「豚舎・設備のお悩み解決!」(16)洗浄のツボと防疫ルール

今月も読者様からの質問、「給餌器の隅やピッカー、豚房の隅など洗い残しが多いところの効果的な洗浄方法について」また「飼料タンクの洗い方について

」にお答えします。
また、PEDの拡大につけて、農場防疫の在り方に感じたことを書かせて頂きます

【給餌器の洗浄】

 最近はステンレス製の給餌器を使う農場が増えてきました。これは汚れ落ちが良いので洗浄時間短縮になることと、汚れが残っているかどうかが見た目ですぐわかるから、衛生的な管理ができるためです。鉄製や白以外の色の樹脂製の給餌器では、汚れが残っているかどうか疑わしい箇所は指でなぞって確かめることが肝腎です。


写真1はステンレス製のパイプフィーダーです。上から見た目では綺麗に洗浄されています。しかし、しゃがんで給餌器の下を覗いて見て下さい。汚れが残ったままになっていることがよくあります。


写真2では、比較的綺麗に洗浄されている例です。給餌パンの外側に若干のこびりついた汚れが残っています。洗浄時に腰を曲げて床面すれすれから洗浄水を当てれば綺麗に洗浄できるはずです。

 また、写真3のように豚房の角近くに固定された給餌器やその周辺は洗い残しが出やすいところです。通路や隣りの豚房に立って給餌器の隅の方を洗浄ガンで狙う、などの工夫が必要です。このようなところでは洗浄水が跳ね返って顔にかかることがあります。顔が汚れるのを嫌って手抜きする担当者もいます。このような人には、フルフェイスのヘルメットを付けさせてやりましょう。写真3では給餌器に汚れた水が溜まったままで洗浄を終えていますが、洗浄ガンを当てる角度を工夫すれば、結構吹き飛ばせるものです。どうしても残ったら、それを汲み出してから消毒をかけるようにして下さい。

 写真4は給餌器の上部や搬送ラインの様子です。腰から下の部分だけ洗浄して、上の方を洗わない農場があります。溜まったホコリの中には病原となる最近やウイルスがいますので、上から下まで隈無く洗浄しましょう。特に配管の上部は汚れが残りがちです。洗浄する前に箒でホコリを落とせば綺麗に洗浄できます。

 

【給水器の洗浄】

 オールインオールアウトを実施している農場では、毎回洗浄時に給水ニップルを外して洗浄していることと思います。外したニップルをバケツに入れて集め、分解掃除した後にまとめて消毒液につけましょう。オールインオールアウトをしていない農場でも、鉄分の多い水道水を使っているところや、薬剤や添加物を飲水投与している農場では、洗浄の度にニップルを外して分解洗浄しましょう。内部に錆や、水垢が結構溜まるものです。錆やゴミ、水垢が溜まったままですと吐水量が少なくなりますから、豚の発育遅延を起こします。水が全く出ない豚房を3〜4日も気づかないでいる担当者がいるくらいですから、ましてや給水量が半分に減ってもほとんど気づかないものです。出荷日令が伸びてきて初めて気づくのでは、飼料要求率の悪化にまでつながります。

 

【飼料タンクの清掃または洗浄】

 普通、カビがこびりついてしまった時以外は飼料タンク内部を洗浄することはないと思います。ましてや5トンタンク以上では洗おうにもブラシも洗浄ガンも届きませんし、搬送ラインも外さないといけません。やむを得ず洗浄が必要な場合は、搬送ラインとの接続を外して、タンクの下から手を入れてブラシで擦るしかないでしょう。

 そうならないためのカビ予防が肝腎です。対策としては、

1ラインにタンクを2本設置して、交互に利用する。

・タンク1本で運用する場合は、6月から9月までは2週間で使い切る量ずつ配送をお願いし、残った餌を紙袋や台車に移して、タンクを一旦空にしてから次の餌を入れる。

・餌タンクに断熱塗装をする。または断熱反射シートを被せる。

などを実施しましょう。

 

【農場防疫の在り方】

 春になってPEDが関東や東北でも蔓延してきました。なかでも厳しい防疫管理をしている農場までもが発生していることに驚きを隠せません。いったいどこまで防疫ルールを強化すればPEDを防げるのでしょうか。ルールを強化する前に、現在の防疫ルールが場員や外来者全員に守られているかの検証を先に進めるべきです。守りづらいルールになっていれば、守らない人がいても不思議ではありませんから、検証が必要です。関係者全員にルールを守って貰うには、手順のわかりやすさがカギとなります。

例えば農場入り口での車輌洗浄を例に取ると、停止位置や消毒器の操作方法などが誰にでもわかりやすく看板等で表示されているか。もし、機械が故障で動かなかった場合の連絡先が書いてあるか。靴の履き替え場所は使いやすいか、靴が濡れたり汚れたりしないような靴置き場になっているかなどがチェックポイントとなります。

 次にルールの見直しで前提にすべきは、どんな病気をも絶対に入れないような鉄壁の防疫ルールが必要なのかを再考することです。あまりにも厳しすぎるルールを運用するには相当のコストと運用技術が必要です。至近距離に他の農場があるような養豚密集地帯では、空気感染まで防ぐことは不可能に近いです。

 このような立地にある農場では2サイトシステムへの移行を考えた方がよいです。繁殖部門を養豚過疎地へ移すことです。養豚密集地では、今後も何年か過ぎるとまた病気に悩まされる事になる確率は高いと言えるでしょう。

 繁殖農場では、餌のバルク車が敷地内に入らずに降ろせるレイアウトや、子豚出荷の専用車の確保、廃豚出荷デポを週1回使用にするなど、外部との接触を極力抑えるシステムを組むこと。そうすれば1サイトで一貫経営するよりも病気進入のリスクは格段に少なくなります。

TPP交渉が今年中に妥結するかどうかはわかりませんが、3年後には養豚相場は氷河期に突入するでしょう。昨年末からの高豚価で得た利益を前期のような対策へ向けた農場が生き残れることと思います。

 

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最終更新日 : 2022/01/23