JSAネタバレ感想文

板門店にあるJSA(Joit Security Area;共同警備区域)での、
橋を挟んで北と南の4人の男たちの友情と現在の朝鮮半島分断の苦しみ

韓国軍

北朝鮮軍
イ・スヒョク  : イ・ビョンホン
ナム・ソンシク : キム・テウ
オ・ギョンピル : ソン・ガンホ
チョン・ウジン : シン・ハギュン

スイス軍将校 ソフィー・チャン : イ・ヨンエ

「事件」が3度描かれますが、1つはスヒョクの供述書に基づくもの、もう1つはギョンピルの供述書、そして最後が真実。

4人が仲良くなっていく過程にはかなり笑えました。
いびつな飯ごうで乾杯をし、ソンシクが自分の彼女だと見せた写真は韓国の女優だし、ギョンピルはヤンキーをやっつけるなんて言ってるくせにライターに感心してるし...。
北の共産主義への非難よりも、南のアメリカへの依存度の高さが強調されてみえたなぁ。
それにしりとりだの子供のような他愛もない遊びにあれだけ真剣になれるのは、軍の生活がそれだけ厳しいということ。
日本人には想像しがたいだろうが、軍の訓練・上下関係は非常に厳しいもの。
また、ヒョン(兄貴)と呼ぶこともこういう状況下ではありえないこと。それだけ4人は旧知の仲のように親しくなっていたんだね。
好きなのはチョコパイのシーン(笑)。これはロッテのチョコパイ。
軍隊生活での食事は粗末だし量は少ないし、ましてお菓子など滅多に食べられるものではないそうです。
以前TVのニュース番組の特集で韓国軍の訓練生活を見ましたが、母が内緒で差し入れてくれたわずかなチョコレートを食べた兵士が厳しい罰を受けていました。
それだけあのチョコパイは貴重なんです...。
南へ誘うスヒョクにギョンピルが「俺の夢はこの国でこれよりおいしい菓子が作れるようになることだ」と言う所。
お互いに自分の国に誇りを持ち、相手の愛国心も尊重する。そのうえで統一への扉が開けたら...。
でも事件は起こってしまう。

あんなパニック状態でも冷静に的確に指示を出すギョンピル。
ソンシクの投身自殺のビデオを見せられても、動揺するスヒョクを守るためにわざと彼を罵倒する。
ソン・ガンホが本当にイイ兄貴役を演じていました。
被弾したスヒョクが脚を引きずりながら橋を渡るときも、一応応戦しながらもスヒョクが無事救護されると、ほっとしたように銃をおろす...。
ただあんまり北の人っぽくは見えなかったけど(苦笑)。

一方スヒョクは敬愛するギョンピルの言うとおりになれなかった。冷静になれなかった。
結果ソンシクを失い、命令とはいえギョンピルにも銃を向けてしまった。そしてウジンに致命傷を与えたのも実は自分だった...。
彼が最後に死を選んだのは、例え友でも敵側の人間であれば反射的に銃を撃てる自分に嫌気がさしてからなのか?
韓国の方は誇りと自尊心が高くて自分から謝ることは少なく、まして膝をつく(土下座する)なんてことはもってのほかとか。
スヒョクが最後にソンシクが飛び降りた窓を見上げながら、膝をついて自殺したのは3人に対して謝罪の気持ちからでしょう。
スヒョクが死を選ばず無事除隊を迎え、アフリカにとばされたギョンピルに会いに行くというラストも当初は用意されていたそうだが、こちらが却下されたということは現実はまだそんなに明るくなっていないっていうことなんだな...。
離散家族の問題も解決してないし、彼らだけがHAPPYになるわけにはいかないんだ。

ソンシクがキレてウジンを撃ちまくっていたシーン...撃ち終わってスヒョクを見て、にやりと笑うんだよ...。
人間って怖い。「フルメタル・ジャケット」思い出した...。

紅一点のイ・ヨンエはストーリーテラー的存在。
事件の捜査役に女性を持ってきたことで、男4人の友情が際立ちましたね。
しかし、彼女自身に悪意はなくても結果的に全てを壊してしまった。
スヒョクに自殺のきっかけを与えてしまったのは彼女だから。
最初は「シュリ」のキム・ユンジンにオファーがあったとか。帰国子女だしね。

映画が終わってふと見たパンフの裏表紙...最後のあの写真だった...(涙)。
予備知識が載っているので、映画を観る前にそこだけ読んでおいたのですが、読んでおいてよかったかも。
日本人にはわからないことがたくさんあるものね。
ウラは取ってないのですが、なぜ境界線が38度なのか?・・・そこにあった日本軍の駐屯地を利用したとか。
他国の歴史を調べることで、自国の歴史を知るってちょっと恥だよな。

「シュリ」と比較すると人間関係や心情が細かく描き込まれているので、あまり深読みできなかったのがちょっと残念...。