熱帯性スイレン(King of Blues)

2003年6月25日
(温帯性スイレンの方を先に植えましたが、熱帯性スイレンの方が先に咲いたので、こちらを先にアップします)

前口上

2,3年前、ある植物園の温室で、青紫色のスイレンに出会ってから、その色が忘れられなくなりました。一度、見ただけですが、花心の明るい黄色、パステル光沢のある青紫色の花弁は記憶に残り、去年、インターネットで調べた時にも、その残像が名前を教えてくれました。
私の見たのは「King of Blues」という熱帯性のスイレンだったようです。

もともと、スイレンなどの多心皮類には興味をそそられるものがありました。春のコブシ、モクレンなども好きな花です。
この仲間は、花をつける植物としてはもっとも古い仲間で、中生代の白亜紀初期に誕生したものたちです。恐竜たちの歩く水辺にはスイレンが咲いていたこともあったでしょう。

この仲間の植物は、葉に由来する花弁、雄しべ、雌しべが、起源した葉のついていた位置をいまだに保っているため、花や蕊は多数が螺旋状につき、「多心皮類」と呼ばれています。
花を付ける被子植物には双子葉植物と単子葉植物がありますが、スイレンなどの初期の双子葉植物である多心皮類は単子葉植物が登場するより以前に出現しています。
(最近の遺伝子分析では、スイレンの祖先と極近い植物から単子葉植物は誕生したようです)
また、スイレンは被子植物の特徴である「導管」を始めて持った植物ではないかと言われています。

まあ、オヤジウンチクはこれくらいにして、結論は「King of Blues」を栽培してみようと今春、決心したわけです。
熱帯性スイレンの苗は6月以降に販売とのことでした。(5月以前だと輸送中の寒さで状態が悪くなりやすいとのことです)
それまで、時間がありますので、鉢の注文をしたり、いろいろ下準備に取りかかりました。
というのも、「熱帯性スイレンを室内で咲かせてみたい」という望みがあったためです。
スイレンが大量の光を必要とする、というのは分かっていましたが、「冬、日本海側の悪天候時にも花を見ていたい」というわがままです。
太陽光並の照度といえば、照明はメタルハライドランプが良いでしょう。
水の過熱も考えて、岡村電産のスーパークール150wを準備しました。
睡蓮鉢が届いたので、予備実験として、同じく開花にはたくさんの光を必要とするホテイアオイを入れてみましたが、1ヶ月ほどで入れた二株とも開花しました。

これに気をよくし、「King of Blues」の売り出しを待ちました。
注文先は「宮川 花園さん」です。
http://www.h3.dion.ne.jp/~lotuses/index.html
ここは、ハス、スイレンを専門になさっており、生産・出荷の両方をこなされ、たくさんの品種を揃えられています。
また、栽培法もHPに懇切丁寧に説明されてあり、掲示板で質問も受け付けていらっしゃいます。

6月の販売日、人気品種は、インターネットでの注文がわずか半日で終わってしまうものもありました。
「King of Blues」もそうでしたが、幸いに一回目の販売で入手することが出来ました。

植え付け

6月9日、「King of Blues」二株到着。乾燥しないように、すぐ、用意してあったバケツに入れ、夜に植え付けをしました。
宮川花園さんの説明にしたがい、用意してあった「赤玉土」と「荒木田土」(田んぼの土のようなもの)を取り出し、まず、「荒木田土」の土コネです。
「荒木田土」は一部固まっていますので、指で砕くのに苦労しました。次回からは、袋のまま、木槌などでたたいた方が良かろうと思った次第。
砕いた後は水を入れて、コネコネ。
スイレンの苗はまったく通気のない粘土質で覆っても大丈夫で、土の肥料を水中に逃さないためにもよく捏ねるのが良いそうです。
底が膨らんだ大きめのドンブリ鉢の下半分に、この練った荒木田土と肥料を入れた後、苗をポットからだし、上からまた荒木田土でコーティングしてドンブリ鉢に植え付け。
成長点を埋めないように気を付けながら、荒木田土の溶け出しを予防するため、赤玉土をドンブリ鉢の上に入れます。
(後で思ったのですが、赤玉土も多少溶けるので、水草水槽用のソイルを使った方が良かったかも知れません)

こうして、植え付けた株を一つは屋外に、もう一株は準備していた室内の睡蓮鉢に入れました。

開花まで

当地は、風がよく吹きます。三階の風下になる二階の屋上でも、軽い鉢が転がることがあるほどです。
さすがに睡蓮鉢は強風時にも動いたりしませんでしたが、長い茎を持つスイレンの葉とせっかく付いてきた花芽が風でいくつか折れてしまいました。
急遽、もう一つの鉢も室内に移動させました。
(先に植えた温帯性スイレンは葉もやや小さく、茎も短いせいか、屋外でも風で折れることはありませんでしたが)
最初、外に出した株は葉が3枚ほどになってしましたが、水中にたくさん未展開葉があるので大丈夫でしょう。
数日見ていると、どんどん葉が出てきて、元気な様子です。
葉の後からは新しい花芽も出てきています。
ただ、初めから室内に入れておいた株も、後から取り込んだ株も、到着時に付いていた花芽は途中で成長を止め、茎が溶け出してきました。
到着時からの花芽と到着後に出た花芽では、ちょっと様子が違います。
前者は溶け出す前から、蕾がオレンジ調で、萼にしまりがありません。後者は、濃い臙脂色で萼がしっかりと閉じていて蕾が充実しています。
輸送・植え替えの環境変化への適応で、古い花芽へは株が栄養を止めたのかも知れません。
でも、葉と新花芽は二日に一つずつ出てきて、元気そうです。

6月21日、新花芽が水面に届き、翌日には空中へ出てきて(温帯性スイレンは水面で咲きますが、熱帯性スイレンはハスのように空中で咲く種類が多いようです)、蕾が下から緑色味を帯びてきました。

6月23日、ついに最初の花が咲きました(62cm鉢)。
色は記憶通りの黄色の花心と青紫色の花弁です。
ただ、直径7cmと小ぶりです。
温室の池に植えたものと睡蓮鉢の差かも知れませんし、最初の花のせいで小さめなのかも知れません。
でも、兎に角、開花にこぎ着け、うれしさがこみ上げてきます。
夕方には閉じかけてきましたので、照明を消すと、また蕾のように花が閉じました。
3,4日は咲いてくれるようです。
新花芽は5個ほど水中にひかえていますので、それも次々と咲いてくれるでしょう。
50cm鉢の方も空中に蕾を出し、水中に同じく5個の花芽が控えています。
(こちらも最初の花が、翌24日に咲きました)

鉢と照明

上でもちょっと触れましたが、鉢と照明について書いておきます。

【50cm鉢】
照明スーパークール150wを水面から17cmで照射。
中央照度、5万5000lux、中央より20cm付近円周上では1万5000〜2万lux、端では1万lux。
水温は最高で31℃。
メタハラで心配なのは温度でした。
それで、熱線の赤外線と光合成には無用の緑色波長を後ろに逃すスーパークールを使用しましたし、室内冷房はしてありますので、水温は上記くらいでした。

【62cm鉢】
照明は水槽用で使っていたお古です。
メタルハライドランプ:10000Kb、150wを2灯。水面より25cmで照射。
中央照度、14万lux、中央より30cm付近円周上では4〜5万lux、端では1万lux。
こちらの方が高い照度なのですが、水温上昇は甚だしく、一時、35℃まであがりあわてて水槽用ファンを付けました。
これで、水温はMax29℃に収まっています。
予備の水槽用クーラー取り付けも考慮したのですが、睡蓮鉢の横に並べるのはちょっと美観を損ねます。
30℃前後の水温なら睡蓮には問題ないようですので、クーラーまで出さずにファンで行こうと思います。
まだ先の話ですが、寒くなったら、ヒーターは入れようと思っています。
室内ですので、冬の朝で13℃くらいまでの低下ですが。

参考までに:
秋田の夏至、正午快晴時、屋上での照度は、水平面で8万5000lux、太陽に向かってだと9万5000luxでした。
午前9時、午後2時だと、水平面で5万luxくらいです。
人工照明でも、5万luxもあれば、光を好むスイレンといえども室内開花できるのでは無いでしょうか?

なお、10000Kbという青みの強いランプを使用したのは、この辺りの波長の方が植物体が硬く充実して育つ、というのは言い訳で、Marine Aquariumのお下りが使える、という経費的問題と、クールな色合いの方が赤みの強いものより個人的に好き、というのがホンネです。


↑2003年6月12日、50cm鉢、折角の葉が折れ、3枚しか展開葉が残ってません。


↑2003年6月23日、50cm鉢、葉が込み合うほどに繁り(古い葉は順次取り去っています)、この翌日開花した蕾が昇ってきています。


↑2003年6月23日、62cm鉢、ついに咲きました。
上の白い箱状のものはメタハラランプ、右上は冷却ファンです。


↑同日、花の側面アップ、この色に惹かれてしまいました。


↑上方から覗き込みアップ。
中央の明るい黄色が明かりを灯したように感じられます。

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