TPP参加を見据えて

 農業団体からは続々とTPP参加反対の声が挙がっていますが、ただ反対するだけで良いのでしょうか。日本の経済全体を考えればTPP参加は避けて通れないことだと思います。しかし丸腰で臨んでは国内の農畜産業は大打撃を受けます。一方、中国やインドをはじめとするアジア諸国の人口増加と経済発展により食料事情は近い将来逼迫するでしょう。つまり、いつまでも農産物や食料を安く輸入できるとは限らないのです。その時に備えて国内の農業生産は維持しておかなければなりません。

ですから、今回のTPP参加と引き替えに農畜産業の維持発展に必要な政策を引き出す絶好のチャンスと捉えるのが良いと私は思います。ですから、本誌先月号でブリッジインターナショナルの高橋氏が語っていた意見に私も賛成です。

では具体的にどのような政策を引き出せば日本の養豚産業の発展につながるのでしょうか。米作農家に対する所得補償のように肉豚価格安定基金を発展させて単価で保証という考え方もあるでしょう。しかし私の考えは少し違います。ばらまき保証をしたのでは養豚産業全体の生産性アップとコストダウンにはつながりません。生産性向上の意欲ある経営体が大きくしていけるように、私は3つの政策要望を考えています。@輸入穀物のへの価格助成 Aリサイクル飼料の利用促進 Bバイオセキュリティー向上に対する助成 の3つです。

@     の輸入穀物価格助成は飼料メーカーに対して行うもので、現在の配合飼料末端価格を1kg当り10円安く提供できるレベルが欲しいと思います。

A     のリサイクル飼料の利用促進については、現在の廃棄物処理法を改正して、バイプロや食品残渣を、養豚業者が処理料金を頂いて引き受けできるようにするものです。養豚業者が廃棄物処理業の免許を取得すること無くこれをできるようにすれば、飼料コストは一段と圧縮できます。但し適正処理を確認するために、マニフェストの記入と保管は、引き受ける養豚業者に義務づけする必要はあるでしょう。
リサイクル飼料の利用にはリキッドフィーディングが相性が良いので、リキッドフィーディングシステム導入に対する助成を拡充して欲しいと思います。

B     のバイオセキュリティー向上に対する助成についてですが、慢性疾病と闘う、あるいは仲良くつきあっていては低コスト生産になりません。ですから慢性疾病やPRRS、オーエスキー病などを撲滅したい農場に対して、その経費や運転資金を無利子で貸し付ける政策が欲しいと思います。また、養豚密集地に於いては地域ぐるみで撲滅を図らなければなりません。そのようなときに反対して参加しない農場があると地域ぐるみの清浄化は達成できません。例えば、地域の9割以上の農場が賛成して清浄化を進めるならば、反対している1割未満の農場にも強制的に清浄化に参加させるような法律を作ってはどうでしょうか。

以上が私の意見です。養豚家の皆さん、ただ反対するのは簡単です。ですが発展はありません。真剣に考えて、どんどん政策要求を政府に対して提唱していきましょう。

 

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最終更新日 : 2022/01/23