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2019年10月 

 

 

 

 

 

 

「豚舎・設備のお悩み解決!」(78)「発電機は養豚場の命綱
先月の記事で農場に備えておくべきものの一つに発電機を挙げておりました。
その先月号が発売される前に千葉県で大規模な停電が起きてしまいました。
台風被害に遭われた農場の方々には心よりお見舞い申し上げます。
 
私は台風が千葉県を襲った99日の未明、まさに台風直下の香取市内のホテルに泊まっていました。
前日に旭市の農家を訪問し、9日は香取市内の養豚場の訪問予定だったのです。
ですから通常のコンサル内容を変更し、停電対応に当たりました。
その内容をご紹介するとともに、発電機を含め配電盤や配線など、どのような準備をしておけば良いかを解説致します。
 
 99日に訪問させて頂いた養豚場は(株)ナルケさんです。
母豚370頭一貫経営をされているところで、分娩舎2棟のうち1棟がウインドレス豚舎で、その他の豚舎は自然換気豚舎です。
昨年、分娩舎の1棟をウインドレス化した際に非常用発電機を購入して頂きました。
成毛さんの素晴らしい判断だったのは、分娩舎に間に合うだけではなく、
全豚舎の電力を賄えるくらい大型の発電機を買っておいたことが、今回6日間もの停電でも豚への被害が無く過ごせたことに繋がりました。
 
しかし、既存の配線はウインドレス分娩舎にしか供給されない配線でした。
停電が長引いたときに備えて私は、全豚舎の水と給餌ラインとスクレーパーと最小限の曝気運転が出来るように仮設配線することを提案しました。
 
 まず最初に、発電機で動かしたい電気設備のモーターの容量を確認してその合計を計算します。
ここからは、読者の皆さんも自分の農場の場合に置き換えてシミュレーションしてみて下さい。
 
成毛さんの農場では、
@  井戸ポンプ・・・15kw×2台=3kw
A  分娩舎の換気扇・・・075kw×8台=6kw
B  給餌ライン・・・04kw×12台=4.8kw
C  スクレーパー・・・04kw×6台=2.4kw
D  汚水ポンプや送粉スクリュー合計・・・約2.2kw
E  曝気ブロワー・・・37kw+75kw
以上の合計が29.6kwでした。
 
次にこの場合の合計電流を計算します。
キロワットをワットに直すために1000倍して200Vで割算すると概算値が出ます(正確にはルート3と力率も掛け算する)。
この場合は29.6×1000÷200148
発電機の容量が60KVA3200Vの許容電流が最大144Aのものでした。
全部同時に動かさなければ、ぎりぎり間に合う計算です。
しかし、各豚舎へ電気を分配するメインの配電盤まで発電機から仮設の配線をするに当たって、農場に在庫してある電線がVVF1.6だけでした。
この電線の許容電流は27Aです。
仮設配線であまり多くの電流を流すのは危険なので、曝気ブロワーは3.7kw1台だけ回すことにしました。
これで最低限、曝気槽が嫌気状態になるのを防ぐことができます。
 
発電機から分娩舎の配電盤までは150A用の電線で来ているので、
分娩舎からメインブレーカーまでの仮設配線にはVVF1.6を3本並列に繋ぐことにしました。
図1が配線の略図です。
キューピクルから直接豚舎に行っている配線とメイン分電盤を経由して豚舎へ行っている配線がありました。
皆さんの農場でも各豚舎への電源供給がどうなっているのか、メインブレーカーはどこにあるのかを把握しておいて下さい。
増改築を繰り返した農場ではキューピクルが2箇所あったり、豚舎の子ブレーカーから隣の豚舎のメインブレーカーに繋がっていたりと、
複雑になっていることが多いものです。
 
さて成毛さんの例に話を戻します。
図1のように洗浄機小屋の所にメイン分電盤がありましたので、
分娩舎の分電盤の発電機受電端子から、メイン分電盤の親ブレーカーの負荷側(下側)まで仮設配線をしました。
ここで注意しなければいけないのがメインブレーカーです。
図2をご覧下さい。メインブレーカーは必ずOFFにしてから発電機配線を繋ぐことです。
もし、ONしたまま繋いで停電が復旧すると、電力会社からの電気と発電機からの電気が干渉して、電柱にある電力会社のブレーカーが落ちてしまいます。
近隣の住宅まで最低電になる「波及事故」になる恐れがあるからです。
 
停電が復帰したら、発電機を止めて発電機からの配線を外してからメインブレーカーをONにしてください。
発電機を起動する前に全ての豚舎の分電盤のブレーカーを全てOFFにします。
そして、発電機を起動したら、回したい設備のブレーカーを一つずつ上げていきます。
数カ所ONにする度に発電機の電流計を確認して電流値に余裕があることを確認しながら必要な設備のブレーカーをONにしていきます。
成毛さんの場合はウインドレス分娩だけで約30Aでした。
3.7kwブロワーと脱水機と餌ラインを回したときは、約80Aになっていました。
ここから分娩舎分の30Aを引くと50A
これが仮設配線を流れる電流で、VVF1.6×3本の許容電流81Aを十分下回っているので長時間運転に耐えられると判断してきました。
 
皆さんの農場でも発電機を借りてきて仮設配線をするときは、この記事を参考にして下さい。
そして恒久的な配線は電気工事店に依頼して、図3のように切替え器を取り付けて配線して下さい。
写真1が切替え器(CKSとも言う)です。
 さて、発電機を備えておいても、いざ停電時に動かないのでは話になりません。
最低でも1ヶ月に1度30分ぐらい運転して下さい。
成毛さんは写真2のように、ウインドレス分娩舎の洗浄機は発電機で動かす配線にしています。
切替え器を介さずに発電機直結の配線になっていますので、商用(電力会社の)電源との切替えの煩わしさを排除しています。
ですから、毎週発電機を運転していますので、停電時も問題なく動きました。
 
 今回はストール舎のトンネル換気用排気ファンを動かすことが出来なかったので、
窓を全開にして、さらにドリップクーリングも動かして対応しました。
それでも、6日間の停電でも母豚が具合悪くなることも無く肥育豚の発育遅延も無く、
汚水を垂れ流すことも無くやり過ごせたのは、まさに発電機で対応できたからこそですね。
 
今の時代は毎年日本のどこかに災害が訪れます。
ですからこの機会に発電機をまだ備えていない農場では是非とも購入して下さい。
単相100/200Vと三相200Vを同時出力できるタイプがお薦めです。
母豚200頭一貫以下なら30KVAタイプの新ダイワDGN450MK(モノタロー税抜価格\1,789,000
母豚400500頭一貫なら60KVAタイプの新ダイワDGN600MKP(モノタロー税抜価格\2,339,000)がお薦めです。
母豚500頭規模以上の農場では複数台の発電機でカバーする方が効率的です。
 
 ウインドレス豚舎がある農場では、発電機を必ず備えて下さい。
換気扇は全部発電機に繋ぐ必要はありません。例えば、換気扇の回路が2系統以上になっている制御盤ならば、半分が回れば豚は死にません。
それから、糞尿処理の方ですが、堆肥盤があるのでしたらコンポストは動かさなくても対応できると思います。
しかし、汚水処理は環境問題に発展しかねませんので、発電機で動かせるようにしておくのが賢明です。
 
 最後に、発電機導入手順を再度まとめます。
@  、停電時に動かしたい設備の場所と消費電力(消費電流)をリストアップ
A  消費電流の合計から必要な発電機を決める。(必要電流の1.2倍以上の容量を持つ発電機を選定して下さい。余裕が大事)
B  、メインブレーカーと各豚舎の配電盤の位置と接続経路を確認する。
C発電機の配線と切替え器の工事を依頼する。

 

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最終更新日 : 2022/01/23