繁殖成績向上後の問題点

私のクライアント農場で決まって出てくる問題があります。

それは、繁殖成績が向上して、肥育豚舎が足りなくなることです。

肥育舎を増築すれば問題は解決しますが、現状ではいろんな制約が絡んできます。

まずは、増築する場所の確保です。敷地に余裕があれば可能ですが、他の土地を求めるとなると、周囲の住民の反対に遭うことが多く、難しいところです。また、資金調達の問題も重要です。さらに在庫頭数が増えるので、糞尿処理量も増えることになります。処理施設の能力に余裕があるかどうかも加味しなければいけません。

 豚舎の増築が不可能であれば、もう一つの選択枝は母豚を減らすことです。母豚を減らせば生産子豚頭数も減りますから、売上の減少につながります。経営者の皆さんはこのことが一番気がかりで、なかなか母豚を減らせず、密飼い状態を続けてしまうことが多いようです。そこで今回は母豚を減らしたときと豚舎を増設した場合のシミュレーションをしてみましたので紹介します。

 この例は母豚300頭一貫経営農場です。離乳舎はウインドレスの溜めピット式。肥育舎はカーテン式開放豚舎3棟の構成です。以前は「離乳舎→肥育舎」というピッグフローでしたが、肥育舎足りなくなったので、肥育舎1棟を子豚舎(前期肥育舎)として肥育舎として使っていた時の2倍の頭数を入れています。そしてピッグフローは、「離乳舎→子豚舎→肥育舎」にしています。それに伴い洗浄と移動の作業が多くなったので、従業員も1名増やしました。

 シミュレーションBでは母豚を280頭にした例です。ピッグフローは同じですが、肥育舎の回転に余裕ができ、出荷枝肉重量が増えます。また、出荷残豚の寄せ集めの頻度も少なくできるので、枝肉の格落ち金額も少なくできます。また、密飼いを解消できるので、出荷日令の短縮と飼料要求率の改善も期待出来ます。

 シミュレーションCでは母豚を260頭にした例です。肥育舎1棟を子豚舎として使うのをやめ、ピッグフローを「離乳舎→肥育舎」に戻します。そして従業員も1名減らします。

シミュレーションDは、600頭収容できる肥育舎を1棟増築した場合です。

なお、飼料単価、枝肉上物建値、人件費、豚舎建築コストは便宜上の仮の値を入れてありますので、皆さんの事情に合わせて再計算されて下さい。

 結論的には、豚舎増築が最も収益が上がりますが、例Bのように少し母豚を減らした方が収益がアップする事です。とにかく密飼いは慢性疾病の増加や飼料要求率の悪化など、諸悪の根源です。この秋からまた餌が値上げされますので、今密飼いで困っている農場では、成績の悪い母豚を10月からどんどん淘汰していくことをお勧めします。そして飼料の無駄を少なくしましょう。

 

 

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最終更新日 : 2022/01/23