「豚舎・設備のお悩み解決!」(64)「車両洗浄消毒の注意点」
 
 最近ではPEDの再発は少なくなってきたようですが、注意すべき伝染病はそれだけではありませんね。
 
外部からの病気侵入経路は大きく分けて、人、物、車です。中でも今回は車にスポットを当てて、その注意点や工夫ノウハウなどをまとめてみました。
 
農場にやってくる車には、従業員の通勤車、来訪者の車、工事業者の車、豚出荷車があります。
一般的に従業員の車はリスクが低いでしょう。
来訪者や工事業者の車は他の養豚場に行っている可能性がありますから、要注意です。
 
農場を新設する、または拡張する場合は、図1のようなレイアウトにすると防疫体制を強化できます。
豚舎に近づく車両は下回りを洗浄消毒して入れるようにしましょう。
洗浄機を使って手作業で行うよりも、消毒ゲートを設置すれば、短時間で車両全体に消毒をかけることができます。
 
次に一番リスクの高い豚輸送トラックの洗浄消毒について詳しく述べたいと思います。
屠場へ行く肉豚出荷車と場内豚移動用トラックは別の車を使うべきです。
また、洗車場も分けましょう。
通常、肉豚出荷車は屠場で洗浄して帰ってくると思いますが、トラックの運転手にはそこでいかに病原菌を持帰らないようにするかの意識を高めてもらうことが重要です。
 
まずは、荷台で履く長靴。専用の箱に入れるかレジ袋のような様なものに入れるなど、運転室の床には直接置かないこと。
洗浄するときは前輪を高くして荷台の後ろから汚れや水が排出できるようにして洗うこと。
屠場の洗車場が平坦な場所だったら、前輪を上げるスロープ土台をトラックに積んでおくなどの工夫が必要です。
平坦地での洗浄ではどうしても荷台の前方に汚れが残りやすくなります。
 
また、洗浄を忘れがちなポイントとしては、荷台と運転室の間や、荷台の下側です。荷台を洗浄した後に荷台の裏側を洗浄し、最後にもう一度消毒をかけながら荷台に残った汚れを洗い流すときれいになります。
 
屠場から戻ったトラックの保管場所は農場外に設けるのがベストです。
屠場の洗浄機に消毒剤散布機能が無ければ、車庫の場所でもう一度消毒をかけてから乾燥させます。
消毒も大事ですが、乾燥させることが重要です。
寒冷地の冬期間は、ただ車庫に入れただけではトラックに残った洗浄水や消毒液が、凍結して乾燥しません。
その場合は車庫の中またはトラックの荷台にジェットヒーター等を置いて強制的に乾燥させる必要があります。
ですから、たとえ屠場までの距離が近くても、1日に屠場へ2回以上ピストン輸送することは避けるべきです。
さて、自社運搬ならばこのようにきちんと洗浄消毒の管理ができますが、運送業者へ委託している場合もできるだけこのような手順を踏んでもらうように要請しましょう。
 
さらに、出荷車を農場に入れる際は、下回りと荷台と荷台後部をしっかりと消毒してください。
トラックの洗浄消毒が十分に行われているかをチェックするには、大腸菌用フードスタンプ(写真1)と30℃用インキュベーター(恒温箱:写真2)を使います。
 
手順は、出荷トラックが農場に到着した際に消毒をかける前に、荷台の床1か所と、荷台後部(豚舎と接触する部分)にフードスタンプを押しあてて、インキュベーターに入れます。
24時間後にコロニー(菌の塊)が出来ているかどうかを目視確認します。
コロニーが無ければ事前消毒は合格です。
コロニーが1個以上あれば洗浄消毒が不合格ですから、ドライバーに洗浄消毒手順の再確認をしましょう。
 
 病原菌は目に見えませんから、ハイヘルスを保ちたい農場では、念を入れてガードを2重にすることが賢明です。
それは、農場敷地内又は場外でで豚舎から離れた場所に肉豚中継所(デポ)を設けることです。
農場側からデポに肉豚をすべて下ろし終わるまで、屠場へ行く車はデポに接触せずに待機し、すべての肉豚がデポに下ろし終わって、場内車がデポから離れてから積み込みしてください。
この設備をするにはコストがかかりますが、伝染病や慢性疾病が入ってしまえば損害は莫大になりますから、デポにかかるコストは保険と同じです。
まだ、屠場へ行くトラックを豚舎直付けしている農場では是非デポ設置を検討してみてください。

 

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最終更新日 : 2022/01/23