枝肉歩留りを検証しましょう

 複数の屠場へ出荷されている農場さんは、屠場により歩留りが違うことに気づかれることがあります。私も以前勤務していた農場では常時複数の屠場に出荷していましたし、毎回出荷生体重を測定していましたので、変化には直ぐに気づきました。その時は歩留りが悪化した屠場にクレームを付けたところ、皮むき機の歯が鈍くなったから、剥く厚さを厚くしたのだ。という事でした。最近の屠場ではこんなお粗末なことは無いと思いますが枝肉歩留りは定期的に測定することをお勧めします。

枝肉歩留りは、首の落とし方や足の落とし方、皮の剥き方によって1〜2%違ってきます。年間何百頭何千頭と出荷していればこの差は大きな金額になります。また、豚の品種によっても歩留りが異なります。発育が遅く脂肪の厚い品種は歩留りが良く、発育の速い筋肉質の品種は歩留りが少ない傾向があります。発育の速い品種は内臓が大きく、たっぷり食べてたっぷり消化して早く育つ野では無いかと思います。ここで、「ではどっちの品種の方が儲かるの?」という疑問が湧いてくると思います。そういうときは枝肉飼料要求率を計算してみればわかります。ブランド化して販売している場合は別として、普通の枝肉取引の場合は、発育の速い品種を、病気の無い環境で飼育すると、脂肪も適度にのりますし、飼料要求率も良く、豚舎の回転が速いので、一番儲かります。

さて、枝肉歩留りを他の農場と比較するときは注意が必要です。歩留りを左右する以下の条件を同じにして比較することが重要です。

@     前日搬入か当日搬入か。豚舎を出てからと畜されるまでの時間の長さによって豚の消耗具合が違ってきます。

A     豚舎で出荷体重を量っているかトラックスケールで量っているか。
例えば屠場の近くのトラックスケールを借りて測定した場合、トラックに乗ってからの豚の排泄物の重量が差し引かれますので、歩留りは0.5%前後良くなります。

B     出荷時に餌切りをしているかしていないか。
例えば当日搬入でと畜している場合は、出荷直前に食べた餌は消化されずに胃内容物として屠場で排気されます。ですから農場出荷時点で体重を測定すると、満腹の状態と空腹の状態では体重が異なってきます。最近は屠場の衛生管理面から出荷前の餌切りを強く求めている屠場もあります。農場の経営面から見ても無駄な餌を省くために出荷前の餌切りは有効です。しかし現実には1ペン全部を出荷するケースは少ないですから、餌切りの具体的方法が難しいのではないでしょうか。朝一番で出荷し、当日と畜の場合は給餌ラインのタイマー設定を変更するのが一番手軽です。例えば出荷作業が8時から8:30で終了するなら肥育後期餌ラインだけは、夕方〜AM8:30の間は回らないようにしておくという方法です。

 最後に、格付けが悪くて歩留りが良い屠場と格付けは良いが歩留りが悪い屠場でどっちに出した方が儲かるか。という問い合わせが最近ありました。図1のように試算してみれば分かり易いと思います。

枝肉歩留と格落金額の違いによる手取比較
    建値400円の場合
出荷先A 枝肉歩留 65%  
生体重 115kg 120kg 125kg
枝重 74.75kg 78kg 81.25kg
平均格落 10 10 30
枝肉売上 \29,153 \30,420 \30,063
出荷先B 枝肉歩留 64%  
生体重 115kg 120kg 125kg
枝重 73.6kg 76.8kg 80kg
平均格落 8 8 20
枝肉売上 \28,851 \30,106 \30,400
A-B \301 \314 \-338
有利先 A A B
この表より重量規格内ならA屠場      
中大貫はB屠場へ出すのが有利と判断できます      

 

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最終更新日 : 2022/01/23