あるところに、「楽しい王国」がありました。そこには、大きなお城があり、楽しい王子が住んでいました。ある日、王子は旅人から、隣の国の「苦しい王国」では、世にも美しいお姫様が苦しんでいる・・・という話を聞いて、いてもたってもいられなくなり、隣の国まで旅に出ることにしました。
何をやっても、楽しい王子でしたので、たった一人で旅に出ました。苦しい王国は、すぐ隣の国でしたので、歩いて間もなく「苦しい王国に着きました。「僕の楽しい話しで、きっとお姫様を幸せにしてあげよう」と 楽しい王子は自信たっぷりにつぶやきました。
楽しい王子は、鼻歌を歌いながら、「苦しい王国」のお城に向って歩きました。そうして、鉄でできた、大きな扉をあけてお城の中に入って行きました。今まで見たこともない美しいお姫様が大きなテーブルに並んだ王子が今まで見たこともないような量の料理を食べながら苦しんでいました。楽しい王子は声をかけようとしましたが、あまりの美しさに、声も出ませんでした。それが噂の、苦しい王国の苦しい姫でした。姫は、姫で、苦しみもがきつつ、エビフライを食べながら、顔をあげました。目の前には、今まで見たこともない、世にも男らしい楽しい王子が立っているではありませんか。年頃の若い美しい男女が出会えば、愛が生まれたとて、不思議はありません。お互いに人目ぼれしてしまい、恋という病の中に心を投じてしまったのであります。
普通、これで、めでたし、めでたしとなるのですが、けして、そういうわけには行きませんでした。
それは、大変な日々のはじまりだったのです。楽しい王子は、楽しいことばかり言うのに、苦しい姫は、苦しいことばかり言うのです。楽しい王子は、生まれてはじめて、自分の話しを苦しがる姫を見て、どうしたら良いかわからなくなってしまいました。
愛の日々が続くに従って、楽しい王子の悩みは深まるばかりでした。苦しい姫を幸せにすることだけを考え、自分の中の愛の全てを苦しい姫に捧げようと思っているのですが、思いは、すれ違うばかりで、通じて行かないのです。
それでも、王子は、苦しい姫を失いたくないばっかりに、毎日、毎日、楽しい話しをするのでした。でも、姫は、王子が楽しい話しをすればするほど「あーー苦しい。あなたといることが、世界で一番苦しい・・・」と 苦しむのです。
楽しい王子は、とうとう、姫を見ていることも辛くなってしまいました。そして、だんだん言葉が出なくなり、生まれて始めて悩み、生まれて初めて苦しんだのです。そして、姫に「もう、僕は苦しくて、たまらない。君が苦しんでいるのを見ていると、僕の心は張り裂けそうなんだよ・・・」そうして、頭をかかえて、大声で泣きました。目からは、大粒の涙がボトボトと流れました。
すると、苦しい姫が突然笑い出したのです。「あはははは・・・・。どうして、そんなに苦しんでいらっしゃるの?あなたが、そんなに苦しんだら、私はもうおかしくてたまらないじゃありませんか・・・。あははは、苦しんでいるわ!!苦しんでいるわ!!どうして私は、あなたが苦しむと、こんなに嬉しくなってしまうんでしょう・・・」
その日から、苦しい姫と楽しい王子は、「楽しい」と「苦しい」を半分づつ持つようになりました。姫は、相変わらず、自分を変えようともせずに、王子が苦しんでいる時だけ、笑っていましたが、時がたつにつれて、少しは我慢して、楽しい時にも笑ったふりができるようになりました。
結局、結婚して、二つの王国が一つになることになったのですが、王国の名前が問題でした。2人とも生まれた時から持っている名前を捨てたくはなかったのです。それから1年もの間、二人は名前のことで喧嘩をし続けました。そのうちに、疲れてしまいました。「もう、めんどうくさいから、二人とも名前を捨ててしまえばいいのよ」と言ったのは、姫の方でした。「新しい名前を考えよう」そう言ったのは、王子でした。
姫が考えた新しい名前は「寂しい王国」でした。
王子が考えた新しい名前は「嬉しい王国」でした。
結局、名前が決まりません。姫は「もう、めんどうくさいから、新しい名前の「あたらしい」の上の字と下の字で「あいの王国というのは、どうかしらね」
これには、王子もようやく賛成しました。そして、「愛の王国」が生まれたのです。
信じるも、信じないも、あなた次第・・・・・
おっすーーまい
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