「豚舎・設備のお悩み解決!」(52)「浄化槽排水中の窒素低減


 

昨年から畜産排水に含まれる窒素の暫定基準が700ppmから600ppmに引き下げられました。
暫定基準の適用期間は3年間ですから、その後は一般基準の100ppmmg/L)が適用されるかもしれません。ですから、養豚家の中ではいかにしてその基準をクリヤーするか。
しかも低コストで。と言うことが関心の的となっています。そんな方のために先月セミナーを実施いたしました。今回はその要旨をこの紙面でご紹介します。

 養豚において糞尿処理はお金にならない部分ですから、どうしても設備投資が消極的になってしまいます。
しかし、養豚農家が減って1経営体当りの飼養頭数が増える中では、役所や住民からの目は厳しくなるばかりです。
ですから、糞尿処理にかかわる規制基準を遵守することは、養豚経営を継続する上での生命線とも言えるでしょう。
今回は、私が協力企業と共に取り組んできた中で見えてきた、低コストで窒素規制をクリヤーする方法のご紹介です。

 そもそも何故窒素規制が強化されるのかをまず説明します。
水質汚濁防止法で規制されている「窒素」とは、アンモニア、アンモニア化合物(尿素など)、亜硝酸化合物、硝酸化合物の合計です。
養豚場では豚の糞尿にアミノ酸や尿素などが含まれています。
それが曝気槽に入る前までに嫌気性菌によってアンモニアやアンモニア化合物になります。
曝気槽では好気性菌の働きで、アンモニア化合物が酸化されて亜硝酸化合物や硝酸化合物に変わるのです。
窒素分の多い排水が環境に与える影響としては、
@農作物の倒伏や病害虫耐性の低下による終了の低下。
A飲料水や農作物を通して人体への健康被害。B河川の富栄養化現象による生態系の破壊。などがあります。

 水質汚濁防止法では、平成2341日からは、畜産農業の排出水について11回以上、公定法により測定して、
その結果を記録・保存することが義務づけられています。
守らなければ30万円以下の罰金に処せられます。
みなさんの農場では毎年水質検査を実施していますか。

 では本題です。曝気槽内ではアンモニアは酸化されて硝酸態窒素になるだけです。
しかし、曝気を止めると脱窒菌が働いて、硝酸態窒素を気体の窒素に変えて空気中に放出してくれますので、水中の窒素分が少なくなります。
その証拠に表1をご覧ください。

これは実際の養豚場排水を検査した結果です。
回分式浄化槽では1例を除き、国の正式基準の
120mg/リットル以下になっています。
回分式とは、複合ラグーンやオキシデーションディッチのことです。
1つの槽で、曝気
沈殿上水放流汚水投入曝気、というフローを繰り返します。
この沈殿行程中に脱窒が行われるのです。
連続式では、曝気の後に沈殿槽が設けられているところもありますが、滞留時間が短いことと脱窒菌の餌となる
BODが少ないために脱窒が十分に起こりません。

 では、連続式曝気槽を使っている農場で窒素低減するにはどうすれば良いかというと
@
RO膜設備を増設する。
A脱窒槽を増設し化学反応で窒素分を回収する
B曝気槽で脱窒菌が働けるように間欠曝気ができるように改造する。
などの方法が考えられます。

@のROは一番きれいな水質が得られますが、投入量の約1/4ぐらいが濃縮水となって残りますので、この処理が新たな問題となります。

Aの方法は、回収した窒素化合物を窒素肥料として販売できるかどうかが問題となります。

Bの曝気槽を間欠運転に改造する手段には大きく分けて2通りの方法があります。
A).一つは曝気槽とブロワーを増設する方法。もう一つは、
B).脱水機設備を増設して、豚舎から流入する汚水の全量を脱水処理する方法です(図3)。

余剰汚泥脱水用として既に脱水機設置されている農場では、B)の方法により一番低コストで改造できます。
おそらく全量脱水するには脱水機の能力不足でしょうから、リセルバーなどの脱水補助剤を添加すると共に、予備脱水機を追加することとで、達成出来ます。
こうすることで、曝気槽に投入する
BODSSを低減できるので、曝気時間を減らすことが出来ます。
ですから間欠曝気運転が可能になるわけです。
この方法のメリットは新たな敷地を必要としないこと。
敷地に余裕が無い農場向けです。
デメリットは脱水処理のための凝集剤等のランニングコストが増えることです。

A)の方法ですが、一般的な曝気槽が2槽のタイプならば、前段に曝気槽をもう1槽追加することで曝気槽の合計容積が多くなりますから、曝気時間を短く出来ます。
この方法ではイニシャルコストは大きくなりますが、ランニングコストの増加は追加した曝気槽のブロワー電気代のみなので、前記の方法より安いことです。
敷地と設備投資資金の余裕がある農場向けです。

 いずれにしても、現状よりもコストアップは避けられません。
私のセミナーではこのコストアップ分を吸収するための節電方もご紹介しました。
これについてご興味のある方は、筆者までお問い合わせください。

 

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最終更新日 : 2022/01/23