たこにゅうどうさま

 昔、昔、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいませんでした。
だから、おじいさんは、山へ芝刈りにも行きませんでしたし、おばあさんは 川に洗濯にも行きませんでした。だから、大きな桃が、ドンブラコッコ、ドンブラコッコスッコッコと、流れてくることも、ありませんでした。おっすまい。
(なれてくると、子どもたちは、エー−−ッといわない)

 雲の上にお城がありました。そのお城は、水色のガラスでできたお城でした。そこには、髪の長ーーい目のパッチリしたかわいらしい女の子がたった一人で暮らしていました。その子の名前は『バヤちゃん』と言いました。どうして、そんなところに、バヤちゃんは、一人で暮らしていたのでしょうか。それには訳があったのです。
 実は、バヤちゃんは、ここに来る前は、お母さんと暮らしていたのです。お母さんが「バヤちゃん、ご飯ですよーー」というと、バヤちゃんは、こう言ったのです「イヤだ!!」そして、お母さんが「バヤちゃん、もう寝る時間ですよーー」というと、バヤちゃんは、こう言ったのです「イヤだ!!」
 お母さんはもう怒ってしまいました。そうして「もう、あなたのことは、いりません」と言ってしまったのです。普通の子供だったら、そこまで言われたら、少しは反省して、嘘でも「ごめんなさい」と言って、ガマンするものなのですが、バヤちゃんは違いました。なんと、おかあさんに「もう、うるさくって、がまんできないから、私は出て行くわ。さようなら」と言って本当に出て行ってしまったのです。普通の子だったら、住む家もなくなるし、食べるものもなくなるので、そんなことは絶対に言えません。でも、バヤちゃんには言えたのです。それは、バヤちゃんがなんと、魔法使いだったからなのです。
 ホウキに乗って、あっという間に雲の上に行って、お城を建てました。そしてそこで、やりたいことだけをやって暮らしていました。
 バヤちゃんには、たった一人『ヤマンバ花子さん』と言う友達がいましたが、その友達とも喧嘩をしてしまい、今は本当に一人でした。
 だーれも遊びにも来ないし、ひまだったので、ホウキに乗って散歩に出ることにしました。
 川が流れていました。橋の下の方に、でっかいものが寝ているので、見に行ってつついてみました。なんと、それは『たこにゅうどうさま』でした。
バヤちゃんは「あんた、そんなところで、何やってんのよ」と言うと、たこにゅうどうさまは、苦しそうに「おなかがすいて死にそうなんです。何か食べ物をください・・・」と言うのです。「いったい、何が食べたいの?」とバヤちゃんがたずねると、たこにゅうどうさまは、よだれをタラタラ流しながら、こう言ったのです。「おいしそうな子供が食べたい」そこで、バヤちゃんは「○○保育園に、悪いこいっぱいいるから、悪い子だったら、まんじゅうにしてやるよ」と言うと、たこにゅうどうさまは、世にも恐ろしいことを言ったのです。「まんじゅうなんて、いやだ。おらは、いいこでも、悪い子でもいいから、いっぱーーいこどもを食べたいんだ」
 さすがのバヤちゃんも、その言葉に驚いてしまいました。そんなに恐い話しは今まで聞いたこともなかったのです。「たこにゅーどう、それは、やめた方がいいよ・・。いい子なんて、まずいよ」バヤちゃんは、一生懸命反対しましたが、たこにゅうどうは、○○保育園に向って、ドドドド・・・と大きな音を立てて飛んで行ってしまったのです。
 たこにゅうどうさまは、○○保育園にの門を開けました。ちょうど昼寝の時間で、外には誰もいません。しめしめ・・と思いながら、門を開けました。ギギーーーッ、カチャ。そして、玄関の方まで音をたてないで、そーーっと歩いて行きました。
 すると、まずいことに、事務室には保育園で一番恐い○○先生がいるのです。たこにゅうどうさまは、しばらく様子を見ていました。事務室の○○先生は、何とごはんを食べに行ってしまったのです。これはチャンスです。
 たこにゅうどう様は、玄関を入って、廊下を音をたてないように静かに歩きながら進んで行きました。
 まずは○○組がありました。部屋の中をのぞきましたが、ちょっと小さすぎる気がしました。次に、○○組の部屋をのぞいてみました。すると、沢山の子供たが、ころころと太って寝ているのです。たこにゅうどうさまは、嬉しくてたまらなくなりました。
 ところが、部屋の中には、一番、ころころと太っている○○先生が子供たちの間にどっしりと座っているのです。たこにゅうどうさまは、その先生を見ると、ぜったいに勝てない気がしました。しかたなく、よだれをタラタラたらしながら、様子を見ていました。すると丸々先生は「あらっ、なんか変なもの食べたかしら・・・おなかが痛いわーー」とトイレに行ってしまったのです。またとないチャンスが来ました。たこにゅうどうさまは、そーーっと戸を開けました。そして、部屋の中にいるこどもたちを丸のみにしてしまったのです。
 たこにゅうどうさまは、急いで川に帰って行きました。そこに、○○先生がもどって来ました。そして大あわてで「いったい、こどもたちはみんなどこに消えてしまったのかしら・・・」といいました。すると、部屋のすみっこの
おもちゃの影から、○○ちゃんが出てきました。「先生、たこにゅうどうさまがきて、みんなをまるのみにしちゃったの」
 だいじなこどもたちをまるのみにされて、○○先生は、まるで花火のように怒りました。そして、携帯電話でバヤちゃんを呼びました「ちょっと、あんた、どうせヒマなんでしょ。ちょっと私にホウキを貸してちょうだい」
 バヤちゃんは事情がわかっているもので、急いでやってきてホウキを貸してくれました。○○先生は「○○ちゃん、すぐにハサミと糸と針を用意して!!!」と大きな声で叫びました。
 ○○先生と、○○ちゃんはホウキに乗って、川に着きました。すると、でっかいおなかをした、たこにゅうどうさまが、大きないびきをかいて寝ているではありませんか。
 ○○先生は、急いでたこにゅうどうさまのおなかをハサミで切りました。ジョキッジョキッ。すると、次から次へと子供たちが出てきました。
 「さあ、みんな石を集めるのよ」そう○○先生が言った時に、遠くの方から声が聞こえるのです。「助けて−−」○○先生は、たこにゅうどうさまのおなかの奥の方に手を入れました。そうすると、小さい手がありました。それをにぎって、ギュ−−ッとひっぱりました。なんと、最後に○○ちゃんが、まだ入っていたのです。
 みんなで、たこにゅうどうさまのおなかに石を入れました。○○先生は、針と糸で、ザクッ、ザクッと たこにゅうどうさまのおなかを縫いました。そしてみんなで木の影から様子を見ていました。
 たこにゅうどう様が目をさましました。「あーーーあよく寝た。なんだか、のどがかわいたぞ」そう言って、川で水を飲もうとしました。すると、おなかの石が顔の方に登ってきて、ザッブーーンと川におっこちてしまいました。
そのままあっちの石にぶつかって、こっちの石にぶつかって、流れ流れて海に着いた時には、骨は全部くだけて、フニャフニャになってしまいました。それが海にいる「たこ」なのです。なんてことは言いませんよ。たこにゅうどうさまは、たこになったわけではありません。たこにゅうどうさまは、やっぱり、たこにゅうどうさまなのです。

                                  おっすまい