「豚舎・設備のお悩み解決!」(51)「 母豚の移動と豚体洗浄の工夫


 

養豚場の仕事の中で体力的にきつい仕事のひとつに母豚の移動をあげるひとが結構います。
ストール舎から分娩舎への移動時には、動かない母豚を叩いたり無理矢理押し込めたりすると死産が増える原因にもなります。
また、離乳時にに分娩豚房からなかなか出たがらない母豚がいて苦労することもあります。
実は私は母豚の移動であまり苦労を感じたことがありません。それにはやはり、楽に動かすコツがあるからです。
 
 農場によっては妊娠豚舎と分娩豚舎が隣り合わせの場合と別棟になっている場合がありますが、共通していえること。
豚は作業者このとを結構覚えています。普段と別の色の服を着ていたり、別の担当者が来ると、警戒して動かなくなります。
できるだけ、いつもの担当者がいつもの作業服を着て移動に至りましょう。また、通路の曲がり角も豚が警戒するポイントです。
通路の仕切りはコンパネを立てるよりも鉄柵にした方が豚の警戒心は少なくなります(図1)。
2のように通路の正面が壁の場合も警戒して動かなくなることがあります。
通路正面の壁にステンレスパネルを貼って、壁では無いように見せかける工夫や、曲がった先と室内の明るさが同じぐらいになるような工夫をしましょう。
 
それでも中には角のところで止まって動かない豚がいるものです。
その時はその豚は無理に押したりせずに放置して、次の豚を出してきます。
その豚が通り過ぎると、動かなかった豚も警戒が解けて動き出すことが良くあります。
それでも動かない母豚でも決して叩いていけません。少し押しと抵抗しますが、豚が踏ん張る力を抜くタイミングがあるので、そのタイミングを見計らって一気にグッと尻を押すのです。
こうすれば、苦労せずに母豚を動かせます。
 次に、豚舎が別棟になっている場合ですが、通路で繋がっていない農場の場合は、トラックやカゴ付きのローダーで運んでいるケールや、通路柵を立てかけて歩かせているケースが見られます。
母豚の場合は1台の車両に積める頭数が少ないので、通路で繋がっていない農場では通路を作ってしまった方が良いです。
通路を作るには費用がかかりますが、作業が楽ですし、車両の洗浄も含めた労働コストを計算すると十分採算がとれるはずです。
 
@豚舎の間が車両の通路のなっている場合や、A豚舎の土地に高低差があると言うことで諦めているケースがありますが、これも一工夫で解決できます。
@のケースでは豚通路を跳ね上げ式(図3)やスライド回転式(図4)の様に、豚を通すときだけ豚舎間につなげて、他の時は収納して車両通路に出来る様にします。図3の通路はワイヤーウインチで開閉できるようにすると便利です。
跳ね上げた通路と出入り口の高さを同じに設計すれば、出入り口扉兼用にもなります。
4の通路は、回転軸と反対側の通路の足にゴム車輪を取り付ければ取り回しが楽になります。
 
Aの豚舎の土地に高低差がある場合は、法面を削ったり、傾斜に対して平行ではなく斜め方向に通路を付けるなど、傾斜を緩くする工夫をしてみましょう。
人間が手すりを使わずに歩いて上り下りできる傾斜であれば、豚も平気で歩きます。傾斜の通路床面には滑り止めの工夫が必要です。コンクリートなら刷毛引き仕上げ、コンパネ床なら、ザラザラなシートを貼るのが良いでしょう。
滑り止めに算木を打ち付けるのは安上がりですが、人が躓く恐れがあるし、掃除がしにくいのでおすすめしません。

 次に母豚の豚体洗浄についてです。ストール舎から分娩舎へ移動するときの洗浄のことですが、実施していない農場のほうが多いのではないでしょうか。
母豚の糞を介して子豚に伝染する疾病や寄生虫の感染低減の為には、是非とも実施していただきたいと思います。
夏場は水洗いでかまいませんが、その他の季節は温水を使う必要があります。
だからといって温水洗浄機は使わないでください。圧力が強すぎて豚の皮膚ダメージとストレスに繋がります。
しかし、後腹部や尻まわりのこびりつきは、なかなか落ちないものです。
そこで豚の洗浄スペースは
2区画に区切って使うのがよいです(図5a)。

最初にシャワースペースに数頭入れて汚れを潤かします。
そこから1頭ずつ洗浄スペースに移し、ホースで水または温水を掛けて洗います。
ただ、洗浄スペースでも豚が動き回るとこびりつきをうまく洗い落とすのが難しい事もあります。
図5bのように、ストールと群飼スペースを組み合わせた形の洗浄ペンを作れば、もっと楽になります。
まず母豚をストール部分に入れてホースで水または温水を掛けて潤かしておきます。
に入れた豚をストールに入れたまま後ろから洗浄します。
その後、洗浄スペースに出して、頭や前身を洗浄します。
私が以前勤務していた種豚場では、図5bの方式で行っていましたので、おすすめです。

 

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最終更新日 : 2022/01/23