり」ワークショップ〜

(仮称)

〜提案者〜
route6(福岡、日本)
代表 宮本初音

作成日 2002年11月


●企画趣旨

近年の世界規模の大幅な人口爆発は、食糧、医療等の問題をはじめ、さまざまな側面での危機を招いており、その深刻さと複雑さは増大している。
しかしいっぽう、日本では出生率は下がりつづけ、少子高齢化が極めてまれなスピードで進行している。(日本以外のヨーロッパ諸国でも同様の傾向がみられる)
地球全体で見たときの人類のこのアンバランスはなぜ生じているのか。
種としての人類は何か不備があると言えるのだろうか?
地球上の他の種族、未来の種族、そして地球外生物から見ると、現在の人類の置かれた状況はどう見えるのだろうか。

人類の現在の状況を他生物、他の時代が分析したらどうなるかという仮定。
アート作品を介して想像力を働かせることで、現状を変化させる手がかりが見えて来ないだろうか?



●企画内容

絶滅した生物と無機的な日用品を組み合わせ新たな生物を作ることを得意とする造形アーティスト「角孝政」(すみたかまさ・福岡在住)をキーアーティストとし、角作品をベースに観客がワークショップ的に参加するプレゼンテーションをおこなう。

角作品展示と「なりきりワークショップ」案

角孝政作品を以下の2パターンに分類して展示。
 A:パラレルワールド(仮称)〜現実の地球に過去に生息、あるいは現在も生息しているが通常の人間社会ではふれにくい極小、深海、絶滅寸前の生物たち
 B:イマジネーションワールド(空想世界)(仮称)〜想像上の生物たち

観客はいずれかの部屋を選択して観覧、さらにそのなかから一つの生物にみずからを置き換える。
その「なりきった状態(変身)」として、人類に関する展示室を観覧し、人類の現状への「感想」「批評」「提案」等をおこなう。


●展示会場の構成

(1)エントランス

2パターンを代表する作品を展示、観客を誘導する
※ガイド役(着ぐるみなどを着用)を置くか、映像等での説明
(例)
 A:ディプロカウルス

ディプロカウルス, 1994
3000 x 1400 x 400
FRP, 人工芝, 義眼
※古代生物

 B:サイロマン


サイロマン, 1994
2400 x 700 x 700 (each)
FRP, 植物, 蛇口
(2)各ワールド展示室
2パターンに分類された作品をそれぞれ5〜10種程度展示。
それぞれの生物に対する生態等も解説。
※作品によっては再制作、再構成が必要。なおミニチュアが作成されているものもある。


--A room--


クマムシ, 2001
体長4200mm(触毛を含めると5000mm)
発泡スチロールにラテックスゴムを塗布
(本物のクマムシの1万倍サイズ)
※超乾燥、超低温、超高圧、真空等に耐える不思議な微生物



コモリガエル・ピパ, 2001?
length 20cm ポリウレタン
※背中で卵を孵すカエル



フウセンウナギ, 2002
H 60 x D 60 x W 30 cm
FRP
※深海の生物



コウモリダコ, 2002
length 50cm
FRP
※深海の生物



リュウグウノツカイ, 2002
length 100cm
FRP
※深海の生物



ディプロカウルス, 1994
3000 x 1400 x 400
FRP, 人工芝, 義眼
※古代生物



ウミサソリ, 2002
(テーブルとホテル内装)
FRP (テーブルは他に照明器具、鉄)
※絶滅した古代生物


--B room--


爆撃兎, 1999
H350 x W1900 x D1000
FRP, 化学繊維, 義眼



被爆兎(大), 1999
H190 x W190 x D160 (each)
ぬいぐるみ、ニンジン型爆弾模型



BISCAT, 1994
31 x 105 x 14 cm, 120pieces
鍵、オレオビスケット、ポリウレタン樹脂、アクリル




廃魚
W2700, H1200, weight approx. 60kg
金属、プラスティック、照明器具等のゴミに塗装



カイワレワニ, 1993
W1200
アクリル, FRP, カイワレ
※背中でカイワレを育成する



SAIKUROPUU, 1996
H160
ウレタン、ビン、ラムネ



サイロマン, 1994
2400 x 700 x 700 (each)
FRP, 植物, 蛇口



シバ人間, 1993
H 2500
人工芝、ウレタン、義眼
※実際に人が着て動き回ることができる



大学教授になりたかったシーラカンス, 1999
W560 x H350 x D300
FRP, 本



SHIRAMI, 1995
250 x 180 x 60.5 cm
FRP, アクリル, 点滴(42 本), ビーカー, 生理食塩水, ホルマリン, キノコ各種, 手動式除虫ポンプ
左)巨大シラミ模型とホルマリン漬けにされたキノコによるインスタレーション
右)携帯用シラミボックス(大)…木箱、ウレタン、点滴、ホルマリン、キノコ、ライト他、42 x 49 x 6.5 cm


TONERIKO, 1998
ポリウレタン、台座に化石


(3)各ワールドごとの「なりきりルーム」
自分が選択した生物のコスチュームあるいはお面、なりきり用アイテムなどを身につける。
※作者が得意な「着ぐるみ」を作成すれば「変身」はさらに面白くなるだろうが、費用等の面で難しければ、紙製の小さなお面などが適するであろう。
  (後者の場合、参加者が持ち帰ることができるようにする)


「着ぐるみ」例
at the workshop program "Art Picnic '95", 1995
paper full face mask


(4)人類の部屋

人口爆発や人類の歴史についてのデータとともに、人体模型と赤ちゃんの人形(いずれも角孝政作品)を展示。
参加者は「なりきった(変身)」状態でこれを観察。
※出品作品は再構成した状態で公開。


NO MORE HIROSHIMA (MAN BOMB DOME STEALTH), 1997
H 30 cm (human model)
painting on ready-made model
※左の写真は作品の一部、人体模型部分を拡大したもの。
 内臓と骨格はプラモデル部品のように作成されている。



SCHOOL ZONE, 1996
子供のミニチュア(一部)
H 12 cm
painting on ready-made model, wooden toy desks
※発表時は学校教育への批判をこめて作成された



MORGUE PARTY, 1996
H130 W200 D60
キューピー、博物館写真、木箱



(5)提案作成ルーム

それぞれの生き物として、人類の現状へのメッセージを残す(希望者)。
文章でも絵でも立体造形物等でも残せるように、道具を揃える。
※ガイド役のスタッフが若干名必要


(6)提案ルーム

提案をプレゼンテーションする部屋。
※(4)〜(6)は同一室でも構わない。
(7)角孝政プロフィール等
※最初の部屋か最後の部屋を出たところに掲示


●会場構成チャート●

(1)入口
--選択--

↓  ↓

(2)展示室
A  B

↓  ↓

(3)なりきり部屋
※(2)の一部でも可

A  B

↓  ↓

--合流--

(4)人類部屋



(5)提案作成部屋



(6)提案公開部屋
※(4)〜(6)は同室でも可




(7)出口[作家紹介等]
※コスチューム等返却。持ち帰りができるものはそのまま退場可


●企画の特徴

◎観覧者が「なりきり(変身)」することによって、人類の問題を多角的に考えるきっかけとする。

◎博物館的あるいは余りにも啓蒙的になりすぎにないよう、アートを介した柔軟な発想のてがかりとすることを重視する。

◎参加者の表現形態の発表形式は、予算および会場の制約の中でできうるかぎりの手法を使用。
  筆記具によるメッセージ記入、イラストやドローイングの作成、簡単な工作作業(ペーパークラフトや木工など)
  衣類や食物を利用した提案、インターネット上の会議室等の作成(同類生物を選んだ観覧者同士のディスカッションなど)、
  コミック作成、音楽作成、小説作成など。

◎会期終了後にも継続し、会場外での拡がりを入れた小冊子やインターネットホームページ等を作成することも可能。


●角 孝政プロフィール

角 孝政[すみ たかまさ] アーティスト


制作中の作家、2000年の個展「パラノイド」会場
※「パラノイド」展では過去の作品をまとめて展示した。

 1968年生まれ。福岡在住。主にFRPによる造形物を制作。「アートレック」代表。
 動物と植物、あるいは動物と幾何学的な形態を合成した「中間的」な架空の生物や、微小生物を巨大化した作品などで知られる。
 個展等での作品発表のほか、2002年春から夏にかけ「マリンワールド海の中道」で深海魚模型を展示するなど多彩に活躍している。

 共著に「日本怪奇幻想紀行」第四巻(同朋舎、発売角川書店)がある。

 ◎略歴

1968 年 福岡県に生まれる。
1987年 佐賀大学教育学部特別教科(美術・工芸)に入学。
1992年 佐賀大学教育学部専攻科卒業。
1991 年
        個展『飢人の休日』、佐賀県立美術館研修室
1993年
        個展『不思議の国の来訪者』福岡市美術館ギャラリー
        『九州コンテンポラリーアートの冒険』イムズ芸術祭、福岡市天神 ※「カイワレワニ」出品
1994年
        個展『BISCAT 』MOMA コンテンポラリー、福岡市
        『ミュージアム・シテイ・天神 '94』 、福岡市
        『博多少年アート』福岡市中洲「シバ人間」パフォーマンス
1995年
        個展『SHIRAMI 』MOMA コンテンポラリー
        ワ ークショップ『アートピクニック '95 』 福岡市
1996年
        個展『SCHOOL ZONE 』MOMAコンテンポラリー
1997年
        作品「きんぎょ」、たなかメンタルクリニック(待合い室ディスプレイ)、福岡市博多区
        グ ループ展『アート屋台プロトタイプ』ギャルリー萬、福岡市 ※「MAN BOMB DOME STEALTH 」出品
1998年
        インターネットホームページ「不思議美術館」制作
        『昆虫感覚館』ギャラリーそわか、京都市 ※「SHIRAMI 」出品
1999年
        『イムズ芸術祭 九州コンテンポラリーの大冒険』IMSビル、福岡市天神
2000年
        個展『PARANOID』MOMAコンテンポラリー
2001年
        個展『くまむし』MOMAコンテンポラリー
2002年
        『ミュージアム・シティ・プロジェクト2002』ぎんなんアートハウス、アートホテル、福岡市博多区 ※ウミサソリ作品
2003年(予定)
        『福岡市・北九州市連携事業 第2回芸術・文化交流展「福・北 美術往来」』北九州市立美術館、福岡市美術館
◎アーティストのホームページ 「不思議博物館」(日本語のみ)
 http://www.asahi-net.or.jp/~BU9T-SM/


●提案者プロフィール

「route6」
 日本、福岡市在住の現代アート関係者を中心とした有志の女性グループ(一部メンバーは現在福岡市以外に在住)。
 1997年頃より自由に集まってアートのミーティングをおこなっている。
 構成メンバーは20代〜40代の8名。
 ギャラリーディレクター、フリーランスのアートコーディネーター、エディター、公共施設プログラムコーディネーター等。
 代表 宮本初音(ミュージアム・シティ・プロジェクト事務局長)。

○連絡先 c/o ミュージアム・シティ・プロジェクト事務局
 〒812-0029 福岡市博多区古門戸町5-18ぎんなんビル403
 電話・ファクス +81-92-283-6205、e-mail[RY4H-MYMT@asahi-net.or.jp]



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