「豚舎・設備のお悩み解決!」(35)哺乳豚管理と便利機材

(※ 一部実際の雑誌掲載文面とは異なる部分があります)

最新の統計に寄りますと、全国の養豚家数は4,700戸ほどとなりましたが、母豚規模200頭未満の割合が8割あるそうです。
今回は企業養豚では当たり前になっていることですが、母豚規模200頭以下の農場が生き残りをかけて管理技術アップしていくためのヒントになることをご紹介します。

まずは1母豚当り年間離乳子豚数が25頭以上の成績を保っていくことが最低条件となると思います。
最近は多産系の品種・系統が普及してきましたので、総産子数はアップしてきていますが、哺育開始頭数がなかなか上がらない農場があります。それは、死産(白子)や分娩時圧死が多い農場です。

 

※ポイント1:日中に分娩させ、徹底看護

豚は本能的に夜間分娩が多いので、日中に分娩させようとすると、分娩誘発ホルモンを使うしかありません。
中にはホルモン剤使用に拒否反応示す方もいます。
「ホルモンを使うと豚がホルモン頼りの体質になるから」という考え方のようです。
私も発情誘発ホルモンの多用には反対の立場ですが、分娩誘発ホルモンには積極派です。
価格が高いからと言う理由で敬遠されている方もいらっしゃいます。
しかし、1回の使用量を抑えても同じ効果を発揮する方法があります。
医薬品は用量用法を守ることが前提ですが、少なく使う分には問題がないと思いますので、あえて公表します。
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回(1頭へ)の使用量は0.5mlです。1mlシリンジと23ゲージの針を使います。
母豚の陰部の皮膚を摘んで皮下1mmぐらいに刺して注入します。
針を抜く時は針を皮膚の上から摘んで押さえながら抜くと薬液が逆流しません。

分娩誘発ホルモンを打つタイミングは分娩予定日の午前11時がベストです。
この時間に打つと翌日の朝8時から16時の間に分娩開始するので、日中または少しの残業で分娩看護が出来ます。
妊娠期間は品種や産歴によって2〜3日のズレがありますから、自身の農場の統計を取って決めて下さい。
私の経験上、初回交配日を基準にするよりも最終交配日を基準にした方が正確です。
ここで求めた自農場の平均妊娠日数を使って分娩予定日を求め、その前日に分娩誘発ホルモンを打つのです。

※ポイント2:冬は胎児をなるべく早く乾かしてあげる

胎児は濡れているので、そのままでは体温が下がり、活力が低下して圧死されやすくなります。
ですから出来るだけ早く乾かしてあげることと、早く保温箱(暖かい寝床)の場所を覚えさせる事が大切です。
布またはミストラル等の資材で拭いてあげるのも良いですが、そこまで手間が掛けられない場合は、保温箱の他に母豚の尻部分にも保温ランプを設置しましょう。
さらに、床がすべらないようにミストラルなどの滑り止め資材を床に散布しましょう。

 

※ポイント3:子豚の処置器具は衛生的に管理せよ

産まれた子豚には通常、切歯、断尾、鉄分注射の処置をします。
このこれらの処置に使う器具の管理が不衛生ですと、発育不良や死亡、または枝肉の格落ちに繋がります。
まず、切歯に使うニッパーは、ホームセンターに売っているものではなく、畜産機材メーカーで売っているステンレス製のものを使いましょう。
使う時は小タッパーに薄めた消毒液を入れ、ニッパーの刃先を浸けておきます。
1頭処置するごとに小タッパーに浸けて置けば、刃先に切れた歯が溜りません。
去勢用メスも同様に小タッパーを使って消毒しながら使いましょう。

断尾器はガス燃焼式断尾器(テールスパッター)がお勧めです。

熱で尾の切断面の止血と殺菌をするので、子豚の外傷性感染症を予防できます。

鉄分注射は写真3や写真4のような連続注射器具を使っている農場が多いと思います。

1日の作業が終わったら必ずバイエル瓶を外して注射器を洗浄して下さい。
そして、切歯ニッパーや、去勢用メス柄とともに煮沸消毒して下さい。
煮沸消毒は電気ポットの中に入れて行います。
24時間タイマー(写真5)を組み合わせて使うと便利です。

煮沸消毒が終わったら、食器乾燥機に入れて保管するのが便利です。

 

※ポイント4:分割授乳で虚弱豚も活かせ

産子数が多くなると体重1kg未満の虚弱こ子豚も多くなります。
分割授乳をする事によって生時体重800gぐらいの子豚まで正常離乳まで持っていくことが出来ます。
まず準備として、保温箱がある分娩柵では保温箱の扉が必要です。
扉がない分娩柵ではベニヤ板をクランプで止めるなどして使います。
保温箱がない分娩舎では、野菜収穫用のカゴ(写真6)を使うと便利です。

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腹の分娩が終了したら、小さい子豚6〜8頭に印を付けて、それ以外の子豚を保温箱またはカゴに閉じ込めるのです。
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腹に対して朝晩の給餌後に行うのが作業製においても日乳量においても効果的です。
分娩直後から、合計で3回実施するのが効果的です。

 

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最終更新日 : 2022/01/23