ニホンカモシカ Capricornis crispus

2002年7月24日

上記の日付、7月24日夜にホタルがいないかと秋田市郊外を探索しましたが、先週の大雨のせいか、ホタルの発生は終わっており、あの光には会えませんでした。
その探索行時、秋田市の北東に位置する太平山から下る添川の藤倉水源地付近で、思いがけない野生にお目にかかりました。

添川沿いの道をホタルを探して、ゆっくりめにクルマを流していると、崖の暗がりに、ぼうっと白いものが見えます。
停車し、よく目を凝らしてみると、カモシカの顔のシルエットが浮かび上がりました。距離は10メートル以内です。
急ぎ、カメラを取り出し、ストロボを焚いて、まず一枚。
突然の光で逃げるかと思ったのですが、なお、数枚、時間にして1,2分ほどでしょうか、その姿をこちらに見せてくれました。

最近、このように秋田市内でも、ときどきカモシカが目撃されています。
昭和30年代、幻の動物とされるまで減ったカモシカも、最近は個体数が増え、農山林への被害も目立つそうです。
狩猟が禁じられて数世代を経たせいでしょうか、あまり人間を怖がらなくなってもいます。

また、「カモシカ」と「シカ」がつきますが、ニホンカモシカは、シカよりウシに、よりヤギに近い動物です。
角はシカのように生え替わらず、ウシのように頭骨が盛り上がって芯をなし、その表面を角質層が覆って出来ていて、年輪を刻みながら連続的に伸びていきます。


閑話休題:「反芻動物とサンゴ」

全然、共通点の無い両者のように見えますが、栄養獲得の仕組みでちょっと似たところがあります。

偶蹄目の反芻動物は、消化できないセルロースを、胃内でバクテリアの発酵により分解し、有機酸として栄養とできる事は良く知られていますが、もう一つ、栄養面で特殊能力があります。

体内で発生したアンモニアは肝臓で尿素に変えられ腎臓で濃縮後、尿として廃棄されるのが一般の哺乳類ですが、ウシの仲間は、この捨てられる尿素を胃内に分泌します。
胃内のバクテリアはこの尿素をアンモニアに戻し、セルロースからの有機酸と結合させて、「アミノ酸」を作りだし、タンパク質とするのです。
ウシの仲間は、捨てられる尿素をバクテリアにタンパク質として再生させ、消化し栄養とすることができるのです。

サンゴやシャコガイも代謝で出てきたアンモニアや体外から吸収したアンモニアを共生藻類に与えて、同じくアミノ酸合成をさせます。

反芻偶蹄類とサンゴ・シャコガイは、カロリー源の供給ばかりでなく、蛋白の供給も体内共生生物によって得られるのです。
陸と海の違いはありますが、第一次消費者(あるいは生産者)としての成功に、この能力は大きなものがあると思います。

2002年7月24日、秋田市添川、藤倉水源地

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