枝肉の脂肪厚と生産コスト

 以前の記事で枝肉の背脂肪厚と資料要求率の関係について書かせて頂いたことがあります。今までの私の統計では背脂肪厚が2ミリ変動すると飼料要求率が0.15変動し飼料コストが約5%変動することがわかっています。但しこれは病気の発生や異常気象による変動を除いた分です。この理論に基づいた改善例の途中経過を報告します。

日本では昔から肉の美味しさは脂肪の質と量にあるとされてきましたので、背脂肪が薄目の枝肉よりも厚めの枝肉が好まれる傾向にありました。しかし、脂肪を多く生産するには多くの飼料が必要となり、生産コストはアップします。

一方肉が主食の欧米で改良された品種は脂肪が少なく発育も速く、生産コストは安く上がります。このような流れをくむハイブリッド種豚が日本でも生産販売されてきましたが、使いこなせる農場が少なかったため、日本の市場に合わせた改良が加えられてきました。

しかしAIが普及している現在では、産肉性や発育の早い雄をAIによって導入することが容易になっています。

さて本題ですが、私のコンサル先のN農場では枝肉の平均背脂肪厚が21mmでした。種豚の品種は♂♀ともヨーロッパ系ハイブリッドのPS購入でした。枝肉の背脂肪厚分布を見ると、薄脂での格落ちはほとんど無く、厚または30mm以上の極厚も散見される状況でした。そこで私は種雄だけを浮気してもらい別のハイブリッド会社の最も背脂肪の薄く発育の速い品種に変えてもらいました。狙いは平均背脂肪厚を2mm薄くすることです。

今年の3月からその肉豚の出荷が始まりました。品種の切り替えが100%ではなかったので、まだ統計に十分なデータは集まっていませんが、ほぼ狙い通りにいきそうです。3月は東日本大震災の影響がありました。この農場では餌不足にはなりませんでしたが銘柄が納品の度に異なったので、食下量の減少が少なからずあったようです。
昨年4月の平均背脂肪厚が20mm、今年4月は18mm
平均枝肉重量は昨年4月が76.4kg、今年4月は76.1kgでした。
飼料要求率の正確な集計はまだですが、目に見える効果として、出荷日令の短縮ができました。同じロットにいる従来の交配の肉豚よりも約1週間早く出荷になっています。
このことは、豚舎の回転が良くなり、洗浄消毒期間を十分に取れることや、生産頭数を増やせる可能性を秘めています。

また、期待値よりも背脂肪が薄くなり薄脂の格落ちが出るようでしたら子豚用から肥育用への切り替えを早めれば解消が可能です。このN農場では子豚用と肥育用の使用量が2:1になっていますが、これを1:1に変更し、肉豚1頭当たりの飼料費を下げていく計画です。

 

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最終更新日 : 2022/01/23