世界で一番美しい贈り物  
BGMは、オリジナルです


「贈り物」
私の人生で、これほど悩むものはない・・・。
なぜかって、私はこれといって
人に何か贈ってもらいたいと思っているものはないのだ。
自分の欲しいものは
自分で手に入れることに喜びを感じている。
だから、人が、何を贈ってもらったら喜んでくれるのか、
全くわからない。
「贈り物」
人生の中で、そのえたいの知れないものに
悩まされる日は少なくない。

スリランカからの実習生の女の子が
「日本人は、無駄なものを贈ります。スリランカでは、その人が必要なものを贈ります」

この言葉は、私にとって、もっと
「贈り物」を悩ませる言葉となった。

昔、飲み屋のママさんがこんなことを言った。
「男性に物を送る時には、形にならないものがいいのよ。
この先どうなるかわからないじゃない?だから、別れた時に、相手の部屋に残ったりしないタバコみたいなものが一番いいのよ」

この言葉も、私にとっては、忘れられないほどに残っている。

「贈り物」
それが必要になった時に、私の頭は混乱し
相手が何を望んでいるのか
相手が何を喜びと感じているのか
相手がウソでありがとうを言わせないためには・・・
そう考え続けてしまうのだ。

だか、たいがい
当日までに「贈り物」はみつからず
そのへんのお店で、てきとーなものを包装し
贈ってしまう。

こんなことでは、ダメだ!!!

「よし。それならば、世界で一番美しい贈り物をあなたに贈ろう!」
そう決心した。


一番に考えたのは、思いを込めた箱だった。
きれいな箱に思いを入れて、宅急便で贈るのだ。
これは良い考えだと心は踊った。
ところが、しばらくすると、新たな問題が起きた。
『からっぽの箱だと思われたらどうしよう』
思いを込めた箱というのは、失格になった。

二番に考えたのは、歌を作って贈ることだった。
きれいな歌を作って、いろんな思いをメロディーにして
そうしたら、きっと喜んでもらえるわ!!
ところが、しばらく考えていると、やはり問題が起きた。
『有名な音楽家のCDが100円で買える時代に、私の歌なんか喜んでもらえるはずがないわ』

三番に考えたのは、自分の中の一番美しい部分の写真。
自分のどこが美しいかを考えた。
よし!!決めた。私の背中は美しい。しみもないし、できものもできていない。これに決めた!!!
『だけど、背中の写真を見て、壁だと思われたらどうしよう・・これも、ダメだわ!!』

手作りのクッキー
手作りのケーキ

『ダメダメ、ありきたりでおもしろくないもの』

四番目に考えたのは、映画のチケットだった。
「アイ・アム・サム」って美しい映画みたいだから、「映画をおごってあげるので、一緒に見に行きましょ。」そう手紙を書いて贈るっていうのは、どうかしら・・・。そうしたら、一緒に映画も見れるしね。

いいじゃん、いいじゃん。それにしよーーっと。チケットを贈って、何月何日の何時にどこどこで待ってまーーす。なんてちょっとしたデートができちゃうしね。
これは、美しいとか美しくないとかの問題じゃなく、すごくいい考えだと思った。ほぼ決定したところ、また問題が起こった。
『だけど・・断られたらどうしよう。ショックで立ち直れなくなっちゃうしね。それに、ずーずーしいわよ。ダメダメ、押しつけがましい行為は、美しいとは言えない』

五番目に考えたのは、夜霧で作ったカフスだった。一緒にネクタイピンも添えて・・・。これは、芸術的だし、美しい。これなら、ちょっと魔法を使えば、簡単にできるし、きっと喜んでもらえるわ。決定!!決定!!

ルンルン気分で、夜霧を集めてカフスを作ろうと思った。そして外に出たら、どしゃぶりの雨で、夜霧どころの騒ぎではない。

思わず歌ってしまった・・・
♪行かなくちゃ・・君に会いに行かなくちゃ・・君のそばに行かなくちゃ傘がないーーー♪

しかし・・・世界で一番美しい贈り物って何だろう・・・

もらった時に心に染みて涙が出るような美しい贈り物。
いったい、なんだろう・・・。

ひょっとして、こうやって「美しい贈り物」を送ろうと
必死になって考えている、今の私の気持ちが
今私のまわりにあるもので
一番美しいのかもしれない。
でも、それって、贈りようがない・・・・。

雨は、ふり続く・・・。

1人部屋の中で
Kenny . G の SISTER ROSE を 聞きながら・・・・

会うことのないあなたへ・・・