ベンチマーキングの効果

 今年5月につくばで開催されたセミナーで、石川先生と呉先生のクライアントさんのベンチマーク集計結果の発表を聞いてきました。林牧場の林社長さんが「注目すればその数字が改善される。注目しなければ改善されない。」とおっしゃっていました。私も2年前からクライアントさんのベンチマーキングを行ってきましたが、やはり同じように注目した数字が改善されています。

その農場では以前、肥育事故率が高かったことから、事故率低減を第一目標として管理してきました。その結果、昨年は肥育事故率を目標の5%以下に抑えることができました。
しかし、飼料代、薬剤費、光熱費がかさんでしまいました。飼料の単価はかなり頑張った値段を取り付けているのに、どこでコストアップになっているのかを調べるために、肉豚1頭当り飼料コストを銘柄別にモニターすることにしました。そこで見えてきたのが、餌の切り替え時期が遅いために、人工乳の使用量が多すぎることでした。『発育を良くするために』と、人工乳をついつい引っ張ってしまう方は要注意です。しかし、何も対策をしないで餌の切り替えを早くすると、発育不良や事故率アップに戻ってしまいます。

このように、ベンチマーキングでは問題点は見つかりますが、解決法は豚舎をよく見ないと見つからないものです。この農場ではピッグフローがまず問題でした。離乳後の子豚は
前期離乳舎→後期離乳舎→子豚舎→肥育舎、というふうに移動が3回になっていました。また、離乳舎内でも群の再編成が行われていました。分娩舎は3棟あり、そのうち1棟は初産豚専用にしていました。これは分娩舎での初産腹の下痢を低減させる効果は出ていたものの、免疫レベルの異なる子豚が離乳舎で混ぜられるので、離乳舎での事故が多い一因になっていました。その結果として飼料への抗生物質添加で事故を抑えている。という状況でした。

そこで私がとった対策は、まず分娩舎の糞を妊娠母豚にフィードバックをかけて免疫を付与し、分割授乳を徹底することにより子豚への移行免疫を均一に高める。次に初産専用として使っていた分娩舎を離乳舎とし、後期離乳舎として使っていた豚舎も改造して離乳直後の子豚を受入できるようにしました。こうして旧前期離乳舎、旧後期離乳舎、旧初産用分娩舎を合計7つのブロックに分けて、オールインオールアウトできるようにしました。
新しいピッグフローは、離乳舎→子豚舎→肥育舎となり、移動回数が減りました。そして飼料添加剤を減らし、餌の切り替えタイミングも早め(標準に戻し)ました。

効果は、開始半年の集計で、平均飼料単価が約2.2円下がりました。肉豚1頭当りでは771円の飼料費と274円の薬剤費のコストダウンになりました。合計肉豚1頭当り1,045円、年間で約830万円のコストダウンになります。

養豚家は得てして生産技術成績ばかりに目が行きがちですが、売上や経費を含めた指標を用いてベンチマーキングすることにより、今まで焦点を合わせなかったところから収益の改善につながるものです。まだ実施していない経営者の皆さんは是非、コンサルタントの先生へ決算書を開示してアドバイスを受けてみてはいかがでしょうか。

 

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最終更新日 : 2022/01/23