「豚舎・設備のお悩み解決!」(12)防疫の強化策

昨年の後半に国内各地でPEDが発生しました。
この病気は母豚がかかっても死ぬことはありませんが、
哺乳豚は致死率が非常に高いものです。

PEDウイルスの流行時期は、冬から春にかけて多くなりますので、
皆さんの農場でも防疫体制の強化を図っていることと思います。
今回は実施すべき防疫対策をまとめましたので、
まだ実施していないことがありましたら、早急の実施をお勧めします。

PEDウイルスは主に感染動物の糞を介して伝染することが知られています。

ですから、動物及び、糞が付いた資材や道具、作業着、
靴を豚舎内に持ち込むことを制限することがポイントととなります。

 

【農場入り口の消毒設備】

まず、場外から入ってくる車輌をしっかり消毒することが基本となります。
大型農場では消毒ゲートを備えるのが常識となっておりますが、
動噴等の消毒設備すら無い農場がまだまだあります。

特に規模の小さい農場ではその傾向が強いようです。
冬期間の最低気温が
-5℃以下にならない場所でしたら、
簡易式消毒ゲートで十分です。(図1)


ONスイッチをゲートの手前に設置し、OFFスイッチをトラックが
ゲートを通り終わる位置に取り付けておきましょう。

また、ONスイッチの場所に靴の履き替え場を設置しておくと
ドライバーの手間が省けるので、防疫のエラーを少なくすることができます。

『一旦停止』と『車輌消毒の励行』を書いた立て看板の設置も忘れずに。

 

また、消毒ゲートの代わりに洗浄機や動噴で消毒をしてもらう場合には、
消毒機を収納しておく小屋が必要です。
農場入り口に水道や電気が通っていないからといって、
事務所脇に消毒ポイントを置くことはお勧めできません。

図2のような例では、門から入った車輌が
消毒ポイントを通らずに豚舎の方へ入っていけるからです。

誰も見ていない時に手抜きをする人は必ずいますので、
消毒の手抜きが出来ないレイアウトにしなければいけません。

そして、手間がかからない様な工夫が必要です。
人は面倒なことは手抜きしたくなるものですから。

また、消毒器や消毒ゲートの薬液の残量や、
規定濃度になっているかどうかを毎日点検しましょう

 

【隔離検疫豚舎】

外部導入した候補豚や種雄豚は、直接既存豚が居る豚舎へ入れないことです。
母豚を自家育成している農場であれば、
導入するGPの数は少ないので、トラックの荷台を改造した簡易豚舎で十分です。

検疫豚舎がまだ無い農場でも、この方法ならすぐに設置出来るはずです。

設置場所は、種豚舎や離乳舎から離れた場所にしましょう。
検疫期間は最低
3週間は必要です。
その間に病気が発症しないか、毎日注意深く観察して下さい。

 

また、運送会社のトラックから導入豚を受け取る際は農場外の場所で、
自社トラックへ積み替えるようにして下さい。
輸送トラックを直接自分の農場へ入れることは避けましょう

 

【宅配受入所】

畜産農家が近くにある場合は、宅配業者が
他農場に立ち寄ってから来ることも考えられます。

農場の入り口付近にプレハブ物置等を設置して、
そこに届けてもらうようにしましょう。ワクチンやAI精液など、
低温保管が必要な物のためには、受け入れ用冷蔵庫を用意するか、
あるいは、納入時に宅配業者から電話を入れてもらうなどの工夫が必要です。

 

【出荷デポ】

次は豚出荷時時の注意点です。出荷トラックを外注している場合も、
自社で運ぶ場合もそうですが、屠場を介して病原が侵入するケースがあります。

出荷トラックは、洗浄消毒そして乾燥まできちんと
終わっているものが農場へ来ているかをチェックすることが大事です。

外注の場合は、いちいちチェックするのは難しいと思います。
そこに防御線を張るのが、出荷デポ(中継所)です。

複数農場から積み合わせて運ぶケースや、
同じトラックが
1日に2往復以上屠場へ行き来するケースにも
安全に対処することが可能となります。

設置場所は豚舎から出来るだけ離れた場所が理想ですが、
農場外に場所を確保するには、豚の鳴き声や洗浄水に対して
近隣からの苦情が来ないように配慮する必要があります。

現実的には農場敷地内の一番端に設置するのが最も簡単だと思います。

 

コストを抑えるには、トラックの荷台や海上コンテナを使うのがお勧めです。
ドラム缶や、コンクリート舛などの土台に置くだけで、後は柵をちょっと加工するだけです。

洗浄水の排水は浄化槽まで繋げられればベストなのですがそれが出来なければ、
貯留槽を設けてバキュームで汲むなどの対策が必要です。

図3は、豚舎から通路でつながった出荷デポの例です。
このようなレイアウトですと中出しトラックは要りませんので、作業性は良くなります。
しかし防疫を守る上での運用ルールを厳しくしなければいけません。

まず、屠場へ行くトラックがデポに接岸する前に出荷する全ての豚をデポに乗せ終わること。

 

次に、デポから出荷トラックへ積み込む時は農場従業員は一人で行い、
トラック運転手は、自車の荷台で待機し、豚がトラックからデポへ逆戻りしないようにする。

積み終わったら、農場担当者はデポを洗浄消毒して、豚舎外作業に戻る。
もし、豚舎内作業に戻る場合はシャワーインし、
積み込み・洗浄作業で着た作業着は再着用はせず、洗濯に回すこと。

 

【豚舎内外での靴履き替え】

農場敷地内には、ウイルスを媒介する動物の糞や、
渡り鳥の糞が落ちていることがあります。

それが靴底に付いたまま豚舎に入れば病気の感染リスクが高まります。
靴の履き替えを励行している農場であっても、
豚の出荷台は最も注意が必要です。

出荷台の上に鳥の糞が落ちないように、
きちんとネット等で囲って下さい。特に車輌の接岸口には隙間が出来ないように、
網戸などを加工して設置するのが良いでしょう。

 

【外周の柵またはフェンス】

農場の回りにはフェンスを張り巡らせましょう。
野生動物の侵入を少なくすることと、
部外者が勝手に入って来られないようにするためです。

 

【ダウンタイム】

農場内に立ち入る人や車輌が、他の農場や屠場などの
養豚関連施設に立ち入ってから(後にしてから)
自社農場へ立ち入るまでの時間のことをダウンタイムと呼びます。

コマーシャル農場であれば最低12時間は必要です。
つまり、「一晩明けてからでないとダメですよ。」と言うことです。

 

【終わりに】

以上のことは養豚関係者ならば知っていることばかりだと思います。

しかし「知っている」のと

しっかり実施できている」では雲泥の差があります。

まだ実施できていないところは、早急に実施するようにして下さい。

 

 

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最終更新日 : 2022/01/23