第28号(1999年5月) |
97・98年度尼崎市の公共工事 平均落札率95.8% |
競争なき入札で市(民)は大損 |
---談合の疑いが濃厚--- |
◆ | 建設省の調査によると、昨年の4月〜8月に全国の自治体が実施した公共工事の落札率は平均95.4%という高い数字でした。この結果について市民オンブズマンである弁護士は、次のような見解を発表しています。 「刑事事件の記録を見ても、落札率90%以上の入札は談合と見るべき。本当に競走しているのなら、予定価格ぎりぎりになるのは不自然だ」。 |
◆ | 私も同じような思いがあります。落札率が高ければ、入札での競争が働いておらず、談合のあった可能性が出てきます。業者は、予定価格等の金額をかなり高い精度で積算しており、予定価格ぎりぎりの価格で入札し、利益を目一杯上げようとしているのです。 |
◆ | 尼崎市の公共工事はどうなっているのか、市発注の公共工事20件(予定価格1億5千万円以上)の落札率を調べてみました。(表参照) 尼崎市の公共工事20件の平均落札率は95.8%でした。全国的には平均値ですが非常に高い落札率であり、市民の税金が無駄に使われているようです。 |
◆ | 仮にこの20件の落札率が最低制限価格で落札された場合、約57億円の節約、落札率が80%であれば約36億円の節約ができます。これらの工事が、国・県の補助を4分の3受けていたとすれば、最低制限価格の落札で約14億円、落札率80%で約9億円の市の予算が節約できます。 |
尼崎市公共工事落札率一覧表(抜粋) 単位 :円 |
入札日 |
工事の名称 |
落札金額(A) |
予定価格(B) |
最低制限価格 |
落札率A/B |
97.08.07 |
市営潮江北団地新築工事 |
898,800,000 | 905,945,271 | 628,788,237 | 99.21 |
98.08.06 |
尼崎高校第2体育館機械設備工事 | 583,800,000 | 588,891,670 | 408,731,263 | 99.14 |
97.04.22 |
中央公園階段広場建設工事 |
354,900,000 | 359,645,601 | 249,618,747 | 98.68 |
98.08.06 |
尼崎高校第2体育館新設工事 | 3,045,000,000 | 3,086,411,506 | 2,142,185,555 | 98.66 |
97.08.06 |
競艇場スタンド改築2期工事 | 4,956,000,000 | 5,026,078,050 | 3,488,443,350 | 98.61 |
98.01.28 |
築地改良住宅新築機械設備工事 |
171,150,000 | 179,873,253 | 124,844,391 | 95.15 |
98.08.06 |
山手大橋下部工設置工事 |
128,100,000 | 181,110,431 | 127,831,383 | 70.73 |
落 札 率 :入札予定価格に対する落札価格の割合 予定価格 :入札時の上限価格。この金額より低い金額でなければ工事を落札できない 最低制限価格 :この価格を下回る額の入札は失格になる |
公共工事入札 談合なくす四つの提案 |
◆ | 公共工事の入札で、談合を無くし競争原理を働かすには、どうすればいいのでしょうか。この3月議会で、丸尾まきは4つの提案をしました。 @ひとつは、業者が入札で最低制限価格を下回る金額を入れた場合、失格とはせず、業者に積算根拠や財務状況等を聞き取り調査し、問題がなければ、その業者の落札とする低入札価格調査制度。 Aふたつめは、行政が指名業者を選定するのではなく、希望する業者すべてが入札に参加できる工事希望型指名競争入札の導入。 Bは、業者の格付けや経営事項審査結果の公表。 Cは、入札会場の公開です。 |
◆ | これらの提案に対して市長は、低入札価格調査制度、経営事項審査の公表などについて検討するべき課題と答弁しました。ちなみに、98年7月〜9月の尼崎市の公共工事で、契約金額2千万円以上、予定価格1億5千万円未満の工事の平均落札率は86.42%でした。金額の低い工事ではいくらか競走原理が働いているようです。 |
◆ | 高い水道料金の原因を作ったヤミカルテル疑惑の水道管。「クボタ」などメーカー3社が独禁法違反で刑事告発されました。 |
◆ | それとは別に、水道管には環境ホルモンの問題があります。水道管が真っすぐな部分の内面はモルタルライニング(セメントを土と水で練ったもの)を施しているのですが、水道管が曲がった部分には、エポキシ樹脂が塗布されています。 |
◆ | エポキシ樹脂は缶詰やジュース缶の内面に塗られているものですが、ビスフェノールAを他の物質と合わせて作られたものです。このビスフェノールAは、子宮内膜症や精子の減少などを引きおこしていると言われている環境ホルモンのひとつです。 |
◆ | 昨年度、九州・四国地方の13生協で作るグリーンコープ事業連合が、水道水に含まれる環境ホルモンの実態調査を実施しました。その結果、広島県、山口県、宮崎県、大分県、熊本県などでビスフェノールAが0.02ppbから0.14ppbが検出されました。 この数値と水道管のエポキシ樹脂との因果関係はわかりませんが、水道管から環境ホルモンが溶出している可能性は否定できません。 |
◆ | 今議会で丸尾牧は、【ただちに水質検査の実施が必要】【ただちにエポキシ樹脂を安全な代替材に切り替えるべき】と質問しました。それに対して市長は、「水質調査は実施する。今のところエポキシ樹脂に勝るものなく代替材への切り替えは困難」との答弁。 |
プラスチック関連物質の毒性と生産量 |
物質名 | 発ガン性評価 | 毒生 | 生産量 | ||
IARC | EPA | (「健康な住まいを手に入れる本」 「日本環境化学講演会予稿集」より) |
(94年) | ||
ビスフェノールA | 3 | 白血病、精巣間細胞腫、環境ホルモン | 26.0万t | ||
スチレンモノマー | 2B | 皮膚・眼・粘膜刺激、中枢神経作用 | (樹脂) | 124.0万t | |
ノニルフェノール | 乳ガン細胞を増殖、環境ホルモン | 2.0万t | |||
酢酸ビニールモノマー | 2B | 皮膚・眼・粘膜刺激 | 54.0万t | ||
アクリロニトリルモノマー | 2A | B1 | 肺ガン、催奇形性、神経障害 | 61.0万t | |
塩化ビニールモノマー | 1 | A | 肝臓ガン、皮膚障害 | (樹脂) | 210.0万t |
フタル酸ジブチル(DBP) | 環境ホルモン作用 | 1.7万t | |||
フタル酸ジオクチル(DOP・DEHP) | 2B | 肝臓ガン、環境ホルモン作用、神経毒性 | 29.0万t | ||
ホルマリン(→メラミン樹脂) | 2A | B1 | 鼻腔ガン、皮膚・眼・粘膜刺激 | 136.0万t |
IARC(国際ガン研究機関)発ガン物質の分類: | 1=人に対して発ガン性がある |
2A=人に対しておそらく発ガン性がある | |
2B=人に対して発ガン性があるかもしれない | |
3=人に対して発ガン性があるともないともいえない | |
EPA(アメリカ環境保護庁)発ガン物質の分類: | A=人に対して発ガン性がある |
B1=人に対して発ガン性がある可能性が高い |
日本子孫基金発行「食品と暮らしの安全」第104号より |
尼崎市内2事業所の焼却施設 |
ダイオキシン濃度基準値超える |
◆ | 現在、尼崎市には14業者の稼動する産廃処理施設が20施設あります(表1参照)。これらの施設は廃棄物処理法によって、毎年1回のダイオキシン類調査が義務づけられています。 丸尾牧は、市当局に把握しているデータを尋ねましたが、「データは業者の所有する情報」ということで教えてくれませんでした。 |
◆ | それならばと、処理業者へ電話で聞き取り調査を実施しましたが、データを教えてくれたのは猪名寺にある業者だけでした。そこはレントゲン写真の焼却処理をしており、ダイオキシン類排出濃度は、0.0093ナノ?/立方?で、暫定基準値80ナノ?/立方?を大きく下回っています。非常に丁寧な対応でした。しかしその後、丸尾牧がダイオキシンデータの公表を議会で質したことで、市当局はデータを公表すると約束しました。 |
◆ | そのような経過をたどって、市当局の公表した資料(表2参照)によると2事業所の4施設から、暫定基準値を上回る140ナノ?/立方?という濃度のダイオキシン類が検出されました。能勢町の「豊能美化センター」の排煙中のダイオキシン類濃度が180ナノ?/立方?ですから、かなり高濃度のダイオキシン類が排出しているようです。これらの施設はいずれも東海岸町に位置しています。ただ、これらは一日あたりの焼却可能量が5トン未満の小型炉で、能勢のような広範囲でのダイオキシン汚染は引き起こしていないようです。尼崎市の大気中のダイオキシン濃度を近隣都市と比べると、少し高いのですが極端に高い値でもありません。 |
◆ | 市当局は4月中旬にも再度、事業者にデータを取らせて、基準値を上回る場合は焼却炉の使用停止を求める予定です。産廃焼却処理業者に対し、行政がしっかり監督して毅然とした態度をとるように市民が監視を強めることが大切です。ただし、産廃問題を根本的に解決するには、私達が大量消費社会を見直しするしかありません。 |
◆ | なお市民の皆さんが、廃棄物処理法にもとづき〔表1〕にある事業所のダイオキシン類排出濃度のデータ公表を求めれば、事業者はデータの閲覧をさせなければなりません。ぜひとも市民の健康を守るために、近くの事業所のダイオキシン類排出濃度を尋ねてみて下さい。 |
(表1) 尼崎市の産業廃棄物焼却炉 |
処理業(6業者、10施設) | 事業所(8事業所、10施設) | ||
設置場所 | 設置場所 | ||
尼崎ドラム缶工業?(2施設) | 東海岸町 | 王子製紙?神崎工場 | 常光寺町 |
川崎商店 | 猪名寺 | 関西ペイント?尼崎工場 | 神崎町 |
杭瀬金属工業? | 東海岸町 | ?カンペハピオ第1工場 | 潮江 |
大進?(3施設) | 東海岸町 | キューピー?伊丹工場 | 猪名寺 |
日本下水道事業団(2施設) | 平左衛門町 | 塩野義製薬?杭瀬工場 | 杭瀬寺島 |
?村島喜八商店 | 東海岸町 | セッツ?尼崎工場(2施設) | 杭瀬南新町 |
日本油脂?尼崎工場(2施設) | 大浜町 | ||
利昌工業? | 南塚口町 |
(表2) 産廃焼却施設ダイオキシン類排出濃度 --- 排ガス1立法?当たり--- |
1ナノ?未満 | 1〜12ナノ? | 140ナノ? |
5業者 | 6業者 | 2業者 |
7施設 | 8施設 | 4施設 |
(1ナノ?は10億分の1?です) |
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